音楽教室でのレッスンのワンシーン。実はこうした楽曲をレッスン中に演奏する時に著作権の使用料を払う必要があるかが裁判で争われました。10月24日に下された最高裁の判決とはどういったものだったのでしょうか。
音楽教室の著作権使用料
音楽教室 vs JASRACの行方
都内4ヵ所で音楽教室を開き、およそ500人の生徒を抱えている小林洋子さん。小林さんを悩ませていたのが…
小林音楽教室
小林洋子さん

音楽教室のレッスンの中で著作権が生じるなんてと。
レッスンで使用する楽曲の著作権料の問題です。
2017年、JASRAC(日本音楽著作権協会)は音楽教室からも著作権料を徴収するという方針を発表。JASRACが使用料として示したのは受講料収入の2.5%。
小林音楽教室
小林洋子さん

レッスンの中でこれはオッケー、これはオッケーじゃないと悩んで決める。
制限がかかるのは…
のびのびと音楽を楽しんでもらいたいし、音楽を好きになってもらいたい。
そこで小林さんは音楽教室の事業者らが結成した音楽教育を守る会に入り、およそ240社とともに2017年、JASRACを提訴したのです。
一方で音楽家の中ではJASRACの方針に賛同する人も…
作曲家・アコーディオン奏者
長坂憲道さん

音楽作家の皆さんは楽曲が1人歩きを始めて、第三者に活用いただいて対価が発生する。
作る人が対価を得られなければ、作るという作業は継続するのが難しくなる。
JASRACでは長坂さんのような音楽家などに代わり著作権料を各所から徴収。その使用実績に基づいて著作権者に分配していて、2021年度の分配総額は1,159億円に上ります。
最高裁「生徒は対象外」
そして迎えた10月24日の最高裁の判決。最大の争点は楽曲を利用しているのは誰かでした。
JASRACが著作権料の支払いを求めているのは楽曲を営利目的で使用している音楽教室です。
一方、音楽教室側は楽曲を利用しているのは教師や生徒で教室に支払義務はないと主張しています。
一審の東京地裁はレッスンで使う楽曲は音楽教室が選んでいるなどとして利用者は音楽教室だと判断。徴収できるとしました。
しかし二審の知財高裁は判断を変更。教師の演奏については音楽教室が雇用し、演奏させているので使用料を徴収できるとしました。ただ、生徒については自主的に演奏しているだけなので生徒からの徴収は認めませんでした。
そして10月24日の最高裁は…
最高裁

本件上告を棄却する。レッスンにおける生徒の演奏に関し、音楽教室が利用主体であるということはできない。
生徒の演奏に関しては演奏技術の向上が目的で生徒は演奏を強制されるものではないと指摘。教室が利用主体ではなく、著作権料は徴収できないと判断しました。
判決で上告が棄却されたJASRACは…
JASRAC
伊澤一雅理事長

JASRACの主張が認められなかった点に関しては率直に残念。
一方、音楽教室側は…
小林音楽教室
小林洋子さん

生徒に使用料がかからなかったのは良かった。
創作者の人たちも音楽界の1人なので共存共栄で頑張っていきたい。
今回の判決について著作権法に詳しい専門家は…
著作権法に詳しい弁護士
市村直也さん

生徒の演奏部分と教師の演奏部分、お互いに影響し合って1つの授業をやっているわけだから最高裁が切り分けること自体がすごく不自然。