ビジネス関連 ワールドビジネスサテライト

[WBS]若者を呼ぶ高級温泉旅館!星野リゾートの仕掛けとは[株式会社星野リゾート]

2022年12月3日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

日本人の国内の旅行者数の推移。新型コロナの影響で一旦は大きく落ち込みましたが、今年4月以降は急速に回復が進んでいます。こうした中、特に若者をターゲットにしたプランで旅行業界に変革を起こそうとしている企業の取り組みを取材ました。

若者を呼ぶ高級温泉旅館
星野リゾートの仕掛けとは

栃木県日光市、観光名所の日光東照宮から車で40分ほどの場所に川治という小さな温泉街があります。

普段は高齢の観光客が多いエリアですが、ある異変が起きていました…

ここに若者の姿が…東京から来たという20代のカップルです。

東京から来た20代

旅行。温泉入りに来た。
そこの「界」星野リゾート。

2人が宿泊したという旅館が「界 川治」。2014年から星野リゾートが運営している温泉旅館です。

宿泊料は朝夕の食事付きで1泊1人2万5,000円から。

川治エリアでは高級旅館のうちの一つです。

そこにまた若い女性の姿が…静岡から来た24歳、社会人の2人です。

お客さん

めっちゃきれい。

豪華さに驚く2人。

さらに目の前に広がるのは紅葉の景色。

この贅沢な部屋に1泊するという2人。実はこの温泉旅館には20代の若者が集まるある秘密が…

お客さん

20代限定プランがあることをインターネットで知った。

18歳から29歳までを限定にした「界タビ20s」というプラン。これを利用すると通常の料金よりも割安な1万9,000円で泊まることができるのです。

お客さん

星野リゾートは若いと泊まれない高級なイメージがあるので、お得に泊まれるのがすごく魅力的。

この割安プラン、星野リゾートが展開する全国18の温泉旅館「界」で利用が可能です。

川治の予約ページを見てみると予約可能な期間は全て満室。

界 川治
片山航総支配人

20代のお客様の割合がだんだん増えてきている印象。
ご当地の良さや地域の良さを体感しに来るお客様も多い。

「星のや」や「OMO」などのブランドで国内外62の宿泊施設などを手掛ける星野リゾート。

いまなぜ、若者たちの取り込みを狙うのか。その戦略作りのキーパーソンとは…

若者に人気 割引宿泊プラン
27歳のプロジェクトリーダー

東京・銀座にある星野リゾートのオフィス。

20代の旅行に関する調査結果を発表する会議が開かれていました。

集まったのはマーケティング担当者たちや代表の星野佳路さんも参加しています。

星野リゾート
星野佳路代表

温泉旅館泊まったことない人は入れていないのか?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

入れている。
20代に絞っているのではなく、ある程度旅行経験がある人だったら温泉旅館に止まったことがある人もいるし、ない人もいる。

星野さんと議論を交わす女性、梅ケ谷夏歩さん(27歳)。入社5年目ながら温泉旅館に若者を呼び込む「界タビ20s」のプロジェクトリーダーを務めています。

いま旅行業界に求められているビジネスモデルの転換とは、最前線で奮闘する彼女に聞きます。

"温泉旅館"を楽しむ若者が急増!?

佐々木明子キャスター

梅ケ谷さんは27歳ということですから若者代表でいらっしゃいますね。
プロジェクトリーダーとして熱い議論を交わされていましたが、旅行業界から見て若者のマーケティングは難しいですか?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

若者の旅行のニーズや価値観は常に変化・多様化していて、20代はこうと一括りできないところに難しさを感じています。
以前、20代向けのWEBブランドで調査を行った際に、他の世代だと日常と感じるようなドライブやバーベキューも若者にとっては「ちょっとした旅」だったり、「非日常」であることが分かり、大きな発見となりました。

佐々木明子キャスター

私たち世代と少し感覚が違いますよね。
そうした中、特に日光市、星野リゾートが手掛ける温泉旅館「界」で若者の宿泊者が増えているということですが、この傾向は他の地域でも見られる?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

栃木県だけではなく、全国に展開する界では「界タビ20s」を通して多くの若い方々にご利用いただいている。
実は界はメインでお越しいただいているのは30~40代ですが、20代など若者にも温泉旅館滞在の良さを知ってもらいたいという思いから2013年より20代向けのプロジェクトを開始しました。
今年で10年目を迎えていて、多くの方々にご利用いただいています。

佐々木明子キャスター

利用者数が右肩上がりで増えていますね。
やっぱり価格はありますよね、18~29歳は1万9,000円ということで魅力的になっていますが、価格以外で何か工夫されていることはありますか?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

