地域の奮闘する企業を取り上げる「輝く!ニッポンのキラ星」。
今回は静岡県伊豆の国市からです。独自技術を強みに自動車の車体の金型で国内シェアトップを誇る企業を取材しました。
株式会社木村鋳造所
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静岡県伊豆の国市。自動車関連の工場が立ち並びます。
ここに自動車産業を支える企業「木村鋳造所」が。
1927年に創業した木村鋳造所。従業員923人、売上高は141億円に上ります。
産業機械向けや工作機械向けの鋳物など幅広く製造し、特に自動車の車体の金型の鋳物では国内シェア4割を誇ります。
木村鋳造所の木村寿利社長。
「フルモールド鋳造法」という鋳造方法。
鋳造業の中では一番新しい技術。
鋳物は木で模型を作り、その周りを砂で固めて型を取り、木の模型を取り除いたうえで鉄を流し込んで冷却する製法が一般的ですが…
フルモールド鋳造法は木ではなく発泡スチロールを使って模型を作ります。
完成した模型の周りを砂で固めると、そのまま高温の溶けた鉄を流し込みます。
すると高温で発泡スチロールが燃焼して気化し、その空間に鉄が流れ込み、冷却してそのまま製品になります。
発泡スチロールの模型は木型に比べ短納期制作が可能。
設計の変更も簡単にできるため複雑な形状の製品に向いているのです。
この鋳造法の難しい点は発泡スチロールの燃えかすが製品の中に入ってしまう。
製品に燃えかすが入らないように50年かけて技術革新を行っている。
発泡スチロール専門メーカーと新たな素材を研究開発し、製造の際に燃えかすが残らないようにしています。
また専用のソフトを使い、鉄をどの部分からどのように流せば欠陥のない精巧な製品が作れるのかシミュレーションを行っています。
50年以上をかけてノウハウを蓄積し、顧客からの信頼を得ることができたのです。
これまでは2次元の図面から手作業で模型を作っていたため模型が残らないこの製法は量産に向いていませんでした。
しかし、コンピューター上で3次元の設計図を作成し、機械で模型を作ることで何度でも模型を再現することができるように。
これにより生産性が3倍になったのです。
ITとフルモールド鋳造法の鋳造技術を合体させることにより量産メーカーと互角の生産技術が完成した。
2013年には他社に先駆けて3Dプリンターを使った鋳物作りを開始しました。
フルモールド鋳造法の4分の1の期間で作ることができます。
自動車部品の試作品などより早い納品を望む顧客のニーズに応える取り組みを行っています。
さらに鋳物の模型を作る技術力を生かし、新たな取り組みにも乗り出しています。
それは発泡スチロールを使った模型作り。
技術力が評価され小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトから依頼が来ています。
また、アートとして展示もされているのです。
去年、新たな依頼があり、発泡スチロール製のパーテンションを開発。
鋳物で使う発泡スチロールは燃えやすくしていますが、パーテンションの素材は逆に燃えづらい素材を使っています。
軽くて防音性や耐水性が高く、簡単に組み立てられるため災害避難所でも感染防止用として注目されています。
発泡スチロールの加工技術を生かしたモノづくりが新たな顧客の獲得につながっています。
多くのお客様から鋳物だけでなく発泡模型などの要望がある。
鋳物会社だが形状を作る会社に変貌していきたい。