地域で奮闘する企業を取り上げる「輝く！ニッポンのキラ星」。今回は高知県高知市からです。建設工事による騒音や振動を出さないにした機械を製造し、シェアを伸ばしている企業を取材しました。
従来の建設方法を変えた杭打ち機
高知平野の西部に位置する高知市。
建設機械メーカーの技研製作所。ここに従来の建設工法を一変させた杭打ち機があります。護岸工事などで建造物の基礎となる、また土や水を止める壁の役割を担う杭を打ち込む機械です。
その特徴は静かさ。
技研製作所
実証課主任
吉村翔太さん
この機械はサイレントパイラーといって建設時における騒音や振動など建設公害を解消するために我が社が世界で初めて開発した杭圧入機。
従来の杭打ち工法は大型のハンマーを落下させるなど騒音や振動が発生し、建設公害として問題視されていました。
一方、サイレントパイラーは騒音が少なく、大きな振動も起きないといいます。
さらに特徴的なのが従来機に比べてコンパクトなこと。
技研製作所
実証課主任
吉村翔太さん
この技術は世界40以上の国と地域で使われています。
その仕組みは…
技研製作所
実証課主任
吉村翔太さん
すでに打ち込まれた杭をしっかりこの部分でつかんでいます。
引き抜かれまいとする"反力"という力を利用して次の杭を圧入することが可能。
機械が地中に打ち込まれた杭を使い、引き抜かれまいという力を利用して新たな杭を押し込む圧入という原理により、わずか5トンの軽い機械でも50トン以上の大きな力を生み出すことができます。
技研製作所は1975年、この圧入原理を世界で初めて実用化したメーカーで、サイレントパイラーを主力とした建設機械の開発・製造で成長し、2017年に東証一部に上場。
従業員は671人、売上高は276億円、純利益はおよそ31億円です。
技研製作所は従来の建設工法を変えて成長してきました。
技研製作所
森部慎之助社長
土木工事は一般的には河川、港湾など斜面で工事するとき作業構台がなければ通常の土木の施工方法ではできない。
技研の工法は打った杭の上で全て作業できるサイレントパイラーの優位性を生かして工期を短縮できる。作業構台の設置費用がいらない。
圧入原理を生かした建設工事は杭を運ぶ機械やクレーン車など全ての機械装置が杭を掴んで、杭の上を進むので転倒の危険性が少なく機械幅のスペースさえあれば工事を行うことができるのです。
この技術により従来では施工が困難だった水の上や道路脇、運行中の列車の横でも安全でスピーディーな工事が可能になりました。
さらに…
南海トラフ巨大地震対策の防災インフラ
技研製作所
森部慎之助社長
南海トラフ巨大地震の事前防災対策として海岸堤防の補強に多く適用。
これまで防潮堤などの防災インフラの多くは地面の上に設置されただけの重力式の構造でしたが、東日本大震災ではその多くが崩壊。
その後、杭を圧入で地盤の奥深くまで差し込み、連続の壁をつくり、防潮堤の強度を高めるインプラント工法が普及。
実際の津波と同じ状況を作り出すシミュレーターによる耐波実験。杭に衝撃が加わっても粘り強く立ち続けています。技研製作所の建設工事の技術が防災工事の常識を変えようとしています。
海外や宇宙でも求められる技術力
このインプラント工法は海外でも高く評価され、世界40以上の国と地域で実績があります。
護岸の崩落が相次ぐ世界遺産、アムステルダムの運河の9月からの改修工事にも周辺環境や交通、景観を損なわない点が評価されました。
そして技研の技術は世界を飛び越え宇宙へ。
今年、国が2030年頃に月面拠点の建設を目指したプロジェクトの13チームのひとつに選ばれました。
国土交通省総合政策局
増竜郎さん
重力がない中で打った杭を支えにしながら次々打っていく技術は月での建設活動にとっては重要な技術の位置づけになっている。
月の中がどうなっているか情報はない。
月の地面の中の情報も技研の技術で掘り進めながら硬さを測れる。
月の中の情報を知る技術としても画期的。
この高い評価にも驚きはないといいます。
技研製作所
森部慎之助社長
もともと当社の創業者でもある会長は「月でも杭は打てる」。
月での建設の企画、技術の開発については全然違和感がない。
今後は海外売上を7割まで伸ばすことを目標にさらなる技術革新に取り組みます。
技研製作所
森部慎之助社長
遠隔で操作ができて、テレワークで杭打ちができるようなものを10年後に完成させたい。それを元に大きく発展をさせて売り上げ1,000億円を確実なものにしたい。