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[WBS]ロシアの侵攻で高騰…野菜危機救う!?新たな肥料は[佐久浅間農業協同組合]

ワールドビジネスサテライト(WBS)

原料や輸送費などの高騰を受けてざまざまな食品がいま値上りしていますが、野菜や果物を育てるのに必要不可欠な肥料もいま大幅な値上げを迫られています。こうした中、新たな原料を使った肥料の開発で農家や消費者を守ろうとする動きを取材しました。

肥料の価格高騰…あらゆる"値上げ"に農家は

山梨県の北西部、北杜市にあるこちらのビニールハウス。栽培されていたのは…

リコペル
米田茂之社長

トマトが1万本植えてある。
全部ミニトマト。

ここ北杜市は日照時間が長く、トマト栽培に適した場所だとされています。

年間100トンのトマトを生産していますが大きな課題となっているのが肥料の高騰です。

先週、JA全農は大幅な値上げを発表。6月~10月まで全国にある地方JA向けの肥料の販売価格を最大94%引き上げます。

その背景にあるのはロシアによるウクライナ侵攻です。

尿素や塩化カリウムなど肥料の原料の多くを輸入に頼っていてロシアやベラルーシが主要産地となっています。しかし、経済制裁などで供給が滞っているのです。

さらに中国が国内への供給を優先し、輸出規制を始めたこともあり需要がひっ迫、肥料価格が急騰しました。

米田さんが使用している肥料も2ヵ月前に比べると…

リコペル
米田茂之社長

リン酸アンモニアが2倍以上値上がりした。

さらに納入先からは今後、肥料不足が生じる可能性があるといわれています。

リコペル
米田茂之社長

高騰も怖いが手に入らないのが一番怖い
肥料が手に入らなかったらもう終わり。
明日にでも、もうストップと言われたら終わり。

肥料価格のほかにも暖房などに使う重油はこの1年で1.5倍に高騰。

コスト高が続けば価格転嫁を検討せざるを得ないといいますが…

リコペル
米田茂之社長

まずはどう対策を打つことができるのか。
価格転嫁をする前にどういったことができるかしっかり考えたいが、今後情勢次第では価格の部分も考えて、農業業界全体で考えなくてはいけない時期が来るのかもしれない。

農作物の価格転嫁難しく「作れば作るほど赤字」

日本農業法人協会がおよそ2,000の会員を対象に行なった調査では71%が価格転嫁できていないと答えています。

その理由として農業者の価格交渉力が弱い、消費者の理解が得られないという回答が多くを占めました。

農家の経営が厳しくなれば思わぬ影響も…

日本農業法人協会
紺野和成専務理事

コスト上昇分の価格転嫁はまだ消費者にお願いしていないのが現状。
価格転嫁できず作れば作るほど赤字を重ねる。
コストを抑えるためにも生産量を抑制せざるを得ない。

実際、調査では22%の農業法人が「生産量を抑制した」または「抑制する見込み」と回答しました。

日本農業法人協会
紺野和成専務理事

生産量が落ちるということは都会の消費者の方々に安定的に地方の農作物を一定の価格でお届けできなくなるという懸念も想定される。

国も対策の検討を始めました。肥料の価格高騰で苦しむ農家を支援する新たな補助金の創設です。

さらに今後力を入れていくとしたのが…

金子農水大臣

堆肥をもう少し活用することが将来の農業にとっても大変大事なこと。
これを契機にわれわれもそういうものも積極的に進めていきたい。

国内で飼育されている牛や豚のふんを利用した堆肥の活用です。

堆肥の活用に期待高まる!魅力は低価格 新商品も開発

その堆肥を使った新たな取り組みがここ長野県内で始まっています。

JA佐々浅間 生活資材課
荻原雅彦課長

こちらが望ちゃん

この「望ちゃん」という肥料に使われているのが堆肥です。

地元の農協のJA佐久浅間が1年前に開発を始め、今年4月に発売しました。指定混合肥料と呼ばれるカテゴリーの肥料で従来の化学肥料に地元から出た牛のふんなどの堆肥が混ぜられているのです。

加納康祥記者

動物のエサのような独特な匂いがします。

堆肥の地産地消を目指した指定混合肥料は全国のJAでは初めてだといいます。

価格は20kgで1,998円。同じ量の化学肥料と比べても3分の2以下の価格となっています。

開発のきっかけは…

JA佐々浅間 生活資材課
荻原雅彦課長

肥料取締法ではまけるのが化学肥料のみだったが、法改正で堆肥と化学肥料を混ぜた商品を開発できるようになった。

もともとは肥料散布の手間を省くことが目的でしたが、ここにきて化学肥料の価格が高騰。価格の安さから堆肥を混ぜた肥料に注目が集まりました。

しかし、望ちゃんにも化学肥料がおよそ6割含まれていることからすでに値上げを検討しています。

JA佐々浅間 生活資材課
荻原雅彦課長

おおよそ2,700円台くらいになるのでは。

それでも今後は堆肥の活用に一層期待をかけています。

JA佐々浅間 生活資材課
荻原雅彦課長

従来の肥料は在庫の確保に不安がある。堆肥を活用した商品は普及が進むと思う。

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