シリーズ「経済WEEK」チェンジ!ジャパン、~始まる反転攻勢~
今回は百貨店の反転攻勢に注目します。
月曜日 | パナソニック 生き残りかけ巨額買収 |
火曜日 | 三井住友FG 新発想・人材活用で打開 |
水曜日 | 三越伊勢丹 稼ぎ先転換の新モデル |
木曜日 | 整ったか ベンチャー支援スキーム |
金曜日 | ソニー 反転攻勢をキーマンに聞く |
コロナの影響でかつてない苦戦を強いられた百貨店業界ですが反転攻勢に向け業界トップの三越伊勢丹が大規模な変革を図ろうとしています。その戦略を取材しました。
三越伊勢丹の反転攻勢
百貨店再生!"サンドイッチ作戦"とは
愛媛県松山市。ここにいま大胆なチェンジを図ろうとしている百貨店があります。
今年30年ぶりとなる大規模なリニューアルに踏み切った松山三越です。
この日、7階と8階にオープンしたのは地元の温泉旅館が運営するラグジュアリーホテル「HOTEL LEPO CHAHAL」。
客室は全11部屋、宿泊料は1泊1人当たり3万5,000円からです。
全ての部屋にフィンランド式のサウナを完備。
百貨店の中にテナントとしてホテルが入るのは三越伊勢丹グループ初めての試みです。
そしてホテルの1つ下のフロアにも珍しいテナント「エイジングケア E3」が…
地元のベンチャー企業が運営するエイジングケアをテーマにした大型複合施設です。
ご覧のように岩盤浴も利用できます。
松山三越の浅田徹社長。
上の階は来なければいけない必然性のあるものを誘致しようと。
ホテルだったり健康。
上と下で集客装置をたいてデパートをサンドイッチする。
これまで9つのフロアを使ってきた従来の百貨店の売り場は上と下のテナントに挟み込まれる形で2階から4階の3つのフロアに集約されました。
リニューアル前は化粧品売り場が占めていた1階は四国最大級のフードコートに生まれ変わりました。
この賑わいで上階の百貨店売り場にお客様を呼び込む戦略です。
実は松山三越、長年に渡り苦しい経営が続いています。2021年3月期まで11期連続の赤字。
今回のビジネスモデルのチェンジは赤字脱出の反転攻勢となるのでしょうか?
今回、徹底してお客様の支持のある黒地のフロア、収益のあるところはしっかり残し、赤字のところは違うやり方でやっていく。
収益をとりながらテナントからの家賃収入でも。
事業構造が大きく変わったので収支構造も同じように変わった。
三越伊勢丹HD 細谷社長に聞く
百貨店再生!反転攻勢の糸口は
国内20店舗の百貨店を展開する三越伊勢丹ホールディングス。
2021年3月期の営業損益は209億円の赤字に。新型コロナがまさに大打撃となりました。
しかし、11月に発表した中期経営計画では2024年度に営業利益350億円、さらに10年後には500億円規模を目指すという強気な目標を掲げました。
反転攻勢の糸口をどこに見出そうとしているのか細谷敏幸社長に聞きました。
2008年に当社が統合して以来、最高益が2013年度の346億円だった。
これを超えるぞというイメージ。
ポイントは"百貨店の再生"だと思っている。
「どういうふうに百貨店は変わっていくのか?」
「どういった既存の事業から再生に向かっていくのか?」
僕のやろうとしているところは徹底的に百貨店を"科学する"。
エリアでどういうふうなもうけが出ているのか、どんなお客様からどんな利益が出ているのか。
これを徹底的に"科学する"というのがまず第一歩目。
その次は"マス"から"個"へのマーケティングの転換。
この2つに中期経営計画の新しい戦略を組み合わせて再生させる。
百貨店再生!マスから”個”への転換
百貨店再生に向けて"マス"から"個"へのチェンジ。
その象徴となるのが伊勢丹新宿店の本館7階。
奥まった場所に隠れたこちらの施設「ザ・ラウンジ」にあります。入室するには厳しい条件が…
年間購入金額が300万円以上の人が利用できる専用ラウンジです。
特別に入れてもらいます。
広々としていますね、ラグジュアリーで温かみのある空間となっています。
買い物の合間にくつろぐことができるスペースですが、基本的に年間の購入額が300万円を超える人しか自由に利用できません。つまり三越伊勢丹のお得意様ならではの恩恵なのです。
水の音が癒やされますね。
普段の利用客の数を聞いてみると…
ラウンジコンシェルジュの原島ももさん。
平日は300人、土日は400人ほどが利用している。
外に並んでいただくこともある。
富裕層の消費マインドとマネーは衰えず、百貨店に頻繁に足を運んでいたのです。
三越伊勢丹グループが発行する「エムアイカード」でマネーの流れを追ってみると年間100万円以上使う顧客の売り上げはコロナ禍でも2割近く増加していることが分かりました。
「100万円以上を使う富裕層の顧客の伸びをどのように分析している?」
市場で富裕層が伸びている。
外商の付き合い方。
新しいラウンジを作ったり、マーチャンダイジングが進化していることでお客様がお客様を紹介してくれるケースが最近増えている。
百貨店の富裕層ビジネスを代表する外商。
知られざるその世界を覗いてみます。そこには一体どんなチェンジが?
