「スクラップ・アンド・ビルド」の時代からリフォームの時代へ。
これまでの常識を覆す新たしい技術が注目されています。
そのキーワードは「透ける」化です。
株式会社エムビーエス
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山口県宇部市に拠点を置く株式会社エムビーエス。
重機の駐車場である実験が行われていました。
5mの高さからコンクリート片を落とす実験です。
一般的な塗装のされたコンクリート片は粉々に飛び散ります。
特殊加工の「スケルトン」塗装のされたコンクリート片は落としても無傷でした。
ハンマーで叩いても簡単には壊れない特殊塗装。
特殊塗装の秘密
この特殊塗装を開発した株式会社エムビーエス。
加工したい素材にイギリスのメーカーの特注品の特殊な樹脂を下塗りします。
ガラス繊維を編んだシートを乗せます。このシートが樹脂と一体化され素材の強度を上げます。
ただし、この状態ではガラス繊維を編みこんだシートにより素材の状態を見ることは出来ません。
このシートの上からさらに樹脂を塗ると、素材の状態が確認できるようになります。
ガラス繊維シートに樹脂が染み込むことで光が屈折しなくなるため透明になるそうです。
透明になるメリット
山本貴士社長によると
微細にヒビも施工後にわかる。メンテナンスのしやすさに特化した。
従来の工法ではコンクリートは補修後に綺麗に塗装をし直して補修跡を隠すのが業界の常識でした。
透明に仕上げて補修した跡がそのまま見えて「お金を下さい」と言っても誰が払うかとまで言われた。
しかし、この技術が道路や橋などのインフラ整備で注目されています。
笹子トンネル崩落事故
2012年12月に起こった笹子トンネル崩落事故。
天井の劣化を点検で察知できなかったのが原因の一つと言われています。
京都府が管理する陸橋
実際にスケルトン工法をした京都府が管理する陸橋。
以前までは従来の工法で補修が行われていました。
従来の工法では補修後にキレイに塗装をされるので補修箇所を確認する事ができません。
スケルトン工法ですと樹脂とガラス繊維で強化され、補修した跡がそのまま確認できます。
同じ箇所で劣化が進むと一目で確認することが出来ます。
ピンポイントで剥がして下からまた部分補修ができる。
西日本高速道路株式会社
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スケルトン工法をいち早く採用した西日本高速道路株式会社。
西日本高速道路株式会社では約3,400kmの高速道路を管理しています。
その管理・維持に腐心するなか、新たな技術を探し求めていました。
大阪と京都を結ぶ28.3kmの第二京阪道路。
下を走る一般道の危険対策として道路を支える梁の部分に建設当初からスケルトン工法を採用しました。
大城壮司課長代理は言います。
点検が簡単にできるというのが非常に大事。コンクリートの呼吸を妨げない。通気性があるのでより長持ちできる。
スケルトン工法の新たな可能性
スケルトン工法では道路や橋などの社会インフラ以外にも新たな可能性が広がっています。
京都府道路建設課の春田健作副主査の質問です。
全体がレンガのものを施工したことはありますか?四角い石をはめ込んだものは?
レンガ造りや石造りのものがまだ残っているので。
京都ならではの歴史ある建造物が多く残っていると聞いた山本貴士社長は調査に出向きました。
だいぶ水が回っている。従来工法だと補修のしようがない。
調査をした堀川第一橋は1873年に竣工した石造りの橋です。
土木学会「選奨土木遺産」になっています。
このような歴史的建造物にもスケルトン工法の応用が可能だといいます。
歴史的建造物に限らず、世界遺産に登録された軍艦島の保存にも、われわれの技術が採用されればと思っています。
軍艦島
日本最古のコンクリート建造物のある長崎県長崎市の軍艦島。
修復技術がないため保存が難しいとされていましたが、スケルトン工法で劣化が防げると山本貴士社長は名乗りを挙げています。
スケルトン工法では石や木材など材質は問わないそうです。
景観を損なわずに施工が可能です。
日本全国にある文化財にも応用が広がる可能性があります。
列島リフォーム
株式会社エムビーエスの本社のある山口県宇部市の歩道橋に書かれている「列島リフォーム」の文字。
自らの目標を商標登録し掲げています。
日本を丸ごとリフォームしてしまいたい。土木建造物もビルや住宅も含めて、すべてをリフォームできる会社になりたい。
「スクラップ・アンド・ビルド」からの転換。
列島リフォームがこれからの日本の指標になるかもしれません。