2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた様々な動きをシリーズでお伝えする「ROAD TO TOKYO」。

2回目の今回注目するのは卓球の張本智和選手(14歳)。

先月の国際大会では史上最年少で優勝し、東京オリンピックでも活躍が期待されています。
その躍進の裏には国やオリンピック委員会が一体的に取り組むある一大プロジェクトがありました。

張本智和選手
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卓球界で快進撃を続ける張本智和選手。8月にチェコで行われた国際大会では史上最年少で優勝。
これにより世界ランクは自己最高の13位となりました。
卓球界では怪物と呼ばれています。
張本選手は仙台の実家を離れ、今は都内の中学校に通っています。素顔は普通の中学生です。
「勉強は大変?」
休んだら大変だが苦ではない。

「スポーツと勉強どちらが好き?」
スポーツの方が好き。

味の素ナショナルトレーニングセンター
放課後、張本選手が向かったのは味の素ナショナルトレーニングセンター。

東京・北区の住宅街にあるこの広大な敷地。陸上や球技、屋内競技に至るまでありとあらゆるスポーツのトレーニング設備が整っています。

各競技のトップ選手がトレーニングを行う日本スポーツ界の心臓部です。
そこに集められた少年少女。そして張本選手。
実は彼らはJOC、日本オリンピック委員会が運営するエリートアカデミーの生徒たち。

7つの競技団体から推薦された中学1年生から高校3年生の合わせて34人が在籍しています。

彼らは最大で6年間、施設内の寮で暮らし練習に励みます。
このアカデミー、何から何までオリンピック仕様です。
JOCエリートアカデミー
これから張本選手の練習。
このエリートアカデミーで卓球を指導するのは偉関晴光コーチ。卓球の元中国代表でオリンピックの金メダリストです。

練習で使われる卓球台はリオオリンピックで使われていたものと同じ。

またボールの見え方を左右する床の色は国際大会で使われる赤色にも変えられます。

さらに練習場所は日本代表選手たちのすぐ隣。

あらゆる面でオリンピックを意識した環境で毎日5時間、集中的に練習をします。
自分より強い選手とばかり練習ができ、1秒1秒が大切でためになる。

最も成長を実感したのがフットワークだといいます。

以前は卓球台に張り付いていたが、今は下がっても後ろでも動ける。広い範囲で動けている。

特にその成果が出たというのが先日のチェコの大会での決勝。打ちやすい左側に素早く回り込むことで相手のボールを力強く打ち返すことができています。
1年半前の入学以来、指導に当たるコーチは、
動く範囲が広がってプレイゾーンも広くなった。彼はこの1年間でだいぶ変わった。

天才を育てるためのシステム
エリートアカデミーが開設されたのは2008年。

国がナショナルトレーニングセンターを作ったのに合わせスポーツ英才教育を強化する場としてJOCが立ち上げました。

JOCエリートアカデミーの平野一成ディレクターは、
天才が見つかっても、その天才を育てられるかどうかが問題。天才を育てるためのシステムを構築することが重要。「選手に」ではなく「システムに」お金を投じることが必要。

アカデミーの運営費はJOCの予算に加えtoto(スポーツ振興くじ)の収益金約4,700万円、スポーツ庁の予算約500万円が充てられています。

そのエリートアカデミー、与えるのは練習の場だけではありません。
選手たちが机に向かっています。作文です。

テーマは「感動は与えるものか」。

張本選手は、
「感動を与える」とは競技に集中し、努力し、結果を出すこと。感動を与えようとするのではなく頑張る姿、表彰台でメダルをかける姿に人々は自然に感動するのではないかと思う。

アーチェリーの渡邉麻央選手は、
感動は与えるものではなく自然に作りだされ、心が温かくなると感動と呼ぶのではないか。

一方、別の授業ではアカデミー生たちに1枚の絵画を見せていました。

人がベッドに倒れている絵について、

講師、
屋根裏と考えた理由はどこにある?
屋根の形。

もっと具体的に。
壁が斜めに。

どこの壁が斜め?
窓の脇。

窓の脇の壁が斜めということは?
屋根。

屋根になっている。

実はこの授業、漠然とした物事を具体的に言葉にする訓練です。

ぼんやり見るのではなく、細かく読み、問題点を分析し改善につなげる。

それが競技技術の改善につながるといいます。
アーチェリーの髙見愛佳選手は、
打ち方を見つめられるようになった。今まではイメージだけだったのが、ここを直すとこうなるのかと。

食堂「サクラダイニング」
そんなアカデミー生の休息の場、食堂。

だがここにも彼らを訓練する仕掛けがあります。
サクラダイニング管理栄養士、井上真理子さんは、
エネルギーが高い順に並べ、選手の見やすさを工夫している。

アカデミー生が自分で栄養管理をするように仕向けているのです。

メニューは全て英語表記も付け海外遠征でも困らないようにしています。

試合では遠征先のホテルやレストランで食べる。「普段」にどれだけ近づけて食事できるかがポイント。それを日ごろから訓練してもらう。

常にオリンピックを意識させ、体も脳も鍛え抜く。それがエリートアカデミーです。
アーチェリーの園田稚選手は、
仲間がいて、きつい時は励まし合う。気持ちを高めあえるので楽しい。

ボートの青木洋樹選手は、
自分も強くなりたいと刺激になる。

3年後に迫る東京オリンピック。国を挙げての育成システムは何人のメダリストを生み出すのでしょうか?
