色んな種類が出てきているノンアルコールビール。
ノンアルコールビールは酒税がかからず、利益率も高いので各メーカーが開発に力を注いでいます。
この市場を開拓したのはキリンビール株式会社です。2月8日、キリン株式会社の威信をかけたという新製品を発表しました。
一体どんなモノなのか、その舞台裏を取材しました。
麒麟麦酒株式会社
[blogcard url="http://www.kirin.co.jp/"]
キリンビール株式会社が2月8日に開いた新商品発表会。
布施孝之社長により、お披露目されたのは、
4月11日に発売する商品がこちら。
ノンアルコールビールの新商品「零ICHI」です。
特徴はキリンビール株式会社の主力ビール「一番搾り」と同じ製法の「一番搾り製法」。
ビールに近いノンアルコールビールが出来上がったといいます。
試飲
早速、大浜平太郎キャスターが試飲してみると、
最初はホップです。あとから麦の味が広がってきます。苦みも後味として残っている。優しいビールとう印象です。
ノンアルコールビール
そもそもキリンビール株式会社は2009年に世界で初めてアルコール0.00%の「キリンフリー」を発売したパイオニア。
ただその後、サントリービール株式会社の「オールフリー」やアサヒビール株式会社の「ドライゼロ」はカロリーや糖質をゼロにした機能系を導入しました。消費者の健康志向の高まりを追い風に現在の市場はこの
2つのブランドが大半を占めています。
布施孝之社長は、
2009年からノンアルコール市場を自分たちで作ってきたという自負がある。新商品で本気で巻き返しを図りたい。
復権をかけたキリンビール株式会社のノンアルコールの闘いに密着しました。
横浜工場
新商品「零ICHI」が開発された横浜の工場。
この日は他社のノンアルコールビールの味を分析していました。
今回、新商品の開発を託されたのは入社4年目、商品開発グループの北村友依さん。
オールフリーは香りも味も甘いと思ったのが率直な印象。
今、ノンアルコールのスタンダードは機能系。ただ糖質やカロリーをカットするとビール本来のこくや旨味も削られてしまうといいます。
キリンビール株式会社が最近行った調査では、
お客様にノンアルコール飲料の不満を聞いたときに「もっと美味しいものが欲しい」というのが大前提で、あまり「機能」は求めていないことが分かった。
味を優先させるためキリンビール株式会社は虎の子の「一番搾り製法」の導入を決めました。
一番搾り製法
そもそも一番搾り製法というのはどのようなものなのでしょうか?
まず窯の中に麦芽とお湯などを入れおかゆ状の「もろみ」を作ります。
それを濾過して最初に出てきた液体が「一番搾り麦汁」。
その後にお湯を足してさらに絞り出したのが「二番絞り麦汁」です。
通常ビールは一番搾りと二番搾りで作られます。
キリンビール株式会社の「一番搾り」はその名の通り「一番搾り麦汁」だけを使うのです。
ただ、問題もあります。
キリンビール株式会社の妻鳥奈津子さんによると、
しっかりと麦の旨みは表現できるが、麦の麦汁感はネガティブな香りが多く低減させることが一番難しい工程。
麦汁を発酵させるとビールになりますが、その発酵の過程で麦汁の独特の匂いは少なくなります。
しかしノンアルコールは発酵させないため、キリンビール株式会社はその匂いを抑える素材を約200種類の候補の中から探し出すことに成功しました。
経営戦略会議
2016年12月、キリンビール株式会社の本社。
キリンビール株式会社の経営戦略会議に初めてテレビカメラが入りました。
この日、「零ICHI」を商品化するかどうか経営陣が最終判断を下します。
北村友依さんは、
ビールの代わりとして飲めるノンアルコール飲料の味を目指している。
布施孝之社長の試飲が始まりました。
今までのノンアルコールビールにはない新しい美味しさだと感じた。
評価は上々。しかし、すかさず布施孝之社長は発破をかけます。
「一番搾り製法」は世界に類を見ないキリン独自の製法。その製法をこのノンアルに搭載させることはキリンが威信をかけた闘いになる。
承認いただきたく思っていますがいかがでしょうか?
これで行きましょう。
新商品「零ICHI」の発売が正式に決定しました。
今後、どのように販路を広げていくのか?
シェア
1月20日、キリンビール株式会社の首都圏統括本部。
首都圏の営業担当者、約100人に向けて新商品の説明会が行われました。
ここで開発担当の北村友依さんが訴えたのは、
キリンのビールファンでありながら他社のノンアルを飲む人が主なターゲット。
キリンビール株式会社のビール類のシェアは34.5%あります。ただ、ノンアルコールビールでのシェアは9.8%と低く、他社に流れてしまっているのが現状です。
北村友依さんはキリンビール株式会社のビールが好きな消費者に新商品をアプローチすることで自ずとノンアルコールのシェアも上がると力説しました。
野口洋平主任
早速、動き始めた営業2部の野口洋平主任が訪ねたのは渋谷の居酒屋「佐五右衛門」です。
こちらでお客様に出している生ビールはキリンビール株式会社の「一番搾り」。
ただ、ノンアルコールビールはアサヒビール株式会社の「ドライゼロ」を取り扱っています。
そこで野口洋平主任は新商品「零ICHI」の売り込みにやってきたのです。
串焼き居酒屋 佐五右衛門を運営する熊谷光裕社長は、
どんな味がするのか楽しみ。
競合他社も含め3つのノンアルコールビールを商品名を明かさずに飲んでもらいます。先入観なしで「零ICHI」のビールらしさを味わってもらおうという作戦です。
最初に飲むのが新商品の「零ICHI」。
おいしくない。
続いてサントリービール株式会社の「オールフリー」。
あ~うん。
最後にアサヒビール株式会社の「ドライゼロ」です。
これ!
熊谷光裕社長が選んだのは、まさかの「ドライゼロ」。
ただ普段はあまりビールを飲まないといいます。そこで、
この中で一番ビール好きなの誰?
今度はビール好きというスタッフにも商品名を伏せて飲んでもらいます。そして選んだのは「零ICHI」。
おいしかったです。一番。自分は一番搾り大好きで、キリンのビールが好きだが、自分の口に一番合うと思った。
ようやく商談が成立。4月の発売から「零ICHI」の取り扱いが決まりました。
復権
ノンアルコールビールの復権へ。キリンビール株式会社の威信をかけた闘いが始まります。
「どのくらいのシェアを目指す?」
布施孝之社長は、
将来的にはトップシェアを目指す。2020年には30%のシェアを獲得したい。社員一丸となって頑張っている。