国内に600万人の患者がいるといわれる喘息。この内、6割が大人の患者だといわれています。
最新の治療と検査法を取材しました。
喘息
都内に住む70代の菊池義雄さん(仮名)。約40年前から喘息を患っています。
5分程歩いていると呼吸に雑音が入る喘鳴という喘息特有の症状が現れました。
菊池さんは喘息の症状を抑えるため10年以上、毎日数種類の薬を飲み続けています。
一番つらいのは咳き込むこと。咳がずっと続いて眠れないときが一番苦しい。
喘息とは肺の中の気道に炎症が起こり狭くなってしまう病気です。
喘息になると気温の変化やホコリなど、わずかな変化にも反応をして激しい咳などの発作を引き起こします。
喫煙やハウスダスト、ストレスなどが喘息の原因と考えられていますが症状が見過ごされ病に気付かないケースも少なくありません。
国内の喘息患者は推定で600万人以上。その内の約6割が成人の患者です。
喘息による死者は年間に1,500人に上ります。
順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターの呼吸器内科科長、熱田了先任准教授は、
喘息は死なない病気ではない。死ぬことがある病気だと思った方がよい。
実は恐ろしい病、喘息。その治療と検査の最前線を追いました。
順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター
[blogcard url="http://www.juntendo.gmc.ac.jp/"]
喘息を簡単に診断する最新の検査が登場しています。
この日、30代の田中真一さん(仮名)は長引く咳のため病院を訪れました。
2~3ヶ月前から咳がひどく出る。苦しくて仕事に集中できない。
咳は喘息以外の病気でも症状が現れることが多く、これまで診断が難しいことがありました。
そこで田中さんは最新の検査を受けることにしました。
呼気の中の一酸化窒素の測定をします。
田中さんが受けるのは「呼気NO(一酸化窒素)検査」という呼気に含まれる一酸化窒素の濃度を測定する検査です。
喘息になると気道が炎症を起こし呼気に含まれる一酸化窒素の濃度が上昇します。ほかの病気ではこの一酸化窒素の上昇がみられないため喘息と診断ができます。
これを見ながら吐きます。
検査は約10秒間。筒を加えて息を吐くだけです。
結果はすぐに表示されます。
5以下。
数値が37ppb以上だと喘息が強く疑われます。
すぐに医師から検査の結果が伝えられます。
今回やった検査の結果を見ると問題ない。
検査で早期に発見し治療を行えば効果も高い。
検査費は保険が適応され3割負担で720円。
熱田先任准教授は、
全ての喘息がNO(一酸化窒素)が高いわけではないが、高ければ喘息の診断に近づくのは間違いない。診断までが早いのが一番のメリット。
国立国際医療研究センター
[blogcard url="http://www.ncgm.go.jp/hospital.html"]
これまで薬の治療しかなかった喘息に新たな治療法が登場しています。
子供の頃から喘息を患う30代の吉田正美さん(仮名)。薬を使った治療を続けてきましたが症状を抑える事ができませんでした。
そこで吉田さんは最新の治療を受けることにしました。
使うのは気管支鏡と呼ばれる内視鏡カメラ。まずはこれを患者の気管支の先まで挿入していきます。
続いて取り出したのは特殊なカテーテル。
気管支サーモプラスティ。
吉田さんが受けるのは気管支サーモプラスティと呼ばれる治療。カテーテルはレバーを操作すると細い電極のついた先端が広がるようになっています。
喘息患者の気管支は発作を繰り返すことで内側の筋肉が厚くなっています。そのためホコリなどのわずかな刺激に筋肉が過剰に反応して、収縮して、咳などの発作が起こります。
治療は特殊なカテーテルに電流を流し、気管支の壁を65度で加熱します。熱によって筋肉の細胞が死滅することで筋肉が薄くなり発作を抑えられるといいます。
カテーテルを内視鏡に通して気管支の先端まで送っていきます。
1回目いくよ。
カテーテルに電流を流し、約10秒間、気管支に熱を加えます。
2回目いきます。
50~60ほど通電し、気管支全体を加熱していきます。
終わりでいいですか?
終わりでいいよ。
約1時間で治療が終了しました。
治療は3週間以上の間隔を空け、合計3回行います。
別の患者の肺を輪切りにしたCT画像。治療前に比べて気管支の壁が薄くり気道が確保されているのが分かります。
この治療は3日ほどの入院が必要になります。
まだ新しい治療のため5年間のデータしかありませんが、約8割の患者に症状の改善が見られたといいます。
治療費は保険が適応され1回あたり3割負担で約15万円。
国立国際医療研究センターの呼吸器内科、飯倉元保医長は、
薬物治療と違い「気管支サーモプラスティ」は少なくとも5年間は効果が出る。長期的に効果がある治療。
発作で生活に著しい支障をきたす喘息。新しい治療と検査の登場で救われる人が増えていくはずです。