2年前に表舞台から姿を消していた中国のネット通販最大手「アリババグループ」、創業者のジャック・マー氏とみられる人物をテレビ東京が撮影しました。
12月7日、テレビ東京が関東のある場所で撮影したアリババグループ創業者、ジャック・マー氏とみられる人物。マー氏とみられる人物は関係者たちと行動し、ときに談笑するなどリラックスした様子をみせていました。
テレビ東京が関係者とみられる男性にマー氏への取材を依頼したところ、「今はその時期ではない」と答え、応じませんでした。
マー氏は2020年10月に中国政府を批判する発言をしたとされ、それ以降、活動を自粛し、雲隠れ状態となっていました。
このジャック・マー氏は数ヵ月にわたって日本に滞在しているとみられています。
マー氏は習近平政権のもとで進められたIT大手に対する締め付けの中で自身が創業したアリババが相次ぐ試練に直面しました。中国当局と民間企業の関係は今どのように変化しているのか追跡しました。
ジャック・マー氏か 関東で撮影
中垣正太郎キャスター
長らく公の場に姿を見せなくなったジャック・マー氏。
日本のある場所に滞在しているという情報をもとにこれから接触を試みたいと思います。

車でおよそ2時間、向かった先は人気観光地の箱根です。ジャック・マー氏はいるのでしょうか?
地元の人に聞いてみると…
地元の人

孫正義さんの家を買ったというのは聞いた。
中垣正太郎キャスター
いつ頃?

地元の人

最近かな。
口にしたのはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。
登記を調べると箱根にある邸宅のひとつが過去に孫氏が所有していた物件だと分かりました。
今は所有権が移転し、所有者の欄には租税回避地として知られる英領ヴァージン諸島の記載が…
孫氏は創業間もないアリババに巨額の2,000万ドルを投資。最近のソフトバンクグループの業績悪化に伴い、孫氏はアリババ株の売却を進めていますが、マー氏にとっては個人的なつながりが深い日本人のひとりで過去に箱根にも何度も訪れていたといいます。
その住所に行ってみると…
中垣正太郎キャスター
大きな屋根の邸宅、これはかなりの規模ですね。
こちらがジャック・マー氏が滞在しているとみられる邸宅ですが、生け垣で囲まれていて中の様子はあまり分かりません。
感電注意と書いています。電線が張り巡らされていて、セキュリティーが非常にしっかりしているという印象です。

近所の人は…
近所の人

富士山が見える場所で一流企業が持っている場所。
中垣正太郎キャスター
人の出入りは?

近所の人

最近は1回だけ。先月。
高級車と外国人がずらっと並んでいた。アジア系だった。
邸内の様子を知る人によると1階は和室が中心で、室内に「川」が流れるなど趣向を凝らしたつくりだったといいます。
過去には寿司店を訪れたり、別荘に地元の人を呼んだりして交流を深めたということです。
温泉街とあって家のそばからは湯けむりも…
周辺には複数のゴルフ場が広がります。
孫氏もよく来るというゴルフ場関係者は最近も姿を見かけたと話します。
ゴルフ場の関係者

マー氏は約1ヵ月前に4~5人の関係者と来た。孫氏は一緒ではなかった。
別荘周辺の不動産管理に関わっているとみられる男性に話を聞いてみると…
中垣正太郎キャスター
マー氏はいつ頃から箱根に?

別荘周辺の不動産管理に関わるとみられる男性

それは私は分からない。
中垣正太郎キャスター
マー氏にあったこともない?

別荘周辺の不動産管理に関わるとみられる男性

それもノーコメントにさせてください。
謎に包まれるマー氏の生活。
関係者によると箱根のほか、東京や北海道など日本に複数の拠点を持っているといいます。各地を転々としながら滞在しているとみられ、テレビ東京がマー氏とみられる男性を捉えた場所は箱根ではなく、関東のある場所でした。
中国IT企業受難の時代か
中国をはじめ、世界がその動向に関心を持つ中、マー氏はなぜ日本に身を寄せているのでしょうか?
今回の滞在中にマー氏と面会した人物はテレビ東京の取材に次のように答えました。
マー氏に面会した人物

アリババの本拠地がある杭州市で共産党委員会の幹部だった人物の「腐敗」事件に関わっていると考えられていて帰国しづらい状態になっている。
各地に別荘もあり、日本人や中国人の有人も多い。
百回以上訪れたことのある日本を選んだようだ。
腐敗とは主に政治汚職を指します。中国当局は去年、重大な規律違反があったとして浙江州の商都・杭州市トップの周江勇氏を摘発。この汚職事件にアリババ傘下の金融関連企業「アントグループ」が関与していたとの見方も広がりました。
摘発された周氏はマー氏とも親しいとされ、関係者は主にこの影響で帰国が難しくなっていると指摘します。
こうした政府当局からの締め付けは習近平政権のもとで急速に強まっています。
アリババの2年半ほどの株価。2020年10月に比べ、およそ3分の1です。
当時、マー氏は上海の会合で金融当局について「イノベーションは監督を恐れない」などと批判。発言は波紋を呼び、その後、金融当局から聴取を受けました。
過去最大の370億ドル規模の調達額と予想されていたアントグループの上場が延期となったほか、独占禁止法違反の疑いで調査を受けて、罰金を課されるなど逆風が続きます。
そんな中、姿を消したマー氏。
中国情勢に詳しい加藤嘉一氏はこの日本滞在はマー氏にとって重要な意味を持つと指摘します。
中垣正太郎キャスター
日本滞在の意味は?

中国情勢に詳しい
楽天証券経済研究所
加藤嘉一氏

充電して、中国の権力から避難をして、一方で今後に向けた探索、この3つの目的。
なぜ日本なのかというと、日本の消費者は非常にこだわりが強くて難しい。
一方で1億人以上のマーケットがある。
フィンテックなどマー氏がやってきた分野はまだ弱い、発展の余地があるのではないか。
一方、注目されるのが5年に1度の共産党大会を経て習政権が3期目に入った中、民間企業と国有企業の結びつきです。
民間のIT大手をめぐってはすでにアリババが国有通信大手のチャイナテレコムと戦略提携関係にありますが、新たにテンセントは11月に国有通信大手のチャイナユニコムと共同事業計画を発表、ジンドンの関連企業も同じくチャイナモバイルの傘下企業との戦略提携を発表しました。
習政権は民間企業への国有企業の影響力を高め、経済活動に対して国家の統制を強化する、いわゆる「国進民退」の動きを強めていて、今後も継続するとみられています。
中国情勢に詳しい
楽天証券経済研究所
加藤嘉一氏

習近平政権における国・政府との距離感はビジネスマンにとって極めて大事。
国有企業や国の資本が入っている銀行との連携を持つのは彼らにとって「保身」、自らを守る意味で極めて重要。
人口減少を背景に経済の原則が見えてきた中国。
日本に滞在するマー氏が今後、再起を図る可能性はあるのでしょうか?
マー氏と面会した人物は次のように語ります。
マー氏に面会した人物

彼に焦りはなく、淡々とした印象。
一連の問題が穏やかに解決されることを望んでいるようだ。
当面中国に戻ることはないが、いつかは戻らなければと考えていて、タイミングをみながら決めようとしている。