ワールドビジネスサテライト(WBS)の2月5日(金)23:00~23:58の番組内でキリンホールディングスのミャンマーでの合弁解消のニュースを放送いたしました。その中で、キリンが2015年にミャンマーで合弁事業に乗り出した際に、軍の高官に4000万ドル、40億円以上の賄賂を送ったという内部告発についてお伝えしました。この内部告発に関しては、取材が不十分で事実関係の確認に問題があったと認識しており、結果として誤った報道となってしまいました。視聴者のみなさま、関係者のみなさまには大変ご迷惑をおかけいたしました。
ミャンマー国軍によるクーデターを受け、日本企業にも動きがありました。
現地でビール事業を展開するキリンホールディングスは2月5日、ミャンマー国軍と取引関係のある企業との合弁を早急に解消すると発表しました。
なぜこのタイミングで、背景には何があったのでしょうか?
テレビ東京の取材に対し、今夜キリンの幹部が応えました。
キリンホールディングス株式会社
[blogcard url="https://www.kirinholdings.co.jp/"]
アメリカのバイデン大統領、
ミャンマー国軍は制圧した権力を放棄し、暴力で拘束した人々を開放すべきだ。
アメリカのバイデン大統領はクーデターと認定したミャンマー軍政府を強く批判。
2016年に全面解除した経済制裁を再び課すという強い姿勢を見せています。
経済制裁が発動されれば軍の関係企業とビジネスをする日本企業も大きな影響を受けることに。
ミャンマーで売り上げナンバーワンのビール「ミャンマー・ブルワリー」。
味はとてもおいしい。毎日飲んでいます。
そのミャンマービールが溝に捨てられていました。一部の市民がボイコットを狙い、インターネットで拡散させています。
このミャンマー・ブルワリーは軍と深い関係があるためです。株主に軍関係者を多く抱える国軍系企業「MEHL(ミャンマー・エコノミック・ホールディングス)」が入っています。そして実は日本のキリンホールディングスとの合弁会社です。
2015年、キリンはミャンマー・ブルワリーの株を取得。キリンが51%、国軍系企業MEHLが49%出資し、ビール事業を開始。
キリンのミャンマーでの売上はキリンが取得した別のビール会社と合わせて290億円に上り、ミャンマービール市場でおよそ90%のシェアを握るといわれています。
しかし…
ロンドン支局の中村航記者、
キリンのミャンマー事業について人権団体「AMNESTY INTERNATIONAL(アムネスティ・インターナショナル)」は2018年に出したレポートでミャンマー軍との関係を指摘しました。
3年前、国際人権NGO「アムネスティ」はキリンの資金が軍の資金源になっていると指摘。
当時、軍がミャンマーの少数民族「ロヒンギャ」に対する迫害で国際社会から批判されていましたが、この人権侵害などにキリンの資金が流れていたというのです。
アムネスティ・インターナショナルのビジネス・人権調査員、モンツェ・フェレール氏、
キリン提携先、MEHLは歴史的にミャンマー国軍と関係がある。
私たちはレポートで詳細を初めて明らかにした。
彼らは人権侵害に関係し、危険で、企業は人権への注意義務がる。
アムネスティの一連の指摘を受け、キリンの磯崎功典社長は去年、アムネスティにこう応えています。
私たちは早急に調査をし、改善に向けて適切な行動をとります。
この問題に国連も動きます。2019年、国連人権委員会が発表したミャンマーに関する調査報告書の中に、
キリンを含む外国企業は国軍との経済的関係を断つべき。
軍を財政的に孤立させるべき。
などと要請しました。
しかしキリンは資金の流れを調査するとしながらおよそ3年間、はっきりとした資金の流れを把握できず軍系企業との提携も続けてきたのです。
さらにテレビ東京はキリンをめぐるある資料を独自に入手しました。
それはアメリカのSEC(証券取引委員会)宛てに正規に申請された内部告発。
タイトルはキリンホールディングスによるミャンマー高官への賄賂に関する提出物。
日付は2016年3月。キリンが株を取得した翌年のことです。
それによればキリンの当時の担当者が複数の軍の高官に4,000万ドル、40億円以上の賄賂がもたらされたとして国際的な賄賂などを禁止する海外腐敗行為防止法などに抵触しているというのです。
SECに確認すると、
捜査に関してはコメントできない
としています。
この件についてキリンに問い合わせると、
そのような事実はなく、調査があったこともない。
と否定しました。
ミャンマー国軍のクーデターに対し、強まる国際包囲網。
キリンは2月5日、ミャンマー事業をめぐり、パートナーの国軍系企業MEHLに合弁解消を要請すると発表。
国軍のクーデターに関して遺憾だと表明しました。
日本経済新聞社、アジア総局長の高橋徹氏は、
当初、疑惑が持ち上がって実際に調査に入るまでかなり時間がかかっている。動きが鈍いと言われても仕方がない。
経済制裁という話に今後はなっていくと思うが発動されてから解消では遅いという判断だと思う。
今後の事業展開について先程キリンの幹部がテレビ東京の取材に応じました。
実は去年から提携解消すべきという声は経営内部であった。
しかし、決めきれなかった。
今後、MEHLが株を手放すか、新たなパートナーを見つけることができるのか事業継続の不透明さは残っている。
キリンは事業の撤退は考えておらず、「ミャンマーの社会経済に貢献できるよう解決策を見出していく」としています。