
日本を代表する経営者の訃報です。京セラや現在のKDDIを創業した稲盛和夫さんが8月24日に老衰のため京都市内の自宅で亡くなりました。90歳でした。稲盛さんは経営破綻した日本航空の会長に就任し、再上場に力を尽くすなど手腕を発揮しました。独自の経営哲学は日本にとどまらず世界に影響を与えました。経営の神様として評価された稲盛さんの足跡を振り返ります。
"経営の神様"稲盛氏死去!
一代で京セラを世界企業に
稲盛和夫氏(2014年)

全然神様ではありません。俗人も俗人ですから。
経営の神様と呼ばれた京セラ創業者の稲盛和夫氏。8月24日午前、老衰のため京都市内の自宅で亡くなりました。90歳でした。
京セラ本社前では…
京セラ 社員

訃報を聞いて正直びっくりしました。入社3年目で直接お会いしたことなかったが、社内アナウンスを聞いてショックを受けた。
京セラ 社員

新入社員に威圧的なことをする方ではない。
責任者は目を合わせることができない方だった。
「アメーバ経営」の内容は理解できるし、あれがあって会社が育っている。
多くの経営者やビジネスマンに多大な影響を与えた稲盛氏。
1959年、自ら開発したファインセラミックスの技術を核にして27歳で京都セラミック、現在の京セラを設立しました。
その10年後にはICチップを保護するためのセラミック部品「マルチレイヤーパッケージ」を開発。世界中の半導体メーカーから注文が寄せられ、会社は急成長します。
セラミック包丁から携帯電話、さらにコピー機などさまざまな分野で製品が使われるようになり、稲盛氏は一代で京セラを売上高1兆円超、従業員およそ8万3,000人の世界的メーカーに育て上げました。
さらに…
稲盛和夫氏(1987年)

皆さんのご支援で本当に素晴らしい開業式を迎えられました。
長距離電話料金が高いことに不満を抱いていた稲盛氏はNTTの独占に風穴を開けるべく1984年に第二電電を設立。その後、KDDなどの合併を経て現在のKDDIを誕生させます。
また政治では「日本をよくするためには政権交代が可能な国にすることが必要」との思いで民主党を支援。
2010年には2兆3,000億円という戦後最大の負債を抱えて経営破綻した日本航空の会長に就任。無報酬で再建に取り組みました。
稲盛和夫氏(2012年)

非常に官僚的で階層別に社内が分かれていて、企画をする人、計画を立てる人、実行する人、それが分離していてバラバラに動いていたという感じがします。
グループで大規模な人員削減や不採算路線からの撤退を断行。業績を回復させ、2012年には再上場にこぎつけました。
当時、国土交通大臣として会長就任を要請した前原氏は…
国民民主党
前原元国土交通大臣

本当に感謝をしてもしきれない。日本を救っていただいた。
リーマンショックの後だし、日本の国内線の6割が日本航空であれだけ飛ばなくなったら日本経済はかなり厳しい状況になっていた。
NTTに対してKDDIを作った稲盛さんの競争こそが国民、消費者のためになるんだとの思いが再建へ突き動かしたと思う。
卓越した経営手腕
卓越した経営手腕から経営の神様と称された稲盛氏。京セラの経営を通じて編み出した独自の経営理論で組織を活性化させてきました。
代表されるのがアメーバ経営。会社の組織を小さなグループに分け、採算や目標を徹底的に管理するもの。
もう一つ欠かせないのが自身の経験則に基づいた京セラフィロソフィ。人生の手引となる言葉が並びます。「利他の心を判断基準にする」「開拓者であれ」など社員一人一人が自主的に経営に参加することを目指してきました。
稲盛和夫氏

利他的というのは公に正しいことを貫きながら、同時に自分を除くという美しい優しい思いやりの心「利他の心」。
それによって現れる人生の結果は変わってくると強く感じている。
そのために人間として「正しい想い」をしなければならない。
その経営哲学を盛り込んだ著書も数多く出版。稲盛氏を長年取材してきた作家の北康利さんは稲盛氏の人柄について…
稲盛氏を長年取材
作家
北康利さん

稲盛さんのすごさはフィロソフィから入る。
「自分と同じ気持ちで働こう」と相手が興奮してくる。稲盛さんは熱い人。
稲盛氏は人生や経営の哲学を若手経営者らに教える盛和塾を開講。
稲盛和夫氏(2006年)

怠け心があって、気楽にいきたい人は経営者になってはいかん。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長など名だたる経営者も影響を受けてきました。
中国にも多くの信奉者
経営の神様、稲盛氏の影響は世界にも。2007年、ドイツの首相だったメルケル氏と面会した時の写真。日本を代表する経営者として世界各国の政治家とも関係を築きました。
なかでも多くの信奉者が生まれたのが中国です。

稲盛先生ようこそいらっしゃいました!
2012年、不動産仲介会社の社員が集まるイベント。会場の垂れ幕には「唐の時代 鑑真が東に渡り日本に漢文を伝えた。今日 稲盛が西に飛んで中国に哲学を授ける」との文字が。奈良時代の高僧、鑑真と並ぶ人物として紹介されていました。
そのオフィスには壁のいたるところに稲盛氏の言葉が掲げられていました。
こうした稲盛氏の経営哲学は今なお支持を集めています。北京市内の書店には…
北京支局
佐藤真人記者

経営学や経済のコーナーには稲盛さんの著書がたくさん並べられています。
稲盛氏の多くの著作は中国語に翻訳されて経営にとどまらず、その人生哲学に学ぼうという人たちが大勢いるのです。
アリババやファーウェイといった現在の中国を代表する企業の創業者も稲盛イズムに影響を受けたとされています。
稲盛氏の哲学はなぜ中国人の心を捉えているのか。出版を手掛けた編集者は…
人民郵電出版社
張渝涓氏

稲盛氏はなんでも積極的に他人に負けない努力をする。
そして最も重要なことが常に他人のために行動することです。
だから中国人が認めたのだと思います。
稲盛氏が提唱していたのは何でも積極的に取り組み。
稲盛氏の死去については中国の国営メディアは日本の報道を引用する形で速報。中国のSNSでは稲盛氏の死去を伝えるニュースが一時ランキングのトップになりました。
中国人

尊敬に値する日本人だ。
中国人

経営の神、民間企業のモデルだ。
中国人

中国ではこんな経営者は珍しい。
国を超えて評価された稲盛氏の経営哲学について作家の北さんは…
稲盛氏を長年取材
作家
北康利さん

渦の中心になる、ベクトルを合わせる、どの国でも分かる。
言葉に力がある。メッセージ力がある。
自分が経営する会社が儲かるだけでなく、尊敬を自分が受けるということは日本が尊敬されること。
稲盛和夫氏がやったことは京セラだけじゃない、日本に対する尊敬。特にアジア諸国はそうだった。
稲盛和夫氏への敬意は勤勉な日本人に対する敬意。