政府は9月11日、保有する日本郵便株の一部を追加で売却すると発表しました。
売却額は最大で1兆4,000億円に上る見通しで収益は東日本大震災の復興財源に充てられます。
この追加売却は当初の予定よりは遅れました。
日本郵政の誤算は2015年11月の上場以来の株価です。買収した海外小会社に関して巨額の減損を計上して2017年3月期に民営化後初めての最終赤字となったことなどで株価が低迷して9月11日の終値も1,321円と上場のときの売り出し価格1,400円を下回っている状況です。
市場は郵政の将来性を疑問視しているワケですが、中でも収益環境が厳しいのが郵便事業や宅配便のゆうパックを抱えるグループの中核会社である日本郵便です。
逆風の元での成長戦略について日本郵便の横山邦男社長がWBSの単独インタビューに応えました。
日本郵便株式会社
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日本郵便の新たな取り組みのひとつが茨城県北部の大子町で始まっています。
郵便局員が車を走らせること約15分。向かった先はカーナビに何も表示されないような人里離れた場所に立つ一軒家でした。
これは日本郵便が始めた「みまもり訪問サービス」。郵便局員が月1回、一人暮らしの高齢者宅を訪ね生活状況を聞き取ります。
「体調はいかが?」
別に変わりないです。
「夜はよく眠れていますか?」
眠れています。
聞き取った内容はタブレットからすぐに遠くに住む家族などにメールで送られます。
料金は個人契約の場合、月2,700円ですが大子町では料金を町が負担していて132人が利用しています。
サービスを利用する小滝ヤイさん(84歳)、
「来てくれるとありがたい?」
安心します。誰か来てくれれば。郵便局の人はちゃんと来る日に来るけど、子どもらは自分の都合のいいときだから。
日本郵便ではこのサービスを10月から本格的にスタートさせ全国に広めていきたいと考えています。
そこに高齢者だけでなく若い世代との接点を増やすという戦略が見えてきます。
横山邦男社長は、
商売というより現状を確認するのが主体。副次的な効果としてお子さま世代との付き合い。このサービスは我々だからこそできる、我々に相応しい社会的使命の全うだ。
ドローン・フリマアプリも活用
一方、宅配便業界ではインターネット通販の拡大で人手不足が深刻になっています。
相次いで値上げを発表したヤマト運輸と佐川急便に続き、日本郵便も2018年3月からゆうパックの料金を平均で12%程度値上げすると発表しました。
合理化、効率化といった企業努力は、まず第一に進めるということが大前提。商品の価値を認めていただいた上で適正な料金をいただくビジネスモデルを確立したい。
値上げの一方で効率化のための新たな技術開発も行われています。
そのひとつがベンチャー企業と組んで進める過疎地域でのドローンの活用です。
「いつ頃から運用されるのですか?」
来年度の早い時期にドローンを郵便局間のモノの輸送に使っていきたい。家庭に届けるということも将来的には可能になる。
また急成長しているメルカリなど、フリマアプリの利用者を取り込むための戦略も。
スマホに表示されたQRコードをタッチするだけで送り状を簡単に印刷できるプリンター「ゆうプリタッチ」を全国1,100の郵便局に設置。今年度中に5,000局に広げる予定です。
「一番大きな資産は全国に2万4,000以上ある郵便局だと思いますが、これを今後どのように活用?」
2万4,000の郵便局こそ我々のまさに力だと思っている。今後もその力を活用していきたい。
投資信託セミナー
全国に広がる郵便局は金融サービスの拠点としても活用されています。
先週の土曜日、東京・東村山の郵便局では運用会社から講師を招き投資信託セミナーが開かれていました。
相場に流されないためにはどのような資産運用を行えばいいか。
仕事をリタイヤして郊外で暮らす高齢者などにとっては身近な郵便局で資産運用などの相談ができることはメリットが大きいといいます。
参加者は、
郵便局の方が彼らも勉強しながら、我々消費者に教えていただいて、非常に勉強になっているし、自分たちの生活にも役立っている。
不動産開発事業
また成長のカギとして力を入れているのが不動産開発事業です。
札幌や大宮、博多など駅前の一等地にある郵便局を建て替え、新たな施設として価値を生み出しています。
2015年には名古屋駅直結の大型複合ビルを建設。
郵便局を併設したオフィスと商業施設になっています。
不動産開発事業の営業利益は260億円と全体の0.7%ほどですが成長の余地が大きい分野だといます。
横山社長は、
どんなことで不動産を活用できるか着任以来考えていて、まだ発表はしていないが保育所と高齢者向け施設を同じビルに作って高齢者と幼児がコミュニケーションをとるエリアをつくってみようと。
「独自で行う?」
我々にそういう保育所や高齢者対応のノウハウはないのでいろいろな会社と打ち合わせして手を組んでいこうと。
どこかを買収してやることがいいかどうか慎重に検討しなければならない。
横山社長は少子高齢化や過疎化に対策を打つことで日本郵便のブランドが高まると考えています。
見守り事業も不動産事業も地域の振興をはかる。今の時代に相応しいものはいっぱいある。時代の要請に応じた社会的使命を追求してこそブランド価値が高まる。