厚生労働省が発表した働く人1人あたりの給与総額は、7月分ですが1年前に比べて%増え37万2,757円でした。これは残業代なども含んでいるので高めの額となっています。
5ヵ月連続の増加ですが、コロナ前の水準には依然として回復していません。
給与が伸び悩む中、足元では日常的に購入する食品の値上がりも進んでいるようです。
なかでもジャガイモの生産に異変が起きています。加工品などへの影響が懸念されています。
有限会社菊水堂
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東京・足立区にあるスーパー「ベニースーパー佐野店」。
こちらのスーパーでは惣菜の売り上げが好調だということです。
冷蔵の餃子や弁当のほか、牡蠣といった旬の食材を使った揚げ物など、こうした商品の売り上げはこちらの店では10%ほど伸びています。
ベニースーパーの赤津友弥本部長。
お客様にだんだん自宅での調理疲れが出てきた。
少しでも時間を短縮させるような方向性の商品が伸びている。
こうした傾向は9月7日に発表された7月の家計調査でも。惣菜や弁当といった調理食品は1年前より8%あまり支出が増える一方で調理が必要なコメや肉類は減っています。
また東京オリンピックを自宅で観戦する人が多かったことなどから菓子が7.2%や飲料は12.9%伸びました。
一方、家計を直撃しているのが野菜の高騰。農林水産省の最新の調査ではキュウリの平均小売価格は例年の64%、レタスが59%高くなっています。
今後の価格が気になるのがジャガイモです。小売価格は平年より5%安いのですが、実は卸売価格が9月6日時点で1キロあたり191円と平年よりも50%ほど高い水準になっていて小売価格の上昇が懸念されています。
日本の生産量のおよそ8割を占める北海道を訪ねました。
一面に広がるのはジャガイモ畑です。
ジャガイモを生産している名畑武蔵さん。
20日までに終わらせたい。今は収穫の最盛期。
先月下旬から収穫を始めていますが去年に比べ生産量が2割ほど減少する見込みだといいます。
その理由が…
7月の雨不足は北海道らしからぬ高温の連続。これだけ雨が降らなかった年は経験したことがない。
実は北海道ではこの夏、猛暑が続き降水量が激減。7月は統計開始以来の高温となり、ジャガイモの生育に影響を与えていました。
特にその大きさに変化が…
ジャガイモが大きくなろうというときに雨がなく小玉傾向で変形しているものも多い。
JAグループのホクレンは過去に類を見ない記録的な猛暑と干ばつだったとしてジャガイモだけではなくタマネギやニンジンなど北海道産野菜全般に影響が出ており、収穫量の低下は避けられないとの見通しを示しています。
価格上昇の原因となっている北海道の天候不良。しかし産地の卸業者は原因はそれだけではないと指摘します。
本間松藏商店の本間浩規社長。
コロナ禍で一回止まった物流が2倍くらいのコストがかかっている。
卸値はすでに高くなっていますが本間社長は今後不作に加え、物流コストなどの上昇による影響の拡大を懸念しています。
影響としては加工業者に出荷するジャガイモのほうが少ない。
ジャガイモの加工品として代表されるのがポテトチップスです。
過去には2016年の台風被害でジャガイモの収穫量が減少し、翌年には一部のポテトチップスが販売休止になったこともあります。
今年は記録的な猛暑と干ばつ。メーカーにはどのような影響があるのでしょうか。
使用するジャガイモのほとんどが北海道産というポテトチップスメーカー「菊水堂」は先々に不安を感じているといいます。
菊水堂の岩井菊之社長。
継続的にジャガイモは足りていない。
うちは専業メーカーだから今後影響が大きいと開店休業になる可能性があることが一番怖い。
今後について専門家は…
大和証券のシニアアナリスト、守田誠さん。
各メーカーが産地の多様化を進めていくことで調達の柔軟性はだいぶ上がってきた。
ジャガイモの作柄だけでは価格改定は決まらない。
ジャガイモだけで価格改定は考えにくいとする一方で価格に大きく影響を与えるものがあるといいます。
世界のパームオイルや包材フィルムとかさまざまな原材料が上がっているのでここについては企業努力を超えているのではないか。
最終的にはそういったものを包括して値上げという選択肢になるのではないか。
専門家はジャガイモよりも植物油や包装材の値上がり影響の方が大きいと指摘します。
加工メーカーはジャガイモの不作の懸念だけでなくいま世界的な原材料高にも直面しています。