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[WBS]世界のインフレはどこへ

ワールドビジネスサテライト(WBS)

世界的にインフレが高止まりする中、12月15日は主要な中央銀行による金融政策の発表が集中する1日となっています。各国が利上げに動く要因となっているインフレの現状、そして日本の物価がどうなるのかを伝えていきます。

まずはアメリカです。中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は0.5%の利上げを決めました。前回まで4回連続で通常の3倍、0.75%ずつ引き上げてきましたが、ここにきて減速させた背景には一体何があるのでしょうか。

アメリカガソリン価格3割下落
それでも物価高へ警戒続く

アメリカ FRB
パウエル議長

10月と11月のインフレ率は物価上昇ペーストの鈍化を示し、歓迎できる。

FRBはこれまで4回連続で政策金利を0.75%ずつ引き上げてきましたが、今回は利上げ幅を0.5%に初めて縮小。物価上昇の勢いが弱まりつつあるため過度に景気を冷やさないよう配慮した形です。

アメリカの消費者物価指数はここにきて1年前と比べた伸び率で5ヵ月連続で鈍化しています。

インフレ率を押し下げている理由の一つが…

ニューヨーク支局
森礎人記者

このガソリンスタンドではレギュラーガソリンが1ガロン3ドル89セント、消費が冷え込むと言われている4ドルを下回っています。

ガソリン価格は先週全米平均でおよそ3ドルと過去最高をつけた6月から3割以上下落し、1年前の水準を下回っています。

ドライバー

1ガロン3ドル前後で買えるところもあり、良くなった。

ドライバー

ガソリン代は下がっているが、もっと下がる必要がある。

一方でパウエル議長は会見でこんな発言も…

アメリカ FRB
パウエル議長

インフレ率が持続的に低下していることを革新するには、さらに多くの証拠が必要だ。

インフレへの警戒を崩しませんでした。

FRBは今回、2023年末の政策金利の見通しを5.1%と3ヵ月前の4.6%から引き上げました。今後もインフレに対応するため利上げを継続する方針です。

アメリカ 物価の高止まり続く
家計負担"5.4万円増"

佐々木明子キャスター

ガソリン価格は下がりましたが、それでもパウエル議長がインフレへの警戒を崩さないのはなぜなのでしょうか?

ニューヨーク支局
滝沢孝祐記者

アメリカの11月の消費者物価指数は7.1%の上昇と依然として高い伸びが続いています。
ガソリン価格は低下しましたが、食品は未だに高くこちらで生活をしていると物価の上昇が収まったという感覚はまったくありません。
スーパーマーケットを取材しましたが、お店の方に話を聞くと一部では値上がりが落ち着きつつあるものの、卵などの値段は値上がりが続いているといいます。店頭にあった卵は価格の幅はありますが、安いものでも1パック800円程度でした。

食品などを販売する
ゼイバーズ
スコット・ゴールドシャインさん

卵の価格は非常に高い。9ヵ月前と比べて3倍近くに値上がりした。
一方で肉の価格はこのところ落ち着いているようだ。

去年は物流網の混乱で商品不足が続き、商品が店で並んでいるという意味では状況は改善しています。

ただ、ある試算では物価高騰の影響でアメリカの標準的な家庭が1円前と同じモノなどを購入するためには1月におよそ400ドル、5万4,000円の追加の支出が必要になるとしています。

こうした状況でFRBは今回、あくまで利上げの幅を減速しただけで当面は利上げを続ける姿勢を示しています。

今回の会合で合わせて示された来年のGDP成長率は大幅に下方修正していて、景気の後退を引き起こすことなく経済を軟着陸させること、このハードルが一段と高まっているといえます。

