幼稚園などに通う園児が通園バスの車内に置き去りにされる事件が繰り返し起きていることを受け、企業からは最新の技術を使って同じような事件を防ごうという動きが広がっています。子どもたちの命をどうやって守るのか、その実力を取材しました。
バス置き去り事故防げ
AIが子どもを検知
通園バスの中に取り残されてしまった一人の園児。
すると車内に取り付けてあるカメラがその様子を捉え、AI(人工知能)の解析技術で子どもがいるのを検知。園の職員に警告メールが自動的に送信されます。
これは10月12日に神奈川県の幼稚園「厚木田園幼稚園」で行われた通園バスの置き去り事故を防ぐ安全装置の実証実験の様子です。
インテリジェンス デザイン
末廣大和取締役

本当はここに人がいたらダメという時間帯に人がいたらというのをAKが検知してアラートをあげる。
装置を開発したのはAIによる画像解析を手がけるインテリジェンス デザインと車の出張整備が専門のセイビーです。
装着がは簡単で機材の取り付けのために整備工場などにバスを預けなくても利用できるのが大きなメリットだといいます。
幼稚園の保護者からは…
保護者

安全装置が義務化されたらちょっとは安心できる。
一方でこんな意見も…
保護者

目で確かめるのはやめないでほしい。
現段階ではカメラの死角などに園児がいた場合は検知できない可能性もあり、今後半年ほどかけて商品の実用化のために実験を行っていきたいとしています。
バス置き去り事故防げ
安全装置義務化へ
一方でカメラの死角という問題を克服するために注目される技術も。
中垣正太郎キャスター
これは何をしている?

京セラ 先進技術研究所
黒田淳さん

電磁波を出すミリ波センサというもので人間の呼吸や心拍を測定している。
ミリ波と呼ばれる電磁波を使ったセンサーです。
ミリ波は細かな振動を検知できる波長で心拍数や呼吸から人の存在を見つけることができるといいます。
ミリ波のセンサーを実際に体験してみると…
中垣正太郎キャスター
センサーから50cmほど離れた場所にいますが、3mほど後ろに下がってみます。
色が変わっているのはどういう状況?

京セラ 先進技術研究所
黒田淳さん

連続的に後ろに下がったので、その状況が表れていたが、いまセンサから3mの位置にいることが表示されている。
こんなことも…
中垣正太郎キャスター
今度はさらに後ろ、6mほど離れた場所でカーテンのように遮るものがあった場合、センサーは反応するのか?

京セラ 先進技術研究所
黒田淳さん

現在、センサから6m先に反応が出ている。段階的に距離をあけていったので、一時的にすべての距離が出ていたが、6m先に人がいることが特定されている。
ミリ波ではカメラなどとは違い、カーテンや毛布などで隠れている状況でも検知が可能です。
ただ、鉄などの遮蔽物で遮られた場合は検知が難しいといいます。
もともとは高齢者施設などでの利用を想定していましたが、園児のバス内での置き去りなどにも活用が期待されているのです。
2024年にも商品化を目指しているといいます。
京セラ 先進技術研究所
黒田淳さん

園児を見逃さず置き去りにされた場合、検知することになるとミリ波・電磁波の技術は社会に貢献できるところは強いと考えているので、技術的にビジネス的には追い風になってくるのかなと思う。
こうした中、政府は10月12日に再発防止に向けた緊急対策を決定しました。
全国の幼稚園や保育所などのバス、およそ4万4,000台に対し、来年4月から安全装置の設置を義務化します。
また安全装置の設置費用については上限を20万円としたうえで最大9割を補助する方針です。