手の届きやすい価格はもちろんですが、20代のニーズに合わせて試行錯誤を重ねていて、例えばサイトのリニューアルを行ったことも大きな理由の一つだと思います。
もともとは20代の方に寄り添いたいという思いから等身大や手の届きやすいというところをイメージしていた。
20代が自分の納得するもの、価値を感じるものもを体験したい、購入したい傾向があることから、温泉旅館本来の良さを感じていただけるように上質感のあるサイトにリニューアルしました。

佐々木明子キャスター

リニューアルすることで違いますか?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

リニューアル後は多い日だと1日に8万アクセスほどアクセスをいただいている。

佐々木明子キャスター

私たち世代は温泉宿に慣れていますが、若者は温泉旅館に何を求めている?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

他の世代の方々と同様に非日常や癒やしは求めていると思う。
ただ、20代はデジタルネイティブと呼ばれる世代なので、オンラインでのコミュニケーションが日常化している中でわざわざ遠くまで行って、土地や季節を文化を感じることにより価値を感じていただけるのではないかと思う。

佐々木明子キャスター

具体的にそれを感じてもらうための何か工夫は?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

例えば石川県にある「界 加賀」という宿ではご当地部屋という伝統文化を体験いただけるような部屋を用意して、加賀友禅などはじめとする文化にお部屋の中で触れていただくことができます。

佐々木明子キャスター

さらにユニークなアプローチで若者を取り込もうとする施設もあるようです。

宿泊者をムササビが襲う!?
ハプニングだらけのホテル

長野県軽井沢町、山道を進んでいくと一軒のホテルが見えてきました。

星野リゾートが運営する「BEB5軽井沢」です。

この日、埼玉からやって来たカップル、25歳の石川直輝さんと24歳の橋本果林さんです。

石川直輝さん

普通に泊まって、観光に行くだけだとホテルでは寝るだけになると思うが、こういう面白いプランがあったら、ぜひ予約したいと思った。

面白いプランとは一体、チェックインを行うと、ホテルのスタッフからまさかの言葉が…

ホテルのスタッフ

部屋のカードキーをムササビが持っていってしまい、私たちと一緒にムササビを見つけて。

なんと渡されたのは双眼鏡。これでムササビを探してルームキーを取り戻してほしいというのです。

石川直輝さん

全然見つからへん。

橋本果林さん

どこや、分からへん。

実はこれ、1日数部屋限定で用意する、その名も「ハプニングステイ」というプラン。滞在中にさまざまなハプニングが宿泊客を襲います。

石川直輝さん

いた。

橋本果林さん

ホンマや。

階段の上に置かれていたムササビのぬいぐるみを発見。ルームキーを手に入れることができました。

ようやく客室に向かうと、しかしここからさらにハプニングが…

ホテルの浴槽に大量の魚
狙いは"忘れられない旅"!?

星野リゾートが手掛けるハプニングステイ。

客室のドアを開けると…飛びかかってきたのはムササビのぬいぐるみ。

さらにタンスの中から大量の落ち葉が出てきたり、浴槽の中にはリアルな魚のおもちゃ。

こうしたホテル側の仕掛けに宿泊客は…

石川直輝さん

前の旅行は忘れてしまうが、今回は多分忘れないです。

忘れられない旅、実はこれこそが星野の狙い。

通常の宿泊より割高なプランとなっていますが、連日予約が入る人気ぶりだといいます。

星野リゾート
BEB5 軽井沢
馬場涼太総支配人

ハプニングがあった旅は記憶に残る。
楽しかった思い出に残ることが分かったので、このプランを作りました。

その星野リゾートの次の一手は卒業旅行。プランを見てみると11泊12日。およそ3,000キロの温泉旅行。

"卒業旅行"が業界の起爆剤に!?

佐々木明子キャスター

星野リゾートが手掛ける卒業旅行、11泊12日。思い切ったプランですね?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

全国、北から南まで車で日本各地の温泉を巡っていただける11泊12日の卒業旅行を思い切ってご用意しました。
11泊12日で驚かれる人もいると思いますが、卒業旅行を考えるにあたって行った調査で「最後の思い出作りをしたい」「今しかできないことをしたい」という言葉が出たので、私たちも「今しかできない」というのをテーマに卒業旅行を提案しています。

佐々木明子キャスター

なぜここまでして若者に力を入れるのか?
10年後、20年語を見据えているのでしょうか?

星野リゾート
梅ケ谷夏歩さん

持続可能な旅行事業のために20代のマーケットは非常に大事だと思っている。
私自身も20代ではあるが、20代のうちに旅行の楽しさを知っていただいて、30代、40代になったときにも旅行に行ってもらいたいと思っています。

-ビジネス関連, ワールドビジネスサテライト
-,