イギリス ストライキ頻発

看護師までも…

続いてはイギリスです。

中央銀行のイングランド銀行は12月15日に政策金利を0.5%引き上げると発表しました。利上げ幅は前回11月の0.75%から縮小しましたが9会合連続の利上げです。

背景にある物価高によってイギリスではある現象も起きています。

ロンドン支局
中村航記者

イギリスの11月の足元の消費者物価指数は1年前に比べて10.7%の上昇と高止まりしています。
その中で深刻な現場にやって来ました。賃上げを求めるストライキが頻発しています。
こちらはロンドン中心部の病院です。看護師の方たちがストライキをしています。
賃金は通常、労使交渉で決まりましが、医療従事者はイギリスでは政府が賃金を決めるということもありますので政府に向けてメッセージを発信しています。
現場で取材した方によると待遇改善は患者のためになる長期的なものだと話していました。
看護師が加盟する労働組合による全国ストライキは100年以上の歴史で初めてということです。
医療現場への影響も懸念されるされるのですが、それだけ生活がままならないという事態ということを示しています。
このストライキはあらゆる分野にも広がっています。

賃上げ求め鉄道に郵便局も

ストライキ参加者

労働者は団結する!決して負けない!

ストライキを行っているのは鉄道業界の労働者。鉄道の労働組合は特に利用者が増える年末年始にかけ断続的にストライキを予定しています。

さらに待遇改善を求めて郵便局の職員も。いまはクリスマスで1年間で最も忙しい時期ですが、労働組合のトップを直撃すると…

CWU(通信労働組合)
デーブ・ウォード書記長

労働者がこの時期を選んだわけではない。争議はもう4~5ヵ月続いていて、クリスマスまで引きずっている。
会社はこの混乱を避けることもできたはずだ。

郵便職員の平均賃金は日本円にしておよそ410万円。国全体の平均賃金より低い水準です。

ある郵便局では労働者の1人がオフィス内にフードバンクを設置して同僚を支援するという取り組みも始めていました。

郵便配達員
トム・バンクロフトさん

家賃を払えずホームレスになりそうな人もいる。
暖房か食事かの選択を迫られる人もいる。
世界で6番目に豊かな国でこんな決断に迫られるのはおかしい。

ストライキカレンダーまで登場

ロンドン支局
中村航記者

イギリスのメディアによく登場するストライキカレンダーというものを持ってきました。
鉄道・バス・学校の先生・自動車教習所の先生など毎日いずれかの業種でストライキをしているという状況になっています。

佐々木明子キャスター

かなり混乱している状況ですが、今後どうやって収束させるのか?

ロンドン支局
中村航記者

この混乱へのスナク首相の基本的な姿勢はインフレの抑制を優先させること。そのためさらなるインフレにつながる急激な賃上げには慎重な姿勢です。
ただ政権としてはストライキの長期かも見据えストライキを予定する救急隊員の代わりに軍が出動する計画を立てるなど混乱を避ける準備は進めています。
医療従事者など例外を除いては各業界が労使で折り合いをつけるまで、待つしかないという歯がゆい時間が続きます。厳しい冬となりそうです。

日本 大学で食料配布
"値上げラッシュ"は来年も?

そして日本でも食料品や日用品などの値上げが続いています。消費者物価も1年前と比べ10月には3.6%の上昇と40年8ヵ月ぶりの高い伸びとなりました。

専門家は来年も値上げラッシュは続くと警告しています。

12月15日、都内の大学「専修大学」では…

宮崎文子記者

レトルト食品やパンなどを皆さん、1つずつ選んで手に取っていきます。

パンや菓子、カップ麺といった食料のほか、マスクなどの衛生用品まで。物価高を受けて大学側が学生に無償で支給。1,200人分が用意されました。

学生

ありがたい。

学生

アルバイトの給料は増えないのに使うお金が増えるからきつい。

日本でも続く物価の高騰。帝国データバンクによると今年値上げが行われた食品は累計で2万品目以上。値上げ率は平均14%に及ぶといいます。

そして来年は…

帝国データバンク
情報統括部
上西伴浩部長

来年1月から3月で4,000品目値上げすることが判明している。
この傾向からすると値上げの波はまだまだ止まりそうにない。

来年も今年と同じく値上げラッシュが続くと指摘します。その要因として挙げたのが…

帝国データバンク
情報統括部
上西伴浩部長

円安はもちろんある。
大きいのは電気代、モノをつくるのにも電気を使う。
この辺はまだ価格転嫁しきれていない。

番組スタッフ

値上げが落ち着くのは?

帝国データバンク
情報統括部
上西伴浩部長

落ち着くというのは今の時点では考えにくい。

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