愛知県豊田市にある取水施設で大規模な漏水が発生し、この水の供給を受けていた農業や工場、発電所などに大きな影響が出ています。所管する東海農政局が夜を徹しての復旧作業を行っている現場に山口記者がいます。
取水施設で大規模漏水!
原因不明!?夜通しで復旧作業
山口博之記者

愛知県豊田市の取水施設です。午後10時を過ぎて川全体の様子は見えなくなりましたが、今も明かりが煌々と灯っています。
川では重機で砂を投入しています。これは川の流れを一部変えようとしています。水を川の端に引き寄せることでホースで取水しやすくするという応急処理が施されている状況です。
「稲が全滅…」トヨタにも影響
愛知県内を流れる矢作川を横切るように設置されているのが明治用水頭首工です。
山口博之記者

上流から流れてきた川の水をここでせき止めていました。今は水位がかなり下がってしまっています。
普段この取水施設は水門を閉めることで上流からの川の流れをせき止め、上流側の水位を上げて川の水を取水口に取り込んでいます。
ただ今回、川の底に別の水の通り道ができてしまったとみられ、水門を閉めても上流側に水が溜まらなくなっています。
東海農政局

漏水箇所と推定される場所に砕石を投入して穴を防ごうとしたが漏水状況に変化はなかった。
愛知県によると5月17日未明から大規模な漏水が起こり、仮設のポンプなどを設置して対応してきましたが5月18日午前4時45分ごろには全く水を取り込むことができなくなってしまいました。
そこで影響を受けたのが田植えシーズンに入った米農家です。
農家
尾本聡さん

限界です。出ないんです。
およそ6ヘクタールの田んぼでコシヒカリなどを作っている米農家の尾本さん。5月17日に農家仲間から水が止まるという情報を聞き、少し田んぼに水を溜めていたといいますが…
農家
尾本聡さん

水が切れると稲が干上がってしまうので全滅する恐れがある。
損害は全部で7反としても1万3,000円×7がパァになる。
農家のほかに冷却や洗浄に工業用水を利用する発電所や工場などにも影響が出ています。
大阪ガスは愛知の武豊町にある火力発電所の運転を停止。
また自動車関連企業など給水を受ける131の事業所で影響が出ています。
トヨタの堤工場は井戸水などを使って5月18日は操業を続けました。
各所に影響を与える漏水が起きている現場では夜通しでの復旧作業が続きます。
東海農政局 豊田支所
横山康史支所長

ポンプが今12個ある。明日の朝までに17台追加したい。
本来はもう少し入れたいが全て人力作業になるので。
トヨタ関連工場停止 復旧メドは?
佐々木明子キャスター
豊田市はトヨタのお膝元です。5月19日以降どのような影響がありますか?

山口博之記者

RAV4などを生産する豊田自動織機の長草工場は5月19日早朝から昼にかけての稼働を停止するとしています。
それ以降、長草工場をはじめトヨタの生産工場の稼働については状況を見た上で判断するとしています。
佐々木明子キャスター
復旧工事の見通しはどうでしょうか?

山口博之記者

残念ながらすぐに復旧するということにはならなさそうです。
通常、毎秒30トンの取水量がありましたが仮設の給水ポンプでまかなえる量は毎秒2トンあまりに限られるということです。
ギリギリ工業用水はまかなえる量としていますが、大量の水を使う農業用水まではまわりません。
東海農政局は具体的にどこから水が漏れているのかを確認した上で復旧作業を急ぐ方針ですが、完全に復旧するのは秋以降になる見通しです。