知られざる「外商」のおもてなし!
伊勢丹新宿店。実はここにその存在さえ明かされていない部屋があります。
案内されるのは特別なお得意様、外商の顧客だけ。
この日やって来たのは中林美春さんです。
伊勢丹新宿店の外商担当、吉村朋代さん。
美春さま、きょうも素敵なファッションで。
キャメルトーンで秋冬らしいカラーリング。
いつも上から下まで伊勢丹でそろえている。
ミックスが上手で本当にトータルコーディネートが。
基本フェンディ、バッグはエルメス、帽子もエルメス。
現在、三越伊勢丹が抱える外商顧客はおよそ30万人。その年間売り上げは1,200億円に上ります。
普段は顧客の自宅に出向く外商セールスですが、ときにはこうして顧客を招待しているのです。
年末年始のホテルライフ、またゆっくりして。
またいつものキャビアをご用意させていただこうかなと。
去年も家に届けてくださったので。
懐かしいですね、もう1年ですね。
鶏も届けましたね。
まるまる一羽届けてくれた。
中林さんと外商担当の吉村さん、一緒にパリに出掛けたことも。長年培った信頼関係が強みになっているようです。
高い買い物をするとき、どこで買いたいか、誰から書いたいかが大きいと思う。
伊勢丹の外商チームは皆さん人柄もよく、仕事が早い。
この方にお願いしたいと思う。
ブランドとの調整もやってくれる。
この人から買いたいと思って、皆さん買われるのではと思う。
百貨店再生!外商ビジネス強化の秘策は
三越伊勢丹が得意としてきた外商ビジネス。さらに強化するための試みも始まっています。
外商セールスの山本玲伊子さん、打ち込んでいるスマホの画面を見せてもらうと「K様おもてなしチャット」と名付けられたグループ名。
予算200万~300万円くらいのイブニングドレスと書き込むと、すぐに返信がありました。
「ドレスのレングスはご希望ありそうでしょうか?」
チャットの相手はバイヤー担当の高橋政樹さん。実は今年度からこれまでバラバラだった外商とバイヤーの連携も強化。
顧客からのリクエストに対し、グループチャットを通じて複数のバイヤーたちがすぐさま商品を提案する仕組みを導入したのです。
私たちがお客様を理解していることが強みだとすると、商品のことを理解しているのはバイヤーの強み。
その強みを掛け合わせてより良い商品をお客様にご提案できている。
一方、愛媛県松山市の松山三越。
こちらのお得意様サロンでは、中を覗いてみると…
こちらはジョルジオアルマーニのニットジャケットでございます。
商品をセールスするのは日本橋三越本店の販売員です。
これは松山三越と都心の店舗をリモートでつなぐ試み。地元では扱っていないブランドの商品を紹介して、ニーズの掘り起こしを狙います。
コロナ禍でも逆に旺盛な消費意欲を見せた富裕層。この市場を狙って百貨店が大きく変貌しようとしています。
百貨店再生!狙いは"高感度上質"消費
年収で1,000万円以上のお客様は日本で7%くらい。
10年後に14%になる。
お客様の買い方は複雑化していて非常にこだわる消費を自分の中でもより高いもの、より質のいいものというところとリーズナブルにいく消費と分かれてくると思う。
消費全体の中で"高感度上質"な消費を狙っていくという考え方なので。
やはり"憧れと共感"を作って一人一人のお客様が感度の高い上質な消費をしたいというときに僕らが対応できる状態を作りたいと思っている。