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[モーニングサテライト][東日本大震災10年]空き家に息を吹き込む[合同会社巻組]

2021年3月11日

モーニングサテライト

東日本大震災から10年、津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市。

住宅やインフラなどのハード面の工事は完成に近づいていますが、問題はソフト面です。街の活性化をどうするのかなど厳しい状況にあります。

これから街をどうやって再生活性化していくのか、「石巻モデル」と呼ばれる新しい街づくりが動き出しています。

合同会社巻組

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津波が押し寄せ、大きな被害を受けた宮城県石巻市です。

死者は3,000人を超え、およそ80%の家屋が被害を受けました。

堤防や橋の工事はまだ途中。人口減少が続き、商店街は人がまばらで空洞化は深刻な状態です。

街に人を呼び込もうと2015年に不動産会社を立ち上げたのが渡辺享子さんです。

震災後、市民が転出したり、新しい市街地を造成したことで石巻市では多くの空き家が発生しました。

渡辺さんは低価格で空き家を入手し、内装をリノベーション。その後、シェアハウスや仕事場として貸し出し、家賃収入を得ます。

こちらは築60年。

立地や条件はかなり悪い物件。

中に入るとアトリエ風の部屋が。こだわりは工事の段階から始まっています。

自社の建築士とともに知り合いや入居希望者を集め、極力手作業で行うことでコストを抑えます。

移住者の住居や起業した人の仕事部屋としての需要があり、この物件の家賃は月3万円です。

3人が共同の仕事部屋として使っています。デスクワークや洋裁の仕事などさまざま。

あえて作り込まず入居者が自由に改造できるのも特徴です。

普通の物件より自由にできる。

釘を打ってもいい。一応聞くけどだいたいOK。

造り手が使いやすいと想定しても住んでみると違う。

住みやすいようにカスタマイズして次の人に引き継がれることが大事。

震災後、ハンドメイド品作りや執筆など個人で事業を行う移住者が増え、一緒に仕事をする機会が増えています。

大阪から移住した菅原賀子さん、

いろいろな場所から来た人がいて、100%宮城県民の場所ではない。面白さ風通しがいい。

空き家の利用方法は住居や仕事場にとどまりません。去年10月、ワーケーション向けの宿泊施設をオープンしました。

会議などができる共用部分は古民家風。

2階には宿泊用の寝室。

別の棟にデスクワーク用のスペースも用意。料金は1泊3,000円からです。

シェアハウスだけで定住を促すのは限界がある。

もう1つ石巻への入口になる。

みんなに使ってもらう形がゲストハウス。リーチできる人数が増える。

会社を立ち上げて6年、気付いたことは…

リスクを負って物件を買い上げて入居者に寄り添っている。

入居者とチームになって場所の価値を高めることが大家業にとっては大事。

巻組代表の渡辺さんは埼玉県出身。石巻を訪れたのは大学院で都市計画を学んでいたとき、ボランティアに参加しました。

日々の暮らしに一生懸命な石巻の人たちの姿を見て学んできた街づくりをこの街で活かしたいと企業を決意しました。

石巻市は郊外の土地を活用し、生活の再建に向け4,500戸の住宅を整備してきました。

一方で海や川に近いエリアでは人通りが減り、空き家や空き地が増えています。街の二極化が進んでいます。

渡辺さんがいま重要だと考えているのは移住者が地域に溶け込めるように入居後、地元の人たちとの交流の場を作ることです。

この日、ゲストハウスで開いたのは石巻に来て1年ほどの若手3人と地元の起業家が石巻での生活を振り返る会です。動画配信も行います。

普段の生活の中では会わない人と近い距離で話をする機会が多かった。

知り合った人とご飯を食べて話をすると、それぞれの知識や経験が違って、それらを掛け合わせたアイデアが出る。

それを聞いたり、巻きこまれたりすることがとても面白い。

カフェなどを経営する亀山貴一さん、

震災のボランティアにたくさんの人が来た。

石巻に定着す土壌を巻組が作った。

地元と合わない人もいる。

いろいろなコミュニティーの中で緩衝材になってくれている。

そして未来の街づくりの柱となるのがアートです。年間44万人が来場するまでになった芸術祭は大きな経済効果を生み出しています。

渡辺さんは石巻の個性をさらに際立たせようと今年から芸術家を呼び込むプロジェクトを始めました。

築60年を超える蔵を作業場やギャラリーとして活用しています。

現代アート作家、パルコキノシタさん。芸術祭への参加をきっかけに東京からい移住しました。

石巻は演劇も音楽も盛ん、「なんでも来い!」というカオスが魅力。

港町なので文化を大事にする。

文化や芸術に対する意識の高さは震災前からあったと思う。

この場所で手掛けているのは木彫り。震災の犠牲者への鎮魂の思いを込めて彫り続けています。

アーティスト同士の交流も当たり前に。この日来ていたのは演劇の制作を手掛けるよしだめぐみさん。

新型コロナによりイベントが中止に、活動の場を求めて東京から移住しました。

居心地がいい。人がいる安心感がある。人と離されない安心感。

独りにならない安心感がある。

次の世代にどんどん来て欲しい。

石巻でアート活動を始めた。若い作家たちの成長がすごい。

どんどん作品が良くなる。

独立して新しいギャラリーを作る若手もいる。

震災から10年、これから求められることを聞きました。

2011年のレベルに戻さないといけないという呪縛にとらわれた10年。

これから先は10年後、震災を経験していない世代に向けて何を残していくかを考えないといけない。

そこに向けて何ができるかをいつも考えている。

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