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今回は半導体関連企業として注目の化学メーカー「JSR」です。半導体製造に不可欠なフォトレジストという素材を作る世界トップクラスのシェアを持つ企業です。
そのJSRの株価は2年でおよそ2倍になっています。実はこのJSR株を有名なアクティビスト、いわゆる物言う株主が買い進め、保有比率が9%を超えていることが分かりました。
そのJSRのトップ、エリック・ジョンソンCEOに半導体ビジネスの戦略、そして株主とどう向き合うのか話を聞きました。
JSR株式会社
[blogcard url="https://www.jsr.co.jp/"]
こんにちは、豊島さん。
よろしくお願いします。
「はじめまして、テレビ出演は初めてですか?」
はい、われわれにとって良い機会です。
アメリカ出身のジョンソンCEO。入社は2001年、2年前にCEOに就任しました。
この日はカルフォルニアのスタッフと会議。
ちょうど最初の結果を発表しましたね。
JSRは海外に41拠点を持ち、グループの従業員は9,300人以上。売上およそ4,500億円のグローバル企業です。
JSRの創業時の社名は「日本合成ゴム」。合成ゴムの国産化のために1957年、政府と民間の共同出資で設立されました。
半導体材料の市場に参入したのは1979年。
ジョンソンCEO自身、長く半導体ビジネスに関わってきました。
川橋信夫COOはジョンソンCEOについて、
禅をやっていて、日本を理解し、非常に深い知識と洞察力。
冷静に分析して最後は決定を下す。理想的なCEOではないかと思う。
祖業の合成ゴム事業を売却へ
そんなジョンソンCEOの下、5月に大きな決断が…
JSRにとって祖業である合成ゴムビジネスの売却です。厳しい収益環境が理由でした。
代わりに中核事業と位置づけたのがデジタルソリューション事業とライフサイエンス事業。しかし、この構造改革は痛みを伴うものでもありました。
「2021年3月期決算で551億円と過去最大の赤字となったが?」
全体状況から考える必要がある。合成ゴム事業の一括償却が含まれている。
重要なのは今年は全てのセクターが成長していること。
だから先行きは楽観的に見ている。
この2年、株価はほぼ右肩上がりできたJSR。
注目の理由は半導体製造に欠かせないある素材を作っているためです。それがフォトレジスト。
ウエハーに塗られる液体でJSRや東京応化工業など日本メーカー5社が成果シェアの9割を独占しています。
2019年には経済安全保障上の観点から韓国への輸出管理が厳格化された半導体関連素材3品目のうちの1つです。
フォトレジストを作る三重県の四日市工場。コロナで生産に影響が出ないよう部外者は敷地内に一歩足りても入れません。
田部井康宏記者、
フォトレジストは光に化学反応する製品なので光が当たらないよう厳重に梱包されて出荷されます。
瓶に詰められ内部が低音管理されたトラックで取引先の半導体メーカーに納入されるのです。
そもそもフォトレジストは半導体製造の何に使われているのか?
半導体は土台となるシリコンウエハーに光を当てて回路パターンを焼き付けていきます。
この時、シリコンウエハーに塗るのがフォトレジスト。フォトという名の通り光の性質によって反応が変わる特殊な感光材のことで、この化学変化を利用して微細な回路の溝を作っていきます。
いかに微細な回路を作るかはこのフォトレジストの性能が大きな鍵。原料や配合比率はまさに極秘なのです。
JSRはフォトレジストのうちArF(フッ化アルゴン)レジストと呼ばれる分野で世界トップシェアです。
われわれの素材は半導体業界の発展に大きな役割を果たしている。
次世代の露光技術は極端紫外線だ。
ArFレジストではトップシェアだが極端紫外線に積極的に移行していく。
"物言う株主"との関係
そんなJSRについて先月、こんなニュースが流れました。
物言う株主で知られるアメリカのバリューアクト・キャピタルがJSR株を9.25%まで買い増したことが大量保有報告書で明らかになりました。
物言う株主が株を買い増ししたというのです。
バリューアクト・キャピタルとはアメリカ・カルフォルニアに拠点を置く有力投資ファンド。
日本ではセブン&アイ・ホールディングスに対してコンビニ事業への経営資源の集中を要求しているほか、オリンパス、任天堂などへの投資実績で知られます。
バリューアクトとJSRはどのような関係なのか。
驚くことにJSRはバリューアクトの幹部、ロバート・ヘイル氏を社外取締役として招へい。しかもその申し出はジョンソンCEOからしたもので先週の株主総会で決議されました。
「なぜバリューアクトのロバート・ヘイル氏を社外取締役に?」
ヘイル氏はスマートで国際的に幅広い経験がある。
真の国際企業へと発展するために取締役に迎えるのは良いことだ。
「海外投資家への偏った見方が日本企業にあると感じるか?」
日本企業に海外投資家への偏見があるかは分からないが、企業と建設的な関係構築を目指す海外投資家たちが登場している。
私たちは非常に建設的な関係だと感じている。