
「ケーザイのナゼ?」です。国内における特許出願件数の推移は年々減少傾向が続いています。さまざまなアイデアを生み出し、日本の経済成長を支えてきた発明の現場にいま何が起きているのかを取材しました。
ナゼ減る?特許出願
東京・新宿区にある発明学会。
こちらで開かれていたのは身近なヒント発明展です。全国の発明家から募った発明品の中から審査を通過した100点あまりの試作品が展示されています。
発明学会
松野泰明事務局長

商品化を目指す発明家とアイデアを求める企業。
両者をつなぐことを目的とした発明コンクール。
会場から出てきたこちらの2人、企業の代表と発明家です。ある発明について商談が行われます。
小林真之助さんが考案したのは宛先の「行」の字を二重線で訂正し、同時に「様」と印字できます。
返信用封筒などに手書きする手間が省けるというアイデア。企業はこの発明を商品化します。
昭和ワールドコーポレーション
遠藤伸一代表

小林さんに支払うのが卸値の2.5%。
例えば定価1,000円の場合、メーカーが問屋に卸すのはおよそ400円。その2.5%、つまり1つ売れて10円が発明家の小林さんに特許使用料として支払われます。
発明家
小林真之助さん

こんなにシンプルというか手抜きというか、作品が認められてとても驚いている。
契約が成立しました。
ヒット商品に慣れば特許使用料も高額に。
大きさを変えられる落し蓋は6,000万円。洗濯機の糸くず取り器は65億円を売上、およそ3億円が発明家に支払われています。
大阪から上京してきた男性、旭電機化成の原守男さんです。
旭電機化成
原守男専務取締役

新商品の開発ミーティングに向かっている。
原さんの会社はプラスチック製品を開発・製造・販売。特に他社にはない便利グッズは会社の主力製品です。
新たな商品を開発するための会議が東京支社で行われていました。
発明家からの提案書を1つ1つチェックしていきます。
どうしてでしょう。
旭電機化成
原守男専務取締役

新商品のネタが必要。
我々では限度がある。
社内からの提案は出尽くしたといいます。
そこで発明家のアイデアを頼って商品を生み出しています。
発明家のアイデアを商品化したふたがトングになる保存容器です。シリコン製のふたの裏にトングが付いています。
このトングで直接、中の食材を掴めるというもの。衛生的で洗い物が増えない商品です。
発明したのは田村和浩さん。今までに20もの発明をコンクールで発表してきましたが…
発明家
田村和浩さん

商品になったのはこの「ふたがトングになる保存容器」だけ。
田村さん唯一の発明に企業は特許使用料をいくら払ったのか?
旭電機化成
原守男専務取締役

田村さんへのロイヤルティー(特許使用料)は50万円くらい。
この商品は販売を続けていくので、これからも増えていく可能性は十分ある。
特許出願 減り続けるのはナゼ?
数多くの発明が生まれ、企業もそれを求めています。
しかし、発明にかかわる特許出願件数は減り続けています。ナゼなのでしょうか?
メタライツ特許商標事務所
木村浩也弁護士

数重視で出願していた企業が多い。
そういったところが精査されている。
内容としてレベルが高いものに、「量」より「質」に変わっている。
ただ目先の利益を追う企業が増えてきたといいます。
メタライツ特許商標事務所
木村浩也弁護士

明るい未来、次のスタンダードを作るには投資が必要。
無駄な研究があってホームランが出る。
スーパーで買い物を終えた主婦の鈴木未夏子さん、実は…
ママのアイディア工房
鈴木未夏子社長

発明品で起業して、会社を経営している。
ランチクロスとして使い終わったらひもを引っ張るだけでお弁当袋に変わる商品を発明しました。
発明コンクールの賞金や融資を元手に商品化しました。
起業して6年、その売り上げは?
ママのアイディア工房
鈴木未夏子社長

上代(定価)ベースで4,600万円くらい。
鈴木さんと同じように発明品で起業し、およそ70億円を売り上げている発明家もいます。
事業拡大に挑戦しないのはナゼ?
よりリスクを取って事業拡大に挑戦しないのはナゼなのでしょうか?
ママのアイディア工房
鈴木未夏子社長

本当は起業家だったらバンと投資するすべもあると思う。
やっぱり心が主婦なのでなかなか難しい。
資金面の課題をクリアできれば意欲ある発明家が増え、より多くの発明が世に出るのかもしれません。