新米のシーズンを迎えたお米。ワインのように円安によってさまざまな食料の価格が上がっていますが、実はいま日本のお米が消費拡大のチャンスを迎えています。いまコメに何が起きているのか取材しました。
コメの輸出がチャンス!
パリの三ツ星レストランも注目
茨城県坂東市。コメを栽培するソメノグリーンファームでは新米の収穫が行われていました。
百笑市場
染野実社長

輸出するコメの収穫作業。
今非常に日本食が見直されていて、多くのオファーをもらっている。
染野さんは周辺農家とともに作る農産物の輸出会社「百笑市場」の社長。
コメの国内消費が落ちていた7年前に目を向けたのは…
百笑市場
染野実社長

日本国内の市場が小さくなるので、このままではコメがどこに販売していいかという不安感から目を向けるのは海外だろう。
現在、香港やシンガポールのほか、アメリカやオーストラリアなどにも輸出していて、初年度の輸出量は60トンでしたが今年度は25倍の1,500トンを見込んでいます。
中垣正太郎キャスター
需要が高まった理由は?

百笑市場
染野実社長

1つは価格感というか値ごろ感が出てきた。
今までは価格差があって、おいしいけど手が出せない価格だった。
われわれはチャンスだと思って頑張っている。
オーストラリア・メルボルンにある日本食レストラン「マグロバー」。
以前はカルフォルニア産のコメを使っていましたが2ヵ月前、百笑市場のコメへの転換を決めました。
なぜ転換したのか、茨城の田んぼからメルボルンにつないで聞いてみると…
中垣正太郎キャスター
日本のコメはどうか?

マグロバー担当者

とてもいい。
日本米の味が好きでアメリカ米よりずっとおいしい。
切り替えた理由は味の違いだけではありません。
中垣正太郎キャスター
最近円安になっているが商売に影響はあるか?

マグロバー担当者

円安はオーストラリアの人にとって日本のコメを買いやすくなっている。
できればこのまま円安でいてくれればいいと思っている。
ずっとこんな円安が続くと思えないが、もしこのまま続けばオーストラリアのメルボルンでも日本米を使い続けることができる。
世界で広がる日本食のマーケット。日本のコメの輸出量は毎年増加していて去年、2万トンを超えました。
さらにフランスでも…
百笑市場はいまパリで開催されている世界最大級の食品の展示会に出展しています。ヨーロッパへの販路拡大を狙い茨城のコメを売り込みます。
輸出の担当者は…
百笑市場
長谷川有朋取締役

非常に多くの人に盛況、反響をもらっていて、きょうで4日目だが150社以上の人と名刺を交換させてもらった。
ブースには多くの人だかりが。
さらにパリの三ツ星レストランにも直接売り込みました。
中垣正太郎キャスター
昨今の円安の影響は?

百笑市場
長谷川有朋取締役

数字で見えてきているわけではないが、確実にお客様からの各国からの引き合いは増えているし、今までのことを考えれば2割ぐらい安くわれわれのコメを購入できる。
それも1つの引き合いが多くなっている理由。
農業生産のリスクヘッジの1つとして海外に市場を持っておく、海外に販売先をもっていくことは恒久的な生産につながると信じている。
コメの消費量がアップ!?
新米予約が去年の約2倍に
一方、日本のコメの一人当たりの消費量はパンや麺類といった食の多様化により1962年以降右肩下がり。半分以下まで落ち込んでいます。
しかし、今年はその国内消費に変化が…
神奈川県海老名市にあるオイシックス・ラ・大地の配送センター。
オイシックス・ラ・大地
松村佳太さん

こちらが今年とれた新米です。
昨年に比べて1.9倍まで受注が伸びていて、日当たりおよそ1,000件配送している。
新米の予約が去年の2倍近くに伸びているというのです。
取り扱っているコメは新潟県産のミルキークイーンや山形県の雪若丸など6種類。
オイシックス・ラ・大地
野﨑真衣さん

コメの消費が低下している中でこの数字は異例です。
小麦やパン、野菜、肉、加工品の値上げの影響を実感しているという声がある。
主食をコメにスイッチして食費を抑えようとする動きが顕著。
コメの売れ行きが伸びているのはスーパーでも。
アキダイ
秋葉弘道社長

うちの店でいえばコメの売れ行きは1割以上は絶対伸びている。
お客さんは…
お客さん

パスタが好きなので食べたいが、コメに切り替えた。
番組スタッフ
コメの価格が上がっていない意識は?

お客さん

値段は据え置きで助かる。
実際、米穀機構の調査でもコメの消費量は5ヵ月連続で前年を上回っているのです。
高まるコメ人気、国内最大のコメ卸、神明の藤尾益雄社長もこう話します。
神明
藤尾益雄社長

コメがどんどんとれる時期。こういう時期は普通余る。
今年はそれがない。不思議なぐらいない。
60年以上にわたり減り続けてきたコメ消費。食料高騰と円安を逆手に日本のコメはさらに見直されていくのでしょうか。
神明
藤尾益雄社長

日本のコメは世界一おいしい。これは外国人も認めている。
日本の農作物にとって輸出はひとつの希望の光。