電力会社各社が9月1日から電気料金を値上げしています。今後の電気料金を大きく左右しそうなのが原発です。岸田総理は先週、既存の原発の再稼働に加え、今後次世代型原発の新設を検討している考えを示しました。次世代型原発は複数のタイプがあり、特に小型タイプが注目されていますが、いずれも新しい技術で再稼働する原発より安全ともいわれます。新設は本当に動き出すのか追跡取材しました。
「次世代型原発」内部取材 実力は?
茨城県の海沿いの町、大洗町。幹線道路沿いにフェンスに囲まれた大きな敷地があります。国立研究開発法日本原子力研究開発機構。今回、特別な許可を得て中垣キャスターが内部に入りました。
中垣正太郎キャスター
いま敷地内に入ってきました。両サイドが森のようになっています。奥に開発中の次世代原発があるということです。
到着したのは…
中垣正太郎キャスター
こちらはどういう場所?
日本原子力研究開発機構
高温ガス炉研究開発センター
篠﨑正幸副センター長
後ろにあるのがHTTRという原子炉施設。
高温ガス炉という新しいタイプの原子炉を研究・開発している。
今回、取材が特別に許可されたのは高温ガス炉と呼ばれるタイプの次世代型原子炉。最も期待を集めているSMR(小型原子炉)の1つだといいます。
本人確認などを経て、いよいよ建屋に入ります。
実は原子炉格納容器は地下30メートルの地中に設置されています。中垣キャスターは地下数十メートルまで降りてきました。
日本原子力研究開発機構
高温ガス炉研究開発センター
篠﨑正幸副センター長
ここからが原子炉の格納容器。
日本原子力研究開発機構
高温ガス炉研究開発センター
篠﨑正幸副センター長
1メートルぐらいの厚さがある。
コンクリートの向こう側に原子炉本体がある。
中垣キャスターがいるのは格納容器の中。現在は部品交換のため一時的に稼働を停止しています。
中垣正太郎キャスター
この原子炉の特徴は?
日本原子力研究開発機構
高温ガス炉研究開発センター
篠﨑正幸副センター長
この原子炉は冷却材にヘリウムガスを使っている。
高温ガス炉のガスとはヘリウムのことだといいます。これまでの原発は発電の際、内部で水を循環させていました。高温ガス炉では水の代わりにヘリウムを使用。950度まで熱せされたヘリウムで発電用のタービンを回す仕組みです。
なぜ水ではなくヘリウムなのでしょうか。
日本原子力研究開発機構
高温ガス炉研究開発センター
篠﨑正幸副センター長
ヘリウムガスは化学反応を起こさないガス。
水素爆発とか化学反応で爆発することもない。
水素と酸素に分解される水に比べると安定した物質のヘリウムはより安全なのだといいます。
「次世代型原発」で水素も製造
次世代型原発ならではの安全性。さらに高温ガス炉の最大の特徴となっているのが…
日本原子力研究開発機構
水素・熱利用研究開発部
久保真治部長
高温ガス炉の高温の熱で水素を作る研究開発をしている設備。
実は高温ガス炉では水から水素を取り出す研究も進んでいます。二酸化炭素を排出しないで作る、いわゆるグリーン水素だといいます。
「原発新設」電力会社の本音は?
実現に向けて着々と進む次世代型原発の研究。電力会社側は新説に向けて動き出しているのでしょうか。
訪ねたのは大手電力会社10社でつくる電気事業連合会。
中垣正太郎キャスター
発電事業者の立場で注視している点は?
電気事業連合会
佐々木秀明事務局長
新しい発電所を建設するときの投資予見性を向上させることが重要。
中垣正太郎キャスター
「投資予見性の向上」具体的には?
電気事業連合会
佐々木秀明事務局長
設備投資しなければいけないが市場経済の中で予見性を確保するのは難しい。
返ってきたのは予想に反した言葉でした。
実は電力の自由化によって市場で取引される売電価格は発電コストの安い再生可能エネルギーなどの影響で長期的には下がる傾向にあります。
電力会社としては次世代型原発を造るには収益を確保できるほどの売電収入が得られるといった予見性が重要だとしているのです。
電力会社の出身で原発に詳しい専門家がその本音を解説してくれました。
KPMGコンサルティング
巽直樹さん
再生可能エネルギーを大量に増やしたとき固定価格買取制度を導入したが、原子力発電でも次世代炉が軌道に乗るまで何らかの制度的な担保をすることを求める声がある。
中垣正太郎キャスター
原発新設はスムーズに進むか?
KPMGコンサルティング
巽直樹さん
既存の原子力の再稼働を事業者としてはやらなければいけない。
当面はそこで手いっぱいだと思う。