韓国では7月から1週間の労働時間を制限する新たな制度が導入されました。
韓国版「働き方改革」ともいえるこの制度が始まって1ヶ月が経ちましたが思わぬ影響も出ています。

KT
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韓国の大手通信会社を訪ねました。

このオフィスで働く一番の上司が帰宅の準備を始めました。

そして、
みんな帰りましょう。

業務終了時間は午後6時。
社員一人一人のパソコン画面にも「定時退社してください」というメッセージが出てきます。

きょうも1日お疲れさま。

先程、ベルを叩いていた上司が率先してオフィスを出ていくと部下たちも次々と帰宅。

オフィスの雰囲気はガラリと変わったといいます。
KTの劉碩濬さん(30歳)は、
以前は退社時間になっても周りを気にしていたが今は午後6時を過ぎたら気持ちよく帰っている。

この男性が向かったのは同じビルに入っているスポーツジム。
7月から週3回、ここで汗を流してから家に帰るのだといいます。

業務は業務で私の人生は私の人生なので私の人生を豊かにすることがすごくいい。

今後もずっと維持してほしい。

働き方改革
韓国では7月1日から1週間の労働時間をこれまでより16時間短い52時間に制限する制度が始まりました。

2017年の韓国の年間労働時間は2,024時間でOECD加盟国の中で3位。

日本より300時間以上長かったのです。

こうした状況を変え国民の生活の質を向上させようと文在寅大統領が動いたのです。
過労死から逃れ自分を取り戻し家族と共に過ごす社会への重要なきっかけになるだろう。

労働時間をこれまでより2割以上短くする韓国版「働き方改革」。
まずは社員300人以上の大手企業を対象に導入されました。

スーパーへの影響
若い世代が多く住む地域のスーパーでは新制度の影響が早速現れていました。


大手企業の社員は、
家に帰ってからは妻と食事も一緒にできるし、子どもと遊ぶ時間も増えて豊かな生活が始まった気分。

きょうは野菜炒めを作る。

わが家の料理人は夫なのでありがたく食べています。

店によると7月以降、夕方早い時間に夫婦で訪れるお客様が増えたといいます。
焼肉店への影響
笑う人がいれば泣く人も…
こちらからは嘆き節が聞こえてきます。

ソウル西部の中心的な繁華街にある焼肉店を訪ねてみると閉店までまだ2時間あるというのに18席あるテーブルにお客様の姿はありません。

すでに店の後片付けを始めていました。

焼肉店の店長は、
みんな家に早く帰るので飲食店でゆっくり食べることもなくなる。

そうなると売り上げも減る。打撃がものすごい。

この店では最近になって売り上げがおよそ3割も減ったといいます。
以前は5人いたアルバイトも1人に減らしました。

2人のスタッフが手伝ってくれていた厨房の仕事を今では店長自ら1人でこなしています。

月3万円の収入減
韓国政府は2021年までに中小企業や零細企業も含むすべての事業所に制度を適用する方針で国内の労働者の9割近くは平均で月3万円ほど収入が減るとも試算されています。


ある企業で役員の専属運転手として働く男性(51歳)も今後労働時間の短縮が適応される見込みです。

今でさえ生活が苦しく昼間の仕事を終えた後は深夜まで運転代行のアルバイトをしているといいます。

今後、制度が私たちにも適用されれば手当などが急に減るので本当に悩みが大きい。

生活が大変、さらに副業に力を入れざるを得ない状況になる。

残業時間が減ると月10万円近くも収入が減るともいうこの男性。

これからお金のかかる中学生の娘のためにとこの日も運転代行の仕事に向かいました。
庶民派大統領が目指す韓国の働き方改革。
まだまだ課題が多そうです。