西九州新幹線が開業した長崎駅ですが、実は市町村別で見ると長崎市は転出超過が全国でワースト2位と人口減少が大きな課題となっています。「街を創る」「生まれ変わらせる」新たな取り組みを追う、シリーズ「街ノベーション」。初回の今回は新幹線の開業も追い風に、100年に一度の再開発で街に人を呼び戻す長崎市の秘策を追いました。
上場企業ゼロ 人口減少 長崎市
西九州新幹線の始発駅となった長崎。街には原爆の悲劇と平和への思いを伝える平和公園や2018年に世界遺産にも登録された大浦天主堂など観光資源に恵まれた街です。
しかし、その一方で課題となっているのが…
長崎市民

やっぱり若い人は少ない。
若い子どもとか孫はほとんど県外就職だから。
子どもの話になったときに「長崎にいる」と言うと「えっ!?」と。
長崎市民

高校まではいるけど大学はけっこう県外に行く。
行った先でそのまま就職したりして。
大企業がだんだんなくなって長崎に定住したくないという。
実は長崎県は全国の都道府県で唯一上場企業がゼロの件です。
若者の就職先も少なく県外に流出してしまうこともあり、長崎市の人口は年々減少。今年7月には40万人を下回りました。
この課題を解決しようと立ち上がった人がいます。髙田旭人さん。
髙田旭人さん

歴史でも文化でも人間性でもいいものがあるが、一方で人がどんどん減っていたり、仕事が減っていて、元気がなくなっている。
長崎を変える!ジャパネットの秘策
髙田さんは同じ長崎県の佐世保市に本社を構えるテレビ通販大手「ジャパネット」の2代目社長。
出身地でもある長崎を再生しようといま新たなプロジェクトを進めています。
髙田社長が案内してくれたのは長崎駅から徒歩で10分ほどの場所にある建設現場。広さおよそ7.5ヘクタール、元々は三菱重工の造船所があった場所です。
その真ん中に置かれていたのはサッカーボール。
ジャパネットHD
髙田旭人社長

まさにピッチのど真ん中。
センターサークルのここにボールを置いて、試合が始まる場所。
2万人収容のサッカースタジアムができる。
サッカーJ2のV・ファーレン長崎を運営するジャパネット。駅からもアクセスしやすいこのエリアにスタジアムを中心とした施設を建設し、賑わいを生み出す起爆剤にしようというのです。
ジャパネットHD
髙田旭人社長

スポーツにはすごく可能性を感じていて、長崎の地域を元気するにはスポーツが中心にあって、その周りにもいろいろなアイデアが詰まった場所ができれば地域が盛り上がるのでは。
しかし、サッカーの場合、ホームゲームの開催は年間30試合もありません。そのため大規模な事業費が必要となるスタジアムの多くは自治体が主体となって建設されてきました。
地域の活性化どころか民間企業として利益を上げることはできるのでしょうか。
ジャパネットHD
髙田旭人社長

6,000人が入るアリーナもつくる。
そこでバスケットボールの試合と音楽イベントをやることで年間150日ぐらいの稼働はできるので日々人が流れるような場所にしたい。
サッカーとはシーズンが重ならないバスケットボールの試合などで活用することで年間を通してイベントの開催が可能だといいます。
さらに…
ジャパネットHD
髙田旭人社長

商業施設の最上階にスパをつくるべく今温泉を掘っています。
地元の人たちが日常的に利用できる商業施設の建設する予定です。
そしてカギを握るのがオフィスビル。企業だけでなく長崎大学の大学院を誘致しました。
ジャパネットHD
髙田旭人社長

ここに大学がある。優秀人材がそろっているということは、そこをめがけて今度は全国規模の企業にオフィスに入ってもらおうと。
そうすることで今度、卒業生が働ける仕事が増える。
学校、オフィス、企業がここに集うことで若い人も残りたい場所にしたい。
総工費はおよそ800億円。2024年の開業に向けスタジアムを活用した異色の街づくりが進められています。
駅前にはJR九州が2023年の秋の開業に向け新しい駅ビルを建設中。マリオットホテルや商業施設などが入る複合施設が誕生します。
さらに長崎市も駅のすぐ隣にビジネスの展示会などが行える大規模ホールを建設するなど官民が一体となって街の再開発を進めています。
長崎市
田上富久市長

私たちと同じ目標の若い皆さんがどんどん長崎の町で活躍する。
そういう地方創生の形をひとつつくっていこうという目標を共有しながら役割分担をしながら進めている。
西九州新幹線をきっかけに100年に一度と言われる大規模な再開発が始まった長崎。人口減少という課題の解決につなげることはできるのでしょうか。
ジャパネットHD
髙田旭人社長

人口が増えているとか、観光客が増えているとか、給与水準が上がっているとか、感覚的に言うと単純に長崎を出たくないと思う人が増えて、長崎に行きたいと思う人が増える。そういう世界をつくりたい。