7月初めに発生したKDDIの大規模な通信障害。利用者やインフラに大きな影響を及ぼした今回の通信障害についてKDDいは7月29日に会見を開き、おわびとして利用者3,655万人に一律200円を返金すると発表しました。
KDDI通信障害!「命を預かっているのに…」
訪問看護サービスを展開する「訪問看護ステーション ブロッサム」。7月上旬に起きた大規模な通信障害で事業に混乱が生じました。
訪問看護ステーション ブロッサム
西村直之代表

auのスマートフォンから電話したが「接続できません」、これが続いた。
障害が起きた土曜日と日曜日は通常、事務所に誰もいない状態。固定電話にかかってきた電話はスタッフが持ち歩くauのスマートフォンに転送されることになっていますが、障害で通じなくなったため代表の西村さんは復旧までの間、事務所での待機を強いられたといいます。
訪問看護ステーション ブロッサム
西村直之代表

私たちは命を預かっている仕事だから補償は特に求めていない。
通信障害はあってはいけないことだから。
通信障害を起こさないための対策を取ってもらいたい。
今回の通信障害の影響を受けた人は少なくとも延べ3,091万人。その規模は過去最大級となりました。
KDDI 一律200円返金!総額は75億円に
通信障害の責任をどのように取るのか、7月29日に会見を開いたKDDIは…
KDDI
髙橋誠社長

全国のお客さまに多大なご不便、ご迷惑をお掛けし深くおわび申し上げます。
髙橋社長はおよそ6秒間にわたって頭を下げました。
利用者への補償
会見で注目が集まったのが利用者への補償です。KDDIは通信障害のおわびとしてスマートフォンなどを契約しているほぼ全てのユーザー、3,655万人に一律200円を返金すると発表しました。
また契約に基づいて24時間以上連続して全ての通信サービスを利用できなかった278万人に平均104円を追加で返します。
補償の総額は過去最大のおよそ75億円に達するといいます。
自らもauを利用している田中瞳キャスター。
田中瞳キャスター
今回の補償や追加対策にかかるコストはどのような形で誰が負担するのか?

KDDI
髙橋誠社長

経営に影響がないとは言えない額だが、直接的に今回の補償料をお客さんの料金に転嫁することはしない。
一律200円という補償額に街の人は…
auユーザー

儲かっている会社だからクライアントにもっと「すいませんでした」と言うところ。
200円だけ、宝くじ一つ買えない。
auユーザー

返金という補償をしてもらい、誠意を見せてもらってありがたい。
大規模通信障害の原因
もう一つの焦点は通信障害の原因です。髙橋社長は点検作業の準備が不足していたことを理由に挙げました。ネットワークの中継機器を点検した際に古い手順書を使ってしまったということです。
通信障害を起こした責任を取り、髙橋社長は役員報酬の20%を3ヵ月分自主返納します。
田中瞳キャスター
通信障害で少なからず他社に流れたユーザーをどう取り戻すか?

KDDI
髙橋誠社長

お客さまの信頼は失ったと思っている。新規ユーザーは影響が出ている。
再発防止をしっかりやってお客さまの信頼を地道に回復していく。
専門家は同じような通信障害は今後も起こり得ると指摘します。
MM総研
横田英明常務

各通信事業者がトラブルを起きないよう想定して対策しても少しボタンを掛け違うだけで問題が起きてしまうことがあるので、想定外のことが起きてしまうネットワークビジネスの難しさ。
通信障害の備えで注目!1台で2つの回線
通信障害への備えとしていま注目されているのが…
宮崎文子記者

携帯電話の通信に欠かせないのがSIMカード。これを2枚使いすることができるのです。
キャリアが異なるSIMカード2枚を用意し、1枚をサブ回線として使うデュアルSIMという方法です。
SIMカードとは利用者の契約情報や電話番号が紐付けられている小型のカードのこと。
従来のスマートフォンなどはこのSIMカードを1枚だけ差し込むつくりになっていましたが、このところ2枚入れられる機種が増えています。1台で2つの回線が使えるためどちらかにトラブルが合った場合、もう一つの回線を使えるのが強みです。
HISモバイル
セールスグープ
氏家北斗マネージャー

月額290円から。
端末の操作で切り替えることができる。そのほかの通信事業者に切り替えて問題なく利用することが可能。
低価格で契約ができ、回線の切り替えも簡単なことからHISモバイルではサブ回線としてのSIMカード利用プランが人気だといいます。
実際に試してみます。携帯電話に2枚のSIMカードを入れると端末が主回線の090とサブ回線の080の2つの番号を認識します。
まず090から始まる主回線。問題なくつながりました。
続いて…
宮崎文子記者
080の番号にかけてみると

HISモバイル
セールスグープ
氏家北斗マネージャー

今度は「docomo経由で着信中」と表示がされています。
通信障害の発生直後からサブ回線プランへの加入者は急増。およそ1ヵ月での伸び率は前の月から3割増えました。
HISモバイル
セールスグープ
氏家北斗マネージャー

デュアルSIM対応端末の売り上げが120%伸びている。
通信障害の影響で何か対策というか対応されているのでは。
通信障害に企業も対策!貨物輸送をどう管理?
通信障害への対策は企業にとっても大きな課題です。
KDDI回線を利用してコンテナなどの輸送を管理してきたJR貨物。
独自のトレースシステムはフォークリフトのセンサーでコンテナのタグを読み取りGPS情報を使って位置情報などを管理。
輸送を大幅に効率化してきましたが今回通信障害の影響を受けました。
日本貨物鉄道
大道浩史さん

リアルタイムの情報を失っていくので列車が何を乗せればいいのか、降ろす物を徐々に分からなくなっていく。
これを受けてJR貨物ではトレースシステムの機器およそ600台をを全て今年度中に取り替えることを決定。複数の通信キャリアに対する危機に入れ替えることで非常時も影響を最小限にするよう体制を整えます。
日本貨物鉄道
大道浩史さん

大雨、洪水などエリア別に見ると通信条件が悪くなることもあるので、複数の通信回線を持つことは非常に継続していくうえで重要。
ローリングの実態は?秋に議論本格化
個人や企業の対策には限界がある中、実現が急がれているのが非常時にほかの会社の通信網に臨時で乗り入れるローミングという制度です。
金子総務大臣は7月29日にこの精度の実現について重要な課題だと改めて表明。政府は有識者や通信会社などによる検討会で秋にも議論を始める見通しですが、技術的な課題も多く早期に実現できるかどうかは不透明です。
MM総研
横田英明常務

今回の問題で通信が途切れるリスク、事業に与えるリスクを認識したと思うので相互ローリングへの動きは活発になってくるだろう。