今年のカンヌ映画際。
是枝裕和監督の「万引き家族」が最高賞パルムドールを受賞し、日本人として21年ぶりの快挙を成し遂げました。

その是枝監督がWBSの単独インタビューに応じ、動画配信サービスの台頭など変化が著しい映画業界の未来について語りました。

万引き家族
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パルムドールを受賞した作品「万引き家族」は高層マンションに囲まれた古い家に住む家族の物語。
この家族は年金を頼りに暮らし、足りない部分を万引きで補う生活をしています。
是枝裕和監督がWBSの単独インタビューに応じました。

是枝裕和監督
「『万引き家族』で一番描きたかった日本の姿は?」
あの家族が家族になり、どのように解体していくのか。そのプロセスで社会とぶつかる。犯罪集団だから。その接点で起きる摩擦を描くことで、あの家族がおかれる社会の状況がみえてくる。

この映画では社会格差の底辺に光を当て、そこで暮らす家族を通じて人と人のつながりが希薄な現代社会に問題を問いかけます。
映画を取り巻く環境
映画を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
今年のカンヌ映画際ではある衝突も起きました。

主催者が映画館で上映しない作品は映画ではないとしてアメリカの動画配信サービス大手「Netflix(ネットフリックス)」の作品を締め出したのです。

映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏も今年、ネットフリックスの作品がアカデミー賞を受賞した際には、
映画館で上映しない映画がアカデミー賞にノミネートされる資格があるとは思えない。

いまや全世界で1億2,500万人を超える会員を持つネットフリックス。
豊富な資金を元に巨額の予算をかけたオリジナル作品を次々に作り出し、映画業界の構造を大きく変えようとしています。

予算規模は全く違うので自分が作りたいテーマでお金がかけられるならそちら(ネットフリックス)を選ぶ作り手が出てくるのは必然。作家性の強い監督ほど劇場公開作品よりも動画配信へ向かう傾向があるのでは。その状況はもう止められない。

映画の中心は今後、映画館から動画配信に移ると語る是枝監督。

しかし今回、カンヌがこうした配信の作品を排除したことについては同意します。
カンヌが劇場公開を前提としないものは映画と認めない態度表明を支持する。映画と映画館はセットなので映画は映画館で見るものだと思う。時間をかけて記憶が積み重なった場所なのでそれ(映画館)は文化発信基地。カンヌが今回示したのは映画を存続させるためのある種の抵抗。

ただ実際、日本でも動画配信サービスの影響などで映画館の数は減少しつつあります。

1948年にオープンした渋谷シネパレスも5月27日、70年間の幕を下ろしました。

映画館は今後どのように生き残っていくのか?

複数のスクリーンを持つ大型映画館、いわゆるシネマコンプレックスは「4DX」などと呼ばれるイスが動いたりするアトラクション型の映画館を導入し配信では味わえない体験を提供し生き残りを目指します。

株式会社アップリンク
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一方、全国でミニシアターを運営しているアップリンクは新たな取り組みを始めています。

ネット上の動画共有サービスを使い自社のミニシアターで流した映画から厳選した作品をオンラインで配信しているのです。

アップリンクの浅井隆社長は、
映画を見る環境が映画館、パソコン、スマートフォン、テレビとお客様にとってあまり問われない時代になってきた。配給会社、あるいは劇場としてもオンラインの映画館をつくる必要を感じた。

動画配信サービス大手との差別化にも成功しているといいます。
映画だと新作の場合、動画配信サービスは定額見放題なので権利を持っている配給会社などはネットフリックスにすぐに出さない。だから映画館のお客様とは見ているものが違う。

オンラインで視聴するお客様は元々映画館を訪れない人が多いため劇場のお客様を奪うことにはならないといいます。

日本で映画が初めて上映されてから120年余り、映画というコンテンツの発信方法は変わりました。
プラットフォームとして映画館はどのように生き残っていくのでしょうか?

「数ある映画の中からこういう作品を選んでいる映画館」とお客様は信頼が芽生えるわけだから、そういう場所がないよりあったほうがいい。消えないでほしいと思う。
