
ビールについて、世界最大の市場である中国からの報告です。
中国のビールというとどんなイメージがありますか?
大浜平太郎キャスターは、
ちょっと薄いのと喉ごしのキレも足りないかなという印象。
あと、ぬるいまま飲むというイメージもありますよね。そんなイメージが変わるかもしれないブームが中国で起きています。
青島ビール
今月、恒例の青島国際ビール祭りが開催された中国・青島。
中国のビールの代名詞とも呼べる青島の街にはいたるところにビール屋があります。
ある男性は生ビールをテイクアウトするようですが、なんとここではビニール袋で量り売りです。1キロ、約80円と格安です。
青島ビールだ。
合計6キロを購入して歩いて家まで帰ります。飲む時にはぬるくなっていそうですが、これが中国流です。
安く酔える庶民のビールです。
その中国のビール市場、実はこの数年は低迷が続いています。
中国政府による反腐敗政策の影響の中、ワイン、ウイスキーなどの人気に押されビールの販売量は減り続けています。
しかし、そんな市場の低迷をよそに伸びているビールがあります。クラフトビールです。
クラフトビール
都市部を中心に輸入ビールや地ビールなどを揃えたクラフトビール専門店が急増。
今はまだビール市場の1%程ですが、2020年までには30%まで急拡大するとの予測もあります。
リキッド・ランドリー
クラフトビールレストラン「リキッド・ランドリー」も上海で人気を集める店のひとつです。
訪ねたのは開店前の早朝、店舗の奥には醸造場が併設されています。
店内ではビールの醸造作業が始まっていました。ここで年間40種類のビールを醸造し、つくりたてを店で提供しています。
ビール作りの責任者はアメリカ人のマイケル・ジョーダンさん。世界のビールコンテンストで受賞経験もあるベテランが味のチェックをしています。
これが原料の麦芽。主に輸入品を使っている。中国で栽培されている麦芽やホップは現時点では種類が限られている。クラフトビールがもっと広まれば中国産でも使える原料が出てくると思う。
夜になると店内は若い人たちであっという間に満席です。
ビールの価格はグラス1杯(330ml)で約700円。青島の1キロ80円に比べると20倍以上です。
お客様は、
美味しければ値段は気にしない。
ビールの種類に合わせグラスも変える。とにかくいろいろ試している。
この苦味は初恋の味だ。
店内で醸造された6種類のビール。
上海支局の吉田知可さん、
こちらの2種類のビールを味わってみたいと思います。こちらはとっても酵母の香りが引き立っている感じ。こちらはすごくコクがあり、「ぬるい」「薄い」という中国のビールのイメージとは全く違って大変飲みごたえのあるビールです。
創業者は台湾生まれ、カナダ育ちのリー・ツェンさん。
ビールはただの安い酒というイメージを変えようとした。ターゲットは「新しい中国」の消費者。購買力が高く、外の世界に興味を持ち、新しいグルメやライフスタイルを求める層。年齢は25歳から40歳くらい。
ビールおばさん
さらに上海の住宅街の一画にこんな店を見つけました。その名も「ビールおばさん」。
入ってみると店内にはビールのボトルが天井までぎっしり並べられています。
これを集めたのが張銀娣さん。ビールをこよなく愛する「ビールおばさん」の経営者です。
上はベルギー、下はアメリカのビール。すべてクラフトビール。全部でだいたい1,700種類ある。
ここは世界中からクラフトビールばかりを集めた専門店です。
なかには1本1,480元、約2万5,000円のレア物もあります。
品揃えの9割がヨーロッパやアメリカなどからの輸入品です。
しかし最近は中国各地で作られた地ビールも増えてきているそうです。
これは上海、これは北京の地ビール。雲南のものもあります。
中国の地ビールは急速に発展。小さな田舎町でも醸造している。
当初は外国人客が中心でしたが、いまは中国人のファンも増え売れ行きは好調。現在は3店舗目の開店準備中です。
木内酒造合資会社
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このクラフトビールブームをチャンスと見る日本企業もあります。
クラフトビールメーカーの木内酒造です。
元々、日本酒作りをしていた木内酒造は「常陸野ネストビール」でクラフトファンの人気を獲得。日本国内にとどまらず世界約50カ国で販売をしています。
2016年には香港にもビール工場を新設。中国市場への本格参入に向けて準備を進めてきました。
そして、この秋にも上海に直営のクラフトビール専門店「常陸野マンション」をオープンする予定です。現在、急ピッチで内装工事が進められています。
木内敏之取締役は、
ここでつくったビールをここで飲める。「常陸野ネスト・上海バージョン」。上海の果物やスパイスを使ってここでビールを作る。
店舗は4階建ての古民家を改装して活用。上の階では日本から招いたシェフが腕をふるい、伝統的な和食を提供します。
クラフトビールと組み合わせることでライバル店と差別化します。
和食との組み合わせは世界的にもない。新しいチャレンジ。
生ビールのほか、看板の「常陸野ネストビール」は日本の工場から中国にビールを輸出できないため香港工場から上海に運びます。
われわれの商品はアメリカ・ヨーロッパにも行っている。中国で飲めないというのは悔しい。ぜひここで成功したい。
日本発のクラフトビールが中国のビール市場に新たな風を吹き込むのかもしれません。