バイデン大統領が実現を目指す2兆ドル、日本円で220兆円規模の巨大インフラ投資。
現在与野党の協議が続いていますが、予算の3分の1近くは道路や橋などの整備や、EV(電気自動車)の普及策など交通の分野とされています。
その中で今回注目するのは日本にも大きく関わる高速鉄道です。実現に向け、いま大きな岐路に立たされています。
高速鉄道
人口54万人、カリフォルニア州の中央に位置するフレズノ。市内を進むと…
ワシントン支局の秋山理保子記者、
かなり長く作られています。何マイルほどあるのでしょうか?
目に飛び込んできたのは建設中の高架橋。実は全米で唯一建設が進んでいる高速鉄道がここにあります。
現場の取材が特別に許されました。
カリフォルニア州高速鉄道局、トニ・ティノコさん、
いま建設中の高架橋で現在は鉄筋を入れる作業をしている。
ここに線路が敷かれていく。
2008年、カリフォルニア州は北のサンフランシスコと南のロサンゼルスの二大都市840キロを2時間40分で結ぶ高速鉄道の設置を決定。
2015年、当時の安倍総理が直々に訪れました。シミュレーターを使い、日本の新幹線技術をアピール。
しかし今、大きな壁に直面。全線開通のめどが立っていないのです。
アメリカではかつてない事業で予期せぬ事態に多く直面した。
いま解決方法を探っている。
予期せぬ事態の一つが膨れ上がるコスト。
当初は330億ドル、日本円でおよそ3.6兆円だった建設費用が今では1,000億ドル、11兆円も。
2年前、州知事は計画は非現実的だとして大幅な変更を発表。
なんと二大都市のサンフランシスコとロサンゼルスには接続させず、内陸の2つの市の間だけで開通を目指すとしたのです。
主に農村地帯を走ることになる高速鉄道で採算が取れるのか疑問視されています。
そんな中、誕生したバイデン政権。
「カリフォルニア州の高速鉄道事業を支援する可能性は?」
ブティジェッジ運輸長官、
可能性はある。
支援することを示唆。
州当局もバイデン政権の支援に期待感をにじませます。
バイデン政権との関係は前政権と比べて非常に良好だ。
大統領が高速鉄道に理解を示していることに勇気づけられる。
ただ、地元で聞いてみると…
「高速鉄道を支持するか?」
こんなに遅れては支持をするのは難しい。言い訳ばかりだ。
金と時間の無駄。
厳しい声が相次ぎました。
フレズノ市の郊外に広がるクルミ畑。ここを営むジョン・トスさんも高速鉄道に反対する一人です。
トスさんの畑を貫くのは高速鉄道のために掘り返された土の道。しかし、3年前に始まった工事は一向に進まないといいます。
見たままの悲惨な状態だ。毎日これと付き合わないといけない。
畑での移動は制限され、経営にも影響が出始めているといいます。
先月、連邦議会に意見書を提出し、高速鉄道計画の中止を訴えています。
誰もが計画を無かったことにしたいと思っているだろう。
一度ひっくり返した土地は元に戻らない。
一方、フレズノ市内を走ると目にするのはテントや多くのホームレスの姿。市の貧困率は25%を超え、州平均の2倍以上になっています。こうした厳しい現状も…
こちらは市の中心部にある食品スーパー。
経営するモーガン・ドイザキさんは高速鉄道に賛成しています。
その理由が駅前周辺の整備計画です。カリフォルニア州は去年までにおよそ77億円を拠出。街頭の設置や緑化事業など新たな取り組みが始まりました。
高速鉄道の事業がなかったらこの資金はなかった。
この地域はこれまでほとんど投資されてこなかった。
さらに新規の投資も生まれています。来年オープンする新たなマンションの建設も始まりました。
高速鉄道が走る日を楽しみにしている。
時間はまだかかると思うが高速鉄道と一緒に成長していきたい。
高速鉄道計画に意欲を見せるバイデン大統領。お膝元のフィラデルフィアの列車の前で訴えたのは…
私たちはいま鉄道と運輸と経済を支える一世一代の機会にある。
鉄道への投資はアメリカを軌道に乗せる。