大浜見聞録、今回は岸田政権が重要施策として打ち出しているスタートアップ企業の育成・応援・支援についてです。
新しい産業の育成が欠かせないという話ですが、そうした中、静岡県浜松市のスタートアップ支援の取り組みが注目されています。
浜松市は静岡県西部に位置し、広さ全国第2位となっています。軽自動車やオートバイ、国産ピアノなど多くの日本初を生んだものづくりの競争力がもともとある地域です。
この地域で新たにスタートアップを起こそうという動きが起きています。
「浜松モデル」!リスクをとって起業支援
大浜平太郎キャスター

静岡県浜松市にやって来ました。
実はこの街のスタートアップ支援が非常に充実しているということですが、一体どういうことなのでしょうか。
まず訪ねたのは浜松駅近くのコワーキングスペース。
マジックシールズの下村さんです。
開発したのが「ころやわ」。この床は歩くときには硬い感触ですが、転んで大きな力がかかったときは柔らかいクッションになるといいます。
大浜平太郎キャスター

痛くない。
高齢者の骨折を防止、400を超える病院や介護施設に導入されています。
下村さんはヤマハ発動機でバイクの開発に携わっていました。着地したときの衝撃を吸収する原理を応用しました。
社員は3年間で21人に。浜松市ならではのサポート体制がなければ成長は難しかったといいます。
下村さんを後押しするのが地元金融機関「浜松いわた信用金庫」。
拠点を構えるコワーキングスペース「FUSE(フューズ)」は浜松いわた信用金庫が2020年にスタートアップ支援の拠点としてオープンしました。
信金職員が常駐。資金調達の相談だけでなく、協業先の紹介なども行っています。
浜松いわた信用金庫
新産業創造室
寺田賢人さん

信金の地域の取引先とスタートアップをつなぐことができる。
マジックシールズ
下村明司社長
起業家は普段の働きぶりを見てもらえるので、融資を受けやすい。

このフロアには3Dプリンターなどのものづくり機器やキッチンまであり、1月1万1,000円から利用できます。
さらに企業を後押ししたのが…
マジックシールズ
下村明司社長
浜松で起業イベントが行われ、先輩起業家たちに出会い、活動を聞いた。

大浜平太郎キャスター

先輩起業家の存在は大きい?
マジックシールズ
下村明司社長
起業をどう進めていくかはあまり知られていない。
お金や仲間集めなどの情報がない。

大きな影響を受けたという先輩起業家、訪ねたのは2006年創業のパイフォトニクスです。
光センサーなどを作る地元メーカーの研究員だった池田さん、独自のLED照明を開発して起業しました。
小さな箱から出る光はぼやけることなく1km先まで届くといいます。
円や矢印など様々な形を描くこともできます。
パイフォトニクス
池田貴裕代表
安全分野でよく使われているのは、フォークリフトに搭載して、進行方向や後方の危険な旋回範囲を示す。
伸びているのはクレーン用途。入っていはいけないエリアを地面に示す。

工場や工事現場での安全対策はもちろん、舞台照明など用途は様々です。
ここ数年はアメリカからの受注も増えていて、海外エリアでも伸びています。
その成長のきっかけとなったのが…
パイフォトニクス
池田貴裕代表
2019年「ファンドサポート事業」で5,000万円いただきました。
5,000万円で技術者を採用、技術に投資した。

平太郎の「へぇ~」ポイント
ここで平太郎の「へぇ~」ポイント。市町村では珍しい数千万円規模の補助金。
池田さんが手にした5,000万円、浜松市が2019年度に創設した「ファンドサポート制度」による補助金です。スタートアップ先進国、イスラエル政府の手法を参考にした仕組みです。
市内に事業拠点を持つスタートアップ企業がベンチャーキャピタルから出資を受けると、市が同じ額の交付金を出すというスキームです。
これまで24社におよそ10億円を交付しました。
大浜平太郎キャスター
5,000万円は返しなさいってお金ではない?

パイフォトニクス
池田貴裕代表
10年後、もうかっていたら寄付で返す。
完全な出世払い。

池田さんは浜松市に恩返しをしようと市内の起業家とともに起業を盛り上げる場作りを始めました。
支援拠点では交流イベントなどを定期的に開催しています。
パイフォトニクス
池田貴裕代表
大きいのは仲間、起業家マインドを共有。
「俺も頑張ろう」と刺激がもらえる。

11月20日…
大浜平太郎キャスター

今日は日曜日ですが、こちらの会場では結構人が集まって何かやっています。
数ヵ月に1度開かれるスタートアップ体験イベントです。金曜の夜から日曜まで3日間でビジネスプランを練り上げます。
企業を目指す人、地元大手企業の社員、市役所の若手職員など参加者は様々です。
先輩起業家の池田さんはアドバイス役。
今回の運営リーダーは浜松に本社を置く機械メーカー「ローランド ディー.ジー.」の社員が務めました。
スズキなど多くの地元企業がスポンサーとなり地域をあげてスタートアップの誕生を盛り上げています。
そして審査人として参加している男性は…
浜松市
鈴木康友市長

このイベントに一番多く出ているのは僕。
スタートアップ支援の一番の旗振り役、浜松市の鈴木市長です。
大浜平太郎キャスター
行政が音頭を取ってやるときに経験者として何が大事?

浜松市
鈴木康友市長

「お金出して終わり」ではダメ。
伴走型で支援することが大事。
浜松から世界に通用する企業が出てくると、投資した何十倍、何百倍もの大きなリターンが市に返ってくる。
国がいろいろな制度を作っても、そこに魂が入っていないとダメ。