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[WBS]円安は"経営にプラス"のはず…なぜ?「理想は110円台」[伊藤忠商事株式会社]

ワールドビジネスサテライト(WBS)

物価を押し上げる要因のひとつが円安です。年の初めは1ドル110円台半ばでしたが現在はおよそ140円と1年足らずで25円ほど進む歴史的な水準となっています。この円安は輸出や海外比率の高い大企業にとって追い風になるといわれていますが、実際はどうなのでしょうか。

WBSでは日経平均株価を構成する企業225社にアンケートをしました。すると「経営にとってプラスだ」という答えは52%と半分程度。さらに理想的な円相場の水準を聞くとおよそ半数が110円台と回答しました。

円安が追い風となるはずの大企業で一体何が起きているのでしょうか。

上方修正なのに経費削減!?

10月4日…

伊藤忠商事
石井敬太社長

為替や資源価格の影響なども勘案した結果、今期の業績見通しを1000億円増の8,000億円に上方修正する。

石炭などエネルギーを海外から輸入する伊藤忠商事。資源高を円安が後押しし、純利益の見通しを1,000億円上方修正しました。

ただ、手放しでは喜べないようです。

伊藤忠商事
第8カンパニープレジデント
加藤修一執行役員

消費関連ビジネスに限って言うと、これは明らかに逆風。

繊維や機械、金属など多くの事業を抱える伊藤忠。円安や資源高を追い風にしていますが、それが負担となる事業も少なくありません。

伊藤忠商事
第8カンパニープレジデント
加藤修一執行役員

電気代の高騰が運営コストの上昇につながっている。
それに加えて油の価格が上昇しているのは運送費の上昇にもつながるが、ファミリーマートの主力商品「ファミチキ」を揚げる油も値段が上がっている。

小会社、ファミリーマートの配送センター「三郷定温センター」。各店舗で扱う弁当などの配送拠点です。

燃料費や光熱費の高騰が重しとなっています。

そうした中で取り組んでいるのが…

ファミリーマート
物流企画部
北原芳邦副部長

AI(人工知能)を活用した配送シミュレーターを自社開発した。
それによって配送時間の効率化、1台あたりの配送する店舗数が増えている。

配送効率の改善、年間の輸送費を10億円以上減らせる見込みです。

伊藤忠全体でも円安対策として全社的に経費削減を進めています。

伊藤忠商事
第8カンパニープレジデント
加藤修一執行役員

まずは経営努力で吸収しなければいけない。
ファミリーマートでは、例えば日々の店舗での節電といったような地道な努力。
そこから例えばAIやデジタルを使った業務の効率化・物流の効率化、そういったことを通じて日々、経営努力でコストの圧縮に努めて。

海外企業のM&Aにも異変

円安で経営の重要な戦略を見直した会社もあります。部品大手のミネベアミツミです。

主力はベアリングという自動車や航空機などの部品を滑らかに動かすのに必要なパーツです。

5年で売上高は8割近く増え、1兆円を超える規模に。

その成長の要となってきたのがM&A(買収・合併)です。

しかし、その戦略に異変が…

ミネベアミツミ
貝沼由久会長兼社長

今の円の状況で海外の会社を買うのは難しい。円にすると高い。

海外企業の買収の取りやめです。

ミネベアミツミがM&Aを決める上で製品や技術力と並び重視しているのが買収価格。営業利益の10倍以上の金額は出さないと決めています。

歴史的な円安水準の中、海外企業の価格を円に換算すると買収価格が跳ね上がります。

ミネベアミツミ
貝沼由久会長兼社長

高値づかみをしてしまうと減損という会計上の要求にぶつかる。これは失敗。

ミネベアミツミの経営にとって円安はプラスです。しかし、外国人労働者の流出など企業にとって課題は多いと指摘します。

ミネベアミツミ
貝沼由久会長兼社長

円安を生かそうということは、まず悪いことではない。
問題はいかせるところと生かせないところが出てきていること。
輸入しなければいけないところはやっぱり困る。
そのバランスをどう取るか。
非常に危機感を持っている。

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