日本の宇宙開発の歴史に新たな1ページが刻まれました。
私たちが暮らす地球からはるか遠くなるのが小惑星「りゅうぐう」です。

直径は900メートルほどしかなく、中央がふくらんだソロバンの玉のような形をしています。
地球からの距離はおよそ3億4,000万キロメートル。

地球から「もしもし」と呼びかける電波がりゅうぐうに届くまでおよそ20分かかるほど遠く離れています。
そのりゅうぐうを目指して2014年に地球を飛び立ったのが日本の探査機「はやぶさ2」です。

このはやぶさ2が2月22日、りゅうぐうへの着陸に成功しました。
全長6メートルのはやぶさ2を直径6メートルの範囲内に着陸させるという非常に難易度の高い挑戦でした。
しかし、実ははやぶさ2にとって本当の山場ともいえる世界初のミッションがこのあと待ち受けています。
WBSでは、それを支える町工場を取材しました。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
[blogcard url="http://www.jaxa.jp/"]

本日、人類の手が新しい小さな星に届きました。

2月22日、宇宙探査に新たな歴史が刻まれました。

午前7時48分、はやぶさ2が小惑星りゅうぐうに着陸。

2014年、はやぶさ2の旅路が始まりました。

目指すははるか3億4,000万キロメートル先にあるりゅうぐう。

46億年前の痕跡を残す、その内部からは太陽系の起源や進化の解明、さらには生命の起源にも迫ることができると期待しています。

打ち上げから4年、はやぶさ2はついにその姿を捉えました。

はやぶさ2が撮影した小惑星りゅうぐうの表面。

ゴツゴツとした岩石に覆われ高低差が激しいところも見られます。

はやぶさ2は1年をかけて地表を調査、確実に着陸できる地点を探し続けました。

そして2月22日…

JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム、吉川真氏は、
6時14分に結果が出て判断はGOということになった。

午前6時過ぎ、管制室から着陸の指示を受けたはやぶさ2は自動運転に切り替わり高度を下げていきます。

午前7時48分、はやぶさ2は小惑星りゅうぐうに着陸し、弾丸を発射。

離陸後に送られてきた写真には砂のような黒い粒が付着しているのが見えます。

JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム、津田雄一氏は、
強く示唆されているのは弾丸を正常に発射すれば、それなりの量のサンプルが機構の中に入っているだろう。

相模原市立博物館
[blogcard url="http://sagamiharacitymuseum.jp/"]
着陸の様子はすぐそばにある博物館でも…

いま、はやぶさ2がちゃんと弾丸を発射しまして、りゅうぐうから採取成功したということです。

観覧者は、
十数年前から追いかけてきた。子どもが無事に成長して立派になってくれた感じ。

うれしい。サンプルが持ち帰れるよう祈っている。

株式会社石川製作所
[blogcard url="http://www.isikawass.co.jp/"]
福島県鏡石町にある石川製作所グループ。

ここでもその瞬間を固唾を飲んで見守る人たちが…

ここではジェット機の部品から100分の1ミリ単位の精度を求められる医療機の部品まで金属の特殊加工を手掛けています。

石川製作所グループの吉田武さん、
うちの部品はこの部分、はやぶさ2の下にくっついている。

石川製作所が関わったのがはやぶさ2の衝突装置。

今後、世界初のミッションを担うものです。
衝突装置を切り離すとはやぶさ2本体は小惑星の裏側に退避。

すると衝突装置が小惑星の上空で爆発。
弾丸を秒速2キロのスピードで地表に打ち込みます。

爆発が収まったら地表にできた人工クレーターにはやぶさ2が着陸。
表面より深い部分の岩石を採取します。

2月22日にはやぶさ2が採集を試みた地表の岩石と違い、地下の岩石は放射線や紫外線の影響を受けておらず、風化もしていないため、太陽系が生まれた46億年前の状態が分かると期待されています。

石川製作所ではこのミッションの核となる衝突装置の開発・製造に携わりました。
円錐の容器に銅板で蓋をした構造。

容器に入れた火薬を爆発させると、銅板が丸い玉に変形しながら飛ぶ仕組みです。

条件は10キロ以下。
開発当初は容器を軽いアルミで作り銅板をネジで止める形を取っていました。

しかし、
真空試験で隙間があり、火薬の性能が落ちてしまうので完全密閉しなくてはいけないということで急きょ、設計変更にかかった。

溶接での密閉を検討しましたがアルミは銅と相性が悪いためステンレスに変更。

しかし、さらなる壁が…
ステンレスになると比重がアルミの3倍になるので重量制限で肉厚を落とさなきゃいけなくなった。

肉厚1ミリに変更になったけど1ミリの肉厚加工の経験は未知だった。

1年以上の試行錯誤の後、わずか1ミリという薄さを実現しました。

そして、打ち上げ1年前のテスト。

見事に的の中心に的中させることに成功したのです。

この装置を使った岩石の採取は6月までに行われる予定です。

壮大な計画の一端を担った。われわれの誇り。

採取したサンプルが2020年に戻ってくるまで目が離せない。

日本の技術を結集したはやぶさ2。
地球に何を持ち帰るのでしょうか?
