40年以上続いたアメリカと旧ソ連による東西冷戦。それに終止符を打ったソ連の元最高指導者、ミハイル・ゴルバチョフ氏が8月30日に亡くなりました。91歳でした。世界から称賛される偉業を成し遂げた一方でロシア国内では批判の声が上がっています。
ゴルバチョフ氏死去!
冷戦終結 功績に称賛
54歳の若さでソ連の最高指導者に就任したゴルバチョフ氏。ソ連の経済が低迷する中、立て直しを意味するペレストロイカ政策を推進。民主化や政治改革を断行しました。
ゴルバチョフ氏(1987年)

より多くの起業、より多くの民主主義、より多くの組織と規律が必要だ。
そうすればペレストロイカを全力で進め。
社会主義の発展に弾みをつけることができる。
外交面では西側諸国との融和路線に転換。対立していたアメリカとの間で初めて核軍縮への道筋をつけました。さらに東西ドイツの統一も容認。
1989年のマルタ会談では40年以上に渡って世界を東西に分断してきた冷戦に終止符を打ちました。
アメリカ
ブッシュ(父)元大統領

東西関係を永続的な協力関係に変える。
ゴルバチョフ氏と私がここマルタで始めた未来です。
ゴルバチョフ氏の死去を受け、各国の指導者から追悼の声が相次ぎました。
岸田総理

核廃絶に賛同する世界のリーダーとして大きな功績を残されている。
謹んで哀悼の意を表したい。
ドイツ
ショルツ首脳

彼のおかげでヨーロッパに民主主義と自由がもたらされ、ドイツが統一できたことを私たちは忘れないだろう。
アメリカのバイデン大統領は声明で「素晴らしいビジョンを持ったまれなリーダーだった」と称賛しました。
ロシア 批判続出で時代逆行?
西側諸国からはその功績を称える声が上がるゴルバチョフ氏。
一方、ロシア国内では…
モスクワ市局
バレリー・ベロゼロフ記者

この新聞では大物政治家、今の世界を作ったなどと書かれています。
ロシアには死人の悪口を言うなということわざもあるのですが、この記事には肯定的なものが多いようです。
しかし、街の人は…
モスクワ市民

彼は自分の決定の重大さに気がついていない。
自分の過ちを正さないまま死んでいった。
モスクワ市民

彼はこの国に多くの損害を与えた。その結果に直面しているのが私たちだ。
ゴルバチョフ氏が推し進めた民主化と市場経済の導入。その急激な方針転換は国内を混乱させます。
反発する保守派がクリミア半島にある施設に滞在中のゴルバチョフ氏を突如軟禁。市民も巻き込むクーデターが企てられました。
そして、立て直すはずだったソ連は崩壊に追い込まれます。
ゴルバチョフ氏(1991年)

私はソビエト連邦大統領を辞任する。
政治、経済、軍事、あらゆる面でその後歩んだのは世界から孤立する道。ロシア国内ではゴルバチョフ氏に対する批判的な見方が根強いのです。
プーチン大統領は…
ロシア
プーチン大統領(2005年)

ソ連の崩壊は今世紀最大の地政学的破局だった。
旧ソ連の一員だったウクライナに侵攻。プーチン大統領が大国の復活を目指し、再び対立の時代へと時計の針を逆戻りさせることが懸念されています。
8月31日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は…
ロシア
ペスコフ報道官

彼は冷戦終結でソ連と世界の間に永遠のロマンチックな時期が来ると心から信じたかった。
それは正当化されなかった。
国内外で評価が分かれるゴルバチョフ氏。いま何を思い、その生涯を終えたのでしょうか。