Jr東日本は11月6日、駅ビルや鉄道などの経営資源を活用した新たなビジネスの展開に向けベンチャー企業18社と組んで実証実験を始めると発表しました。
その柱の一つが駅ナカ改革です。
商業施設の勝ち組といわれてきた駅ナカにいま何が起きているのでしょうか。
東日本旅客鉄道株式会社
[blogcard url="http://www.jreast.co.jp/"]
11月1日、夜のJR池袋駅。
何やら黒い物体が台車で運ばれてきました。
向かったのは駅ビルに入居するカフェ「R・ベッカーズ池袋東口店」。
それを店の入口に設置。
画面に触って操作できるようです。
一体何なのでしょうか?
JR東日本スタートアップの阿久津智紀さん、
レジで注文しなくてもタッチパネルで商品を注文すればあとは受け取るだけというサービスを想定して作った端末。
実はこれ、お客様が自分でメニューを選び、代金の支払いまでできるオーダー端末の試作品です。
決済にはICカードのSuicaを使えるようにする予定。
この端末を店の入口に置くことで最終的にはレジを無人化しようというのです。
駅ナカ改革
JR東日本は今、ITを活用した駅ナカ改革に取り組んでいます。
11月6日、JR東日本が開いた会見でも…
深澤祐二社長は、
スタートアッププログラム2018の採択企業について順次テストマーケティングを行っていく。
今年度中にベンチャー企業と組み、18のプロジェクトを実施すると発表しました。
その中で駅ナカの改革に関わるものは半分の9件に上ります。
JR東日本の業績を見ると駅ナカ事業を含む流通・サービス事業の営業利益率は7%ほど。
収益アップが課題となっています。
今、赤羽駅でやっている無人店舗など利益率を高める努力をしたい。
10月に都内の駅で始めた無人コンビニもAIの技術を持つベンチャーと協業。
JR東日本はベンチャーへの出資や協業のための小会社「JR東日本スタートアップ」も設立し、こうしたベンチャーとの連携も進めています。
JR東日本スタートアップ株式会社
[blogcard url="http://jrestartup.co.jp/"]
先程のカフェもJR東日本のグループ会社が運営。
そしてJR東日本スタートアップは近くこの無人オーダー端末の実証実験を始める予定です。
一番大きいのはスタッフの要因不足。業務の省力化のために端末を開発。
背景にあるのは働き手の不足。
アルバイトの平均時給もこの3年で60円ほど上昇するなど収益のマイナス要因になっています。
株式会社Showcase Gig(ショーケース・ギグ)
[blogcard url="https://www.showcase-gig.com/"]
今回、JR東日本スタートアップがタッグを組むのはショーケース・ギグです。
ショーケース・ギグの新田剛史社長、
もともとモバイルオーダーシステムを提供。
アプリを立ち上げると注文可能な店舗が並んでいる。
このベンチャーが手掛けるのは「O:der」というアプリ。
来店する前に商品を注文し、あらかじめ登録したクレジットカードで決済する仕組みです。
この技術、来年度中に3,000店舗で導入予定です。
JR東日本スタートアップとショーケース・ギグはこの技術をベースに端末を共同開発しています。
オープンイノベーションを進めていかないと世の中のビジネスから遅れていくので、ベンチャーと連携してビジネスの立ち上げを加速度的に早くしていくのが一番重要。
株式会社成城石井
[blogcard url="http://www.seijoishii.co.jp/"]
そして駅ナカ店舗を収益の柱とする高級スーパーの成城石井でも…
10月、千葉県の新浦安駅にある店の隣に飲食スペース「SEIJO ISHII STYLE」をオープンしました。
こうしたスーパーと飲食スペースが一体となった業態はグローサリーとレストランを組み合わせ「グローサラント」と呼ばれています。
目玉はローストビーフがたっぷり乗ったどんぶり。価格は1,000円ほどです。
おいしい。
こちらはイベリコ豚のソーセージを使ったホットドッグ。
ただ飲食業で収益を高めようというわけではありません。
隣りにあるスーパーを覗いてみると、ホットドッグに使われたソーセージが売られています。価格は5本で650円ほど。
飲食スペースのメニューに使っている食材にはこの黒いラベルが付いています。
パン売り場にはホットドッグ用のパンもありました。
成城石井の原昭彦社長は、
こうした素材を使って家庭でも再現できるようにしている。
黒いラベルはあちらこちらに。
実際に食べて、美味しいと思った食材をスーパーで買ってもらう狙いがあるのです。
この日、ホットドッグを食べたという男性は家で作ってみようと早速、食材を購入していました。
おいしかったから食材を買って帰る。味が確かめられるから良い。
成城石井が駅ナカでグローサラントを始めたのには理由があります。
成城石井の全164店舗のうちおよそ半分は駅ナカにあります。
しかし、駅ナカの店舗では飲み物や弁当など単品購入のお客様が多く、客単価が低いという課題があったのです。
ただ、グローサラントの展開にはある難点が…
こちらは去年オープンした成城石井のグローサラント1号店。
売り場面積が200坪あるため調理場も広くて本格的です。
それに対し、今回の駅ナカの店舗では調理場のスペースが半分以下しかないのです。
メニューの品質にはこだわりたいが小さいからと手を抜くことは出来ない。
そこでメニューには半加工品を活用。
店では切ったり、オーブンで焼いたりなど最後の仕上げだけにして手間を省きながら出来たて感を追求しました。
こうした工夫が購入に繋がり、グローサラント化してから1ヵ月、スーパーの客単価は3割増えました。
スーパーマーケットをやるだけではなく、店と飲食の相互送客がキーワードになる。
こだわりの食材を駅ナカで体験してもらい、家庭でリピートしてもらうようなスペースを積極的に作っていきたい。