
ヨーロッパの天然ガス価格の指標となる先物価格の推移です。世界的な需要回復やウクライナ情勢の緊迫を背景に上がり続け、12月21日には一時、1年前の10倍に達し過去最高値となりました。

ガス価格の高騰でこの冬、ヨーロッパでは深刻な電力不足と電気料金の高騰が起きています。
危機を乗り越える取り組みを取材をすると、そこには日本の技術が使われていました。

ヨーロッパを襲う"電力危機"!
涙ぐましい努力も料金2倍
美食や観光の国"スペイン"。

実はヨーロッパ随一の再生エネルギーの優等生として知られています。

電力の23.3%を風力発電でまかない、最大のエネルギー源となっています。

しかし、去年の秋は風が弱く発電量が減少。電気料金が高騰しました。

すると…
私たちには権利がある。電気と水と暮らしの権利が!

行なわれていたのは電気代高騰への抗議デモです。大手電力会社のトップが槍玉に上げられていました。
エネルギー貧困同盟のマリア・カンプサーノさん。
電気代が上昇し、払えない世帯が増える中、大手電力は収益を伸ばしている。

電力危機ともいわれるこの状況、市民の生活はどうなっているのでしょうか。
バルセロナ市内に住むマルコ・ベルトリオさん。「Youは何しに日本へ?」にも出演した日本通ということで部屋を見せてくれました。

「暗いような?」
暗いけど電気を使わない。節約している。

見せてくれたのは電気料金の比較表です。スペインでは時間帯によって3つの料金が設定されています。

平日の昼や夕方は高く、平日の深夜や土日は安くなっています。

電気代の安い夜12時にシャワーを浴びることもある。

うるさい洗濯は夜はできないので土日まで待たないといけない。

電気の使い方を気にする生活が一般的ですが、12月の消費者価格は平均世帯で1万5,600円。1年前のおよそ2倍になってしまったのです。

市民がオーナー 太陽光発電
人々の生活に負担を強いる電力危機。それを乗り越えるヒントがスペイン西部に。
ここは1,300世帯分の電力を賄う太陽光発電所「アルコレア太陽光発電所」。2016年に稼働を始めました。

やって来たのはこの発電所のオーナーの一人、ペドロ・ゴンザレスさん。

「ソムエネルジア」という協同組合の持ち物だ。

ソムエネルジアの出資者がオーナーだといえる。

ソムエネルジアとはエネルギーの地産地消を理念にする民間団体。現在、全国で出資会員が8万人います。

この日、ペドロさんや近くに住む出資会員が集まっていました。
「みんな出資者か?」
そうだ。

ここの建設費用3億6,000万円は全て会員の出資で賄いました。

出資した会員は25年の長期に渡り電気を固定価格で使うことができます。現在の価格と比べると半額以下に抑えられるのです。

彼らの大規模発電所は全国16ヵ所に拡大。

最近、新たに家庭用ソーラー発電の共同購入プロジェクトも始めました。

ソムエネルジア本部のエドゥアルド・キンタナさん。
夢は100%再エネで100%自社自家発電の世界だ。

消費者が管理できる状態こそ望ましい電気の在り方だと思う。

揺れるイギリス 電力会社破たん!救世主は"海に潜む"日本の技術
イギリスも電力危機に襲われています。

天然ガス価格の高騰でこの春には電気料金が50%近く上がるという試算も。

去年11月には契約者170万人の電力会社が経営破綻する事態まで起こりました。

この危機を救うかもしれないプロジェクトが北海に。

海を730キロメートル隔てたノルウェーと電力を融通するノースシーリンクプロジェクトです。

事業規模2,100億円、去年10月に商業運転を始めました。

ロンドン支局の中村航記者。
こちら変電設備になりますが、この大きな物体が電線を入れる筒です。これが海底700キロメートルに渡ってノルウェーまで続いています。

こちらがイギリス側の心臓部となる施設です。

中にはバルブと呼ばれる電気の変換装置があります。

通常の送電に使う「交流」の電気を長距離でも送電のロスが少ない「直流」に変換する仕組みです。

電力会社「ナショナル・グリッド」のマイケル・ジェームスさん。
イギリスでは再エネは風力やソーラーでノルウェーは水力が得意だ。

イギリスで太陽光や風がないときにはノルウェーから電気を輸入できる。

ノルウェーは安定的に発電できる水力発電が電源構成の9割を占めています。これをイギリスにいつでも輸入できるようになりました。ノルウェーで電気が足りないときには逆にイギリスから輸出もできます。

実はこの送電技術、日本の日立グループが出掛けていて、70年近く前に実用化されたものです。
発電量が不安定な再生エネルギーの欠点を補う方法として電力融通への関心が高まっているのです。
日立エナジーのスプラティム・バナジーさん。
各国がそれぞれ独自の電力システムだと融通できないが、一国だと弱くても一緒なら強くなれる。とても当たり前のことだ。
