1兆1,200億円とあります。これはバブル崩壊後に財政難だった財務省が国土交通省から借りたお金です。

その財源となったのが車を持っている全ての人に支払いが義務付けられている自賠責保険の運用益でした。

実はまだおよそ半分の6,000億円が未返済のままです。年末の予算編成に向け、このお金を巡って財務省と国土交通省の攻防が激しくなっています。
背景には一体何があるのでしょうか?

自賠責保険
財務省
11月22日、永田町の議員会館に陳情に訪れた人たちがいました。

自賠制度を考える会です。

自動車メーカーや交通事故被害者の家族などで作る団体です。
訪ねたのは財務省の遠山清彦財務副大臣の事務所。

彼らが訴えたのは交通事故被害者救済のためにおよそ6,100億円を早期に返済してほしいということ。

自賠制度を考える会の福田弥夫座長、
このお金は自動車ユーザーの保険料から積み立てた被害者救済のための大事な資金。

あるべき姿に戻していただければ。

財務省は2003年から14年間、財政難のため国交省への返済をストップしていました。

2年前から返済を再開したもののその額はごく僅かです。

額の在り方が皆さんの大きな要望事項。少しでも改善できるよう頑張りたい。

国土交通省
続いて国交省へ。
財務省に貸しているお金を早く返してもらうように直接大臣に訴えました。
赤羽国土交通大臣、
自動車事故で被害を受けられた被害者や家族に心からお見舞い申し上げる。

桑山雄次さん
交通事故で次男が重度の障害を負った桑山雄次さん(63歳)。

交通事故被害者の家族の立場からこの問題を国に訴え続けてきました。

本来、交通事故被害者に対して使われるお金。喫緊の課題。

自賠責保険は被害者の治療費だけでなく、重度の障害が残った人たちへの救済や支援にも使われています。

しかし、その額が十分ではないと桑山さんたちは訴えているのです。
実はテレビ東京は19年前に桑山さんを取材していました。

次男の敦至さんが小学校2年生で交通事故に遭い重度の障害を負ってから5年が経った頃です。

敦至さんは脳に損傷を受け、ほとんどコミュニケーションが取れない状態でした。
重度障害になったら死んだほうがマシだと考えない人はいないんじゃないかと思う。

だけどやっぱり私はこの子に生きていてくれて本当によかったと思う。

11月21日、再び桑山さんの家を訪ねました。

当時、小学生だった敦至さんは32歳になっていました。週3回、デイサービスを利用しているものの在宅での介護を続けています。

夫婦で行う介護は25年目になっていました。
長い。年取っちゃったというか。

桑山さんがいま最も心配しているのが自分たちが死んだ後のことです。
息子はどうやって生きていけばいいのか…
子供の今後の生活を支えてもらうには社会資源がそろわないとしんどい。

そのための財源がほしい。

国交省は2年前から自賠責保険の運用益を使い事故による重度障害者たちが施設に入れるように支援する事業を始めています。

ただ、こうした被害者支援に使われる費用は年間143億円ほど。

その費用を増やすため財務省に早く6,121億円の返却して欲しいと桑山さんたちは訴えています。

麻生財務大臣は、
これは明らかに借りているこっちが返さないといけない。

その額は今から一般会計を詰めていく段階で決まります。

一方の国交省側は、

介護者亡き後に対応するための障がい者支援施設等への補助をしっかり取り組みたい。

被害者救済事業の重要性、拡充を訴え、財務省としっかり協議したい。
