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[WBS] 「痛くない注射針」のあの町工場も後継ぎがいないため廃業に!

2017年11月15日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

高齢化社会の波が企業にも迫ってきています。

国は2025年までに中小企業の経営者の内、6割以上にあたる245万人が70歳以上になるとみています。

こうした人たちは会社を誰に引き継ぐか、つまり事業の承継を考えなくてはいけませんが、約半分の経営者は後継者がいないという課題に直面しています。

こうした中小企業の中には黒字経営をしている所も多く、このまま放っておいて中小企業の廃業が相次ぐことになると650万人分の雇用、さらには22兆円分のGDPが失われるという深刻な問題です。

こうした事態を食い止める事はできるのでしょうか?

岡野工業株式会社

東京・墨田区。

ここにある岡野工業はある製品で世界的に有名な町工場です。

岡野雅行社長、

これが実物の売ってるもの。注射の針だよ。

岡野工業が製造しているのが通称「痛くない注射針」。

医療機器メーカーのテルモと共同で開発したこれまでにない極細の針で医療業界に革新をもたらしました。

今も世界に向け年間5億本を供給し経営は軌道に乗っている岡野工業ですが、実は廃業に迫られていました。

私はあと2年くらいで引退したい。だって84歳だよ、85、86歳までできる、この細かいの。跡取りはいないよ。最終的な仕事をやっているわけ、それで終わり。

2人の娘は嫁いで別の道に進んだため後継ぎがいないのです。

技術を残すため注射針の製造はテルモに移管することに決めました。

「周囲も後継者問題で悩んでいる?」

ありますね。どんどんなくなっちゃう。この周りだって。みんないなくなっちゃってかわいそうだよ。

税制の問題

後継者が見つからない問題は今後さらに拡大し、2025年までに127万の企業が後継者未定の状況に陥ると予想されています。

こうした問題を引き起こしてしまう要因のひとつとされるのが事業を引き継いだ際に多額の相続税などが発生してしまう税制です。

中小企業・小規模事業者政策調査会 経済産業部会合合同会議

11月14日に自民党で開かれた会合。

城内経済産業部会長は、

事業承継については喫緊の課題だ。抜本的に改革しないとならない。

自民党は中小企業が後継ぎを見つけやすくするため相続税などを変える検討を始めたのです。

今の制度では例えば親から時価総額3億円の株式を相続する場合、後継ぎには売ることができない株式にも関わらず相続税が9,180万円かかります。

こうした相続税の一部を猶予する制度はありますが、猶予を受けるには雇用を5年平均8割維持をするなどの条件があります。

また、あくまで事業を継続している間に限り一時的に猶予されるだけで事業を終了する場合は残りを納める必要があるのです。

こうした今の制度に対して会議に出席した日本商工会議所の青山伸悦理事は、

人手不足の時代。補充できるような会社ならいいが、ほとんどが補充できない。

採用ができないので猶予条件の雇用8割維持は非常に困難。

債務を抱えながら経営するのは非常に経営者にとって事業の先行きを考えると重苦しいし、非常にやりにくい。納税猶予ではなく、もう全面的に免除してほしい。

中小企業の「大廃業時代」!宮沢政調会長に相続税を問う!?

2018年度の税制改正の大きなテーマになっている事業承継。

自民党の宮沢洋一政調会長は中小企業からの要望を踏まえた抜本的な改革に乗り出す考えです。

中小企業に雇用を維持してもらうのが大きな条件だったが、大胆に緩和できないかが論点になってくる。納税猶予をして途中で会社をやめる時に元の相続税・贈与税を支払うのが今の方式だがこれをどう緩和していくか。

ドイツの相続税

実は日本だけでなく海外でも事業承継を目的とした様々な税の優遇制度があります。

ドイツの場合、事業を引き継ぎ賃金の総額で年平均8割を5年間維持できれば85%の相続税が免除されます。

そうした海外の仕組みを日本でも採用できないかという声が上がっています。

「産業界からはドイツ並みにという声も上がっていますが?」

ドイツの実情を産業界は分かっているのか。免除対象が会社の業務に必要な財産に限定することになる。

ドイツのように相続税免除に対象となる資産を会社の業務に必要な資産に限定してしまうと有給資産が多ければ優遇が少なくなってしまうのです。

自民党は12月中ごろに方針を示した税制改正大網をまとめる考えです。

果たして中小企業経営者の若返りを実現することができるのでしょうか?

10年間で平均年齢60代半ばの経営者が40代になるように考えないと日本経済は大変。

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