「ケーザイのナゼ?」です。いま大手建設会社や鉄鋼メーカーが力を入れている取り組みがあります。それが海藻を育成することです。実はこの海藻、食用ではなくある大きな目的のために利用されるのですが、その意外な理由を直撃リサーチしました。
大企業が海藻育成…ナゼ?
太平洋を望む神奈川県葉山町。そこにゼネコン大手、鹿島建設の研究所があります。
施設の中に案内されるとそこには…
鹿島建設
地球環境・バイオグループ
林文慶上席研究員

これはカジメという海藻で葉山に生息する海藻。
今回はどの時期でも海藻を生産できる技術を開発しました。
鹿島建設は国内で初めてという大型海藻の大量培養技術を確立しました。
海藻を育てるワケは?
一体、なぜ海藻を育てる研究を行っているのでしょうか。
鹿島建設
地球環境・バイオグループ
林文慶上席研究員

水温の上昇などで海の環境も変化している。
保全していくためとあとは生物多様性。
海藻がなくなり砂漠のようになる磯焼け。全国各地に広がり、生態系が崩壊するなど大きな問題になっています。
その解決に向け、研究開発を行っていました。
鹿島建設
地球環境・バイオグループ
林文慶上席研究員

これがオスで、これがメス。
黒い粒が海藻のタネ、そのオスとメスを別々に管理。無菌状態にし、独自の温度管理をすることで長期保存が可能となりました。
特殊な交雑方法でいつでも大量に海藻を育てることができるといいます。
去年11月の実証実験の映像。小さな海藻を植え付けたユニットを海に入れました。およそ半年後、海の中では大きく成長した海藻の姿が。
3年をかけ、この技術を確立。じつはこの研究に力を入れるもうひとつの理由があるといいます。それが…
海藻を育てるもうひとうのワケは?
鹿島建設
地球環境・バイオグループ
林文慶上席研究員

陸上の森林だけではCO2の吸収に限界があります。
こういった海藻はCO2の吸収とか確認されていますので、ブルーカーボンというキーワードがあるがCO2の貯留としての役割が大きいと思います。
ブルーカーボンとは?
ブルーカーボンとは一体何なのでしょうか。
森林など陸上で吸収する二酸化炭素をグリーンカーボンと呼ぶ一方で、海でも海藻などにより二酸化炭素は吸収されていて、それをブルーカーボンと呼びます。
その吸収量はグリーンカーボンが年間19億トンに対し、ブルーカーボンは25億トンにも上るといわれています。
ブルーカーボンが日本を救う!?
このブルーカーボンに取り組む企業がほかにも。大手鉄鋼メーカーのJFEスチール。
工場の敷地内には…
番組スタッフ
山になっているものは?

JFEスチール
東日本製鉄所
角田篤史さん

鉄鋼スラグになります。
2万トンレベル。
鉄を作る過程でできる副産物の鉄鋼スラグ。主に道路やセメントの材料などに使われています。
JFEスチールではこれを加工し、海藻の育成に活用しているのです。
鉄鋼スラグの特徴は?
どのような特徴があるのでしょうか。
JFEスチール
スラグ事業推進センター
宮田康人主任部員

表面がゴツゴツ、ザラザラしたところに海藻の幼生が付着しやすい。
さらに鉄鋼スラグからの鉄分も海藻の育成に良い影響を与える可能性があるとしています。
実証実験を行った静岡県の南伊豆町の海。海底にあるのが鉄鋼スラグでできたブロック。そこから海藻が育ち、環境が改善されました。
JFEスチール
スラグ事業推進センター
宮田康人主任部員

日本は海岸線が長いという特徴からブルーカーボンを進めていくのは非常に有益ではないかと考えています。
製造メーカーとしてカーボンクレジットに寄与する。
カーボンクレジットは温室効果ガスの削減の効果を数値化し、取引できるようにしたもの。
今後、海藻などを育てることによって海に吸収された二酸化炭素をクレジットとして取引することも可能になるといいます。
実際に国内ではブルーカーボンクレジットが動き始めています。
ブルーカーボンのクレジットを認証・管理しているジャパンブルーエコノミー技術研究組合では去年、実験的に4件のクレジットを発行。取引が行われました。
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合
桑江朝比呂理事長

漁業協同組合あるいは自治体とかが連携して、地元の海での、例えば藻場の喪失からの回復とか、そういったことに関する認証でした。
購入者側は大体30社ぐらいあった。
大手海運会社や保険会社、商社などがクレジットを購入しました。CO21トンあたり平均7万2,000円で取引されました。
日本の温室効果ガスの排出量は現在年間11トンあまり。政府は2050年に排出実質ゼロを目指していて、今後このブルーカーボンの市場は重要性を増していくといいます。
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合
桑江朝比呂理事長

1トン当たり5万円目指し、5,000万トンレベルでの吸収を理想としている。
兆を超える市場規模になり得る。