独立行政法人国立病院機構七尾病院
[blogcard url="http://www.nanao-hosp.jp/"]
石川県にある七尾病院。
昼時にやって来たのは大漁旗のワゴン。
病室でいきなり寿司を握り始めました。
全部地元の魚でけさ揚がった。
次々に頬張る患者さん。
久しぶりの握り寿司に笑顔になります。
「どのネタがおいしかった?」
全部美味しいですね。
七尾病院では季節限定で病院食として「にぎりずし」を振る舞います。
発案したのは副調理師長の江口晴人さん。
実は江口晴人さん、和倉温泉の老舗旅館で修行をした経験の持ち主。
制約の多い病院食でにぎりずしを提供するため、砂糖の代わりに甘酒を加えたオリジナルの酢で酢飯を作りました。
七尾病院は365日、全て異なる献立を用意しています。
ジェラートのようなスイーツなど、ひと月で約10種類の新しいレシピを考案。
数々の病院食コンテストで賞を獲得しました。
七尾病院の栄養管理室、浅井慎悟室長は、
病院食イコールおいしくないとういうのが世間一般的な常識だった。入院患者は人によっては、いつ命が尽きるかわからない状況。なんとか工夫して患者さんが食べられる食事を考えて提供する。
株式会社ホクノー
[blogcard url="http://hokuno.co.jp/"]
この病院食に目をつけたのが札幌市の中堅スーパー、株式会社ホクノー。
株式会社ホクノーのヘルスケア事業部、米村哲部長は病院食を目玉商品にしたいと考えていました。
高齢化のスピードがこの地域は予想以上に急速。売り場のことを考えて試行錯誤したが、最終的に行き着いたのが病院食。
株式会社ホクノーが拠点を置く地域は40年以上前に建てられた団地が多く、住民の高齢化率が40%を超え、人口減少が進んでいます。
さらにイオンなどの大手スーパー進出の影響で売上はピーク時から4割以上落ち込みました。
厳しいのはコメの販売量。4人暮らしの家庭が、いまは2名以下。年齢が上がると食べる量も減ってくる。
独立行政法人国立病院機構北海道医療センター
[blogcard url="https://www.hosp.go.jp/~hokkaidomc/"]
病院食を商品化するため米村哲部長が向かったのは北海道医療センター。
特別な許可を受け、厨房で研究が開始されます。
「美味しさの工夫は?」
栄養管理室の松元信子さんは
だしを使えば、しょうゆの量を少なくしてもうま味は出せる。
病院食の焼きそばを試食する米村哲部長。
あることが気になりました。
塩分は見た目、濃いが…。
全部が同じ味付けだと患者さんも飽きるので、1品はアクセントを付けて食欲が落ちない工夫をしている。
朝昼晩、3食トータルで味の濃さを調整し、メリハリを付けるといいます。
病院食に対するイメージが変わった。
株式会社グローカル・アイ
[blogcard url="http://www.glocal-i.com/"]
米村哲部長が新しく選んだレシピは七尾病院の豆腐ハンバーグと地元、北海道医療センターの鮭チャンチャン焼きの2つです。
そこで助っ人に招いたのが大阪の企業、株式会社グローカル・アイの管理栄養士、濱口泉さん。
株式会社グローカル・アイは全国160以上の国立病院と提携し、病院食のレシピを配信するサイトを運営。
株式会社ホクノーはここと契約をし、病院の許可を得てレシピを使った商品を販売します。
これだけの野菜を集めた。
カボチャ、ジャガイモは炭水化物が多く、ご飯と同じ種類になるので野菜とは見なさない。
国立病院ではエネルギーや塩分など1食当たりの栄養価に制約があります。
中でもエネルギーは炭水化物(約60%)、脂質(約25%)、タンパク質(約15%)の割合も決められているのです。
水切りをしっかりすることで塩分が減る。
米村哲部長、アドバイスを受けながらようやく豆腐ハンバーグを完成。
北海道医療センターも米村哲部長の腕前に太鼓判を押しました。
試食会
9月30日、開かれたのは地元の住民などを招いた試食会です。
果たして受け入れられるのでしょうか?
非常においしかった。店で売っている弁当は揚げ物が多くて飽きる。こういう献立のメニューはたぶん買う、食べたい。
煮キャベツは好きではないが、これはおいしい。
上々の評価にホッとする米村哲部長。
病院食をベースにした食事は1食500円程度で10月の販売開始が決まりました。
一方で米村哲部長はある悩みを耳にしました。
8年くらい前に右膝を手術した。まず足腰から弱る。
高齢化が進む店の周囲の団地にはエレベーターが設置されていません。
階段で足を踏み外して骨折した高齢者も多いといいます。
米村哲部長、こうした人たちにある秘策を用意していました。
逆にこちらからお客様に届ける。受け身ではなく攻めだと思っている。
それは病院食をお客様の自宅に届ける宅配サービス。
2017年のスタートを目指し、検討を始めたのです。
配達のコストが一番の問題になる。朝昼夜のセットでやらないと1食単位では厳しい。この地域をがっちりお客様として掴んで離さない戦略を取る。
反転攻勢に打って出る地方スーパー。
株式会社ホクノーはこの事業で年間1億円の売り上げを狙います。