自宅から任意同行されるかっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの社長、田辺公己容疑者。田辺容疑者はライバル会社の営業秘密を不正に受け取った疑いで逮捕されました。東証プライムに上場する回転ずし業界のトップが逮捕された背景には何があったのでしょうか。
「かっぱ寿司」社長を逮捕
営業秘密持ち出しの実態は
田中瞳キャスター
100円寿司が人気のかっぱ寿司ですが、きょうの社長の逮捕を受けて利用客はどのように感じているのでしょうか。
お客さん
社長が逮捕とはびっくりした。
回転ずし同士で情報をやりあう戦略があるのか。
お客さん
やはり信用が一番だと思うので多分店に来ない。
各社が値上げに踏み切る中、1皿100円にこだわってきたかっぱ寿司。全国に300店以上展開する会社のトップに捜査のメスが…
警視庁担当
轟拓人記者
田辺社長が警視庁の捜査員に連れられ自宅から出てきました。
警視庁は9月30日にライバル会社の営業秘密を不正に取得したとしてカッパ・クリエイト社長の田辺公己容疑者と幹部の大友英昭容疑者、そしてはま寿司時代の部下の湯浅宣孝容疑者の合わせて3人を不正競争防止法違反の疑いで逮捕しました。
どんな営業秘密を入手したのでしょうか。
田辺容疑者は2020年10月末まで、はま寿司を運営するゼンショーホールディングスの幹部でしたが、その直前の9月末にはま寿司の仕入れ値などに関する営業秘密を取得。
その後、転職先のカッパ・クリエイトで当時、商品部長だった大友容疑者にデータをメールで送った疑いが持たれています。
警視庁によると不正に取得したデータははま寿司が取り扱った食材の取引先や価格などに関する情報で大友容疑者はこのデータをさらに社内で共有したほか、田辺容疑者とともにこのデータを使ってかっぱ寿司の商品原価とはま寿司の商品原価を比較するなどしていたということです。
一人負けのかっぱ寿司
入手情報は「利益に直結」
ファミリー層を中心に人気が続く回転ずし。市場規模はコロナ禍でも過去最高となりこの10年で6割増える見通しです。
かつては業界最大手だったかっぱ寿司。しかし、ここ数年は競合他社が売上を伸ばすなか苦戦。大手5社の中で唯一売上を減らしていました。
業界4位ですが3位のはま寿司と比べると売上高は半分にとどまります。
回転ずし業界に詳しい専門家は…
回転寿司評論家
米川伸生さん
かっぱ寿司の赤字額は半端ない。グループの不良債権みたいなもの。
なんとかしろというコロワイドグループのプレッシャーがものすごい強いはず。
さらに背景にあるのが食材価格の高騰です。
中国などですしの人気が高まったことに加え、円安や燃料高でネタとなる魚介類の仕入れ値が上昇。そのため回転ずし業界では魚の奪い合いが起きていて、田辺容疑者が入手した情報は利益に直結すると専門家は指摘します。
回転寿司評論家
米川伸生さん
本来、はま寿司が購入できるはずの魚をかっぱ寿司が横取りする可能性もある。
横取りできる可能性を仕入れ値データというのは持っていて、この仕入れというのが回転ずしにとってものすごい心臓部。
利益に直結する部署。
警視庁は不正に入手した情報が社内で活用されていたと見て、法人としてのカッパ・クリエイトも不正競争防止法違反疑いで書類送検する方針です。
社長の逮捕を受け、カッパ・クリエイトは…
回転寿司評論家
米川伸生さん
関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くおわび申し上げます。
とコメントしました。
急増 営業秘密の漏えい
事件を防ぐ対策は?
同様の事件は過去に通信業界などでも…
ソフトバンクの社員だった当時45歳だった男が楽天モバイルに転職する際、高速通信規格5Gに関する技術などを持ち出したとして去年、逮捕・起訴されました。
こうした営業秘密の漏えいなどで摘発された件数は急増していて、去年は1年間に23件と過去最多を更新しています。
事件を防ぐための対策はあるのでしょうか。企業の法務に詳しい弁護士は…
植月・岩﨑法律事務所
岩﨑崇弁護士
機密に管理されている情報というのが事業の根幹。
利益をあげるために有用であれば有用であるほど、情報を取得したい、持ち出したい、利用したいという動機が高まる。
役員や代表者であっても自分が持っている、知っている情報は会社との委任の契約のもとで預かっている意識を持てるかどうか。