カッパ・クリエイト株式会社
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大手回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」。
創業約40年。かっぱのマークで親しまれています。
全国に348店舗を展開する業界の老舗です。
丸い皿が100円、四角い皿が180円、2つの手頃な価格で気軽に寿司を楽しめます。
ところが日曜日の昼時にもかかわらず待合室はガラガラ。
前に行った店が混んでいたので、こっちに来た。
「前に行ったお店は?」
スシロー。
実はかっぱ寿司、3年連続で売上が減少。
好調の回転寿司業界で一人負けの状態です。
そのかっぱ寿司がこの秋、ブランド再生に向け生まれ変わろうとしていました。
四方田豊社長
9月15日、さいたま市のとあるビル。
この日、東京と埼玉のかっぱ寿司の店長、約80人が集められました。
壇上に立つのはかっぱ寿司再生のため2016年6月に社長に就任した四方田豊社長(47歳)。
開口一番、四方田豊社長が切り出したのは、
「人にかっぱ寿司を薦めると自分が惨めになってしまう。」そんな厳しい意見をいただきました。
店長たちに現実を突きつけます。
四方田豊社長、焼肉チェーン「牛角」の一店長から専務まで上り詰め、「株式会社成城石井」の社長も務めた経営のプロです。
100円の寿司がおいしくなくなったら皿が積み上がらない。100円の寿司は常に磨き続けなければいけないし、回転寿司をやっている以上、ここに対する努力は必須だし、当たり前。
秋鮭
9月下旬、北海道・網走沖のオホーツク海。
この時期、川に遡上する前の秋鮭が一斉に集まってきます。
しかし、
今年は全然ダメ。
漁の様子を見ているのはかっぱ寿司再生を託されたカッパ・クリエイト株式会社の牛尾好智さん(32歳)。
朝5時、漁港に戻ります。
今年、北海道の秋鮭の水揚げ量は天候不順などで去年に比べて34%も激減。
価格の高騰が心配されています。
イクラ
そんな中、牛尾好智さんが向かったのは釧路にある水産加工会社、北海食品株式会社。
あの網走沖でとれた鮭の卵、手作業で丁寧にバラされていきます。
この時期のイクラは1年で最も美味しいといわれています。
牛尾好智さん、食べてみると
黄身の味、卵の黄身の味。
皮が柔らかくて濃厚。超がつく極上品です。
「どうしても、このイクラが欲しい。」、牛尾好智さん、直談判です。
交渉の相手は北海食品株式会社の佐久間章社長。
北海食品株式会社、回転寿司チェーンとの取引は初めてでした。
粒感というか一個一個のダイナミックさは勝てるものはない。100円になるのか、180円になるのか、今から調整はしていくが、かっぱ寿司オリジナルの鮭のイクラを作っていきたい。
牛尾好智さん、懸命に訴えます。
しかし、
趣旨は分かりますけど、かっぱ寿司は「100円」のイメージ。この価格帯で商品提供するのはかなり難しい。
佐久間章社長はかっぱ寿司で100円で売られると自社ブランドの価値まで下がりかねないと恐れていました。
まして今年は、
豊漁の年だと十分対応できる数量だけど、今季に関しては非常にハードルが高いなという気がする。
当然、仕入れ値は上がります。
それでもなんとか10月分だけは取引してもらえることになりました。
一方、販売価格については持ち帰ることになりました。
イクラの寿司
9月28日、神奈川・横須賀市にあるかっぱ寿司の商品開発室。
釧路から戻った牛尾好智さん、早速サンプルで持ち帰ったイクラを取り出します。
最高級の品質。
少しでも豪華に見えるようなカタチにします。
手巻き風に盛り付けました。
そこに現れたのが四方田豊社長。
牛尾好智さんがかっぱ寿司再生を託したイクラ、四方田豊社長に食べてもらいます。
しょうゆいらない。濃厚だよ。
そして価格は、
100円で出します。大丈夫だよね。
牛尾好智さん、実は大丈夫ではありませんでした。
横浜市、かっぱ寿司の本社があるビル。
かっぱ寿司再生の目玉として北海道産のイクラを買い付けた牛尾好智さん。
ある問題に頭を抱えていました。
100円、100円で、100円で。
すると四方田豊社長の元に行きます。
売価ですが、正直なところ100円か180円で揺れています。100円のイクラを定番で売り続けるのは回転寿司にとっても、お客様にとってもいいことだとは思うが、一方で考えないといけないのは作ってもらう生産者。「本当に大切に売ってほしい」と「プライドをかけて作っている」と、ずっと「100円で定番」というのは、生産者の思いもあるので、僕とすればやめておきたいなと。
100円で売るべきではない。突然の訴えです。
生産者の思いはすごくすごく分かるし、大切にしなきゃいけないと思う。まず100円で売ることが決して安売りじゃない。我々の思いは生産者のこだわりや思いを一人でも多くの人に体験してもらおうと、我々もここに命を懸けて100円で売らせてもらっている。
「価値ある商品を100円で提供することに意味がある」と伝えた四方田豊社長、すると
分かりました。そういう思いを伝えて100円でしっかりと売らせてもらう。
新生かっぱ寿司の目玉として、あえて100円で提供することにしました。
かっぱ寿司三鷹店
かっぱ寿司再生、第一号店オープンの日。
店の外観はオシャレに生まれ変わりました。
開店と同時に続々とお客様がやってきて入り口にも溢れています。
ロゴもかっぱのマークが消え新しいデザインになりました。
店内も大きく変わりました。清潔感のある白木風の造りです。
靴を脱いで座れる小上がり席もあります。
そして最大の目玉、「北海道産鮮極イクラ」厳選一貫108円。
早速、注文が入ります。
北海道沖のオホーツク海でとれた柔らかく濃厚なイクラ。
おいしいです。プチプチしてます。
さらに期間限定の華やかな創作寿司も、価格は300~400円と少し高めです。
イクラを呼び水に、こうした新しい商品にも注文が相次ぎます。
そして牛尾好智さんが大切なお客様を連れてきました。
あのイクラの生産者、北海食品株式会社の佐久間章社長です。
実はまだ、あの大事なことを伝えていなかったのです。
きれいなお店ですね。鮮度感が出ている。
佐久間章社長、これまで持っていたかっぱ寿司のイメージが少し変わったようです。
そこに届いたのは佐久間章社長から仕入れた、あのイクラです。
ここで牛尾好智さん、佐久間章社長に価格を100円にしたことを初めて打ち明けます。
100円で。
100円ですか?
最初はお客様に一度食べてもらいたいという。
佐久間章社長にも食べてもらいます。
価値があるからこそ100円でお客様に届ける。
牛尾好智さんの思いを分かってもらえるでしょうか?
かっぱ寿司がお客様のために損をして提供していることなので、かっぱ寿司とすればスタートですよね。良い結果報告を心待ちにしているので。
かっぱ寿司再生のスタートとして今回は後押ししてくれるそうです。
牛尾好智さんはこれからも100円の寿司を価値ある商品へと磨き続けていくつもりです。
これをどうやって続けるかがすごく大切。デフレとか、飲食が縮小とかあるけれども、今日みたいな日があると、やっていて良かったなと思う。
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