ローカル鉄道についてです。先週、WBSでもお伝えしましたが国土交通省の有識者検討会が赤字ローカル鉄道の見直しに関する提言を示しました。ローカル線の廃線議論が加速する可能性がありそうです。あくまで廃止を前提としたものではなく、会社と自治体の議論をはじめ3年以内に対策を決めるよう促す提言ではありますが、岐路に立たされるローカル線それぞれの選択を追跡しました。
11年ぶりの復活の秘訣は?
川霧に覆われた只見川。この風光明媚の山々の間を走るのがJR只見線。鉄道ファンなどに人気の鉄道です。
観光客

景色と自然と只見川とのコラボ。雰囲気がいいなと思っている。
こんなふうにあちこち行って写真撮って「いいとこだな」と。
観光客
連れて来られて。

一方で日常の利用客はというと…
利用客

普段は親が送ってくれるので使っていない。
3人くらいしか乗っていないことも。
只見線は国土交通省の有識者検討会が見直し協議の目安とする1キロあたりの平均利用者数が1,000人を下回っていて100円を稼ぐためのコストが7,845円かかる区間もあります。
実はこの只見線、2011年の豪雨災害で橋梁が崩壊。今も一部区間で不通のままです。もともと年間3億円の赤字が続いていたこの区間。廃線しバスへと転換するとの議論になりましたが…
角谷暁子キャスター

11年ぶりに全線運行再開する只見線の試運転がいま始まりました。
今年10月1日に全線で運転を再開することに。赤字路線ながら再開にこぎつけた理由は…
今週発足したばかりの管理事務所を訪ねました。
角谷暁子キャスター
どうして復活ができた?

福島県
只見線管理事務所
工藤宇裕所長

鉄道の施設を「上下分離」という形で。
レールや駅を県が保有して、列車を持って運行するのはJRが行う。
上下分離式、維持コストのかかる線路や駅舎などを自治体が管理、運行は切り離し、引き続きJR東日本が行うことで鉄道事業を継続する方式です。
ローカル線の秘策 上限分離とは?
赤字路線を減らしたいJR東日本に対し、観光資源として鉄道を守りたい福島県。
福島県
只見線管理事務所
工藤宇裕所長

JRは復旧に首を縦に振ってくれなかった。この区間についてはバス転換したいと。
JR東日本は…
東日本旅客鉄道
グループ経営戦略本部
小川哲也マネージャー

被災前1日49人(1キロ当たり)、年間の収入は500万円ほど。
それに対して支出は3億円強。
ただ県側が赤字の多くを負担する覚悟を決めたことで上下分離方式が落としどころになったといいます。
東日本旅客鉄道
グループ経営戦略本部
小川哲也マネージャー

何が満点かっていうのはなかなかありえない解だと思っている。
地域と一緒に何が最適なのかを考え、一つの現実解が上下分離だった。
ローカル線の生き残りの秘策ともいえる上下分離。その方式に一部の望みを託すのが近江鉄道です。
120年以上、地元住民の足として利用されてきました。
しかし、1994年に利益がゼロになって以来、赤字続き。単独での事業継続は難しいと2016年に自治体と協議を始めました。協議ではさまざまな代替手段を検討。
滋賀県 交通戦略課
森原広将さん

バス・BRT・LRTの3つの交通モードに転換した場合を試算。
各交通手段のコストを算出。バスが初期投資を抑えつつランニングコストも鉄道のおよそ半分になるため有力候補になりました。しかし…
滋賀県 交通戦略課
森原広将さん

クロスセクター効果というものを調査した。
クロスセクター効果とは公共交通機関を見直す際に新たに発生する費用を算出すること。例えば近江鉄道を廃止した場合、病院や大学の送迎や観光地の道路の設備費用などを細かく積み上げると総額は年間19.1億円に。
さらに自家用車を使う高齢者ドライバーの講習や通学路の安全対策など数値化できない行政サービスも必要です。
総合的に分析した結果、鉄道を維持した場合の赤字額よりもコストが大きいとの結論に至りました。2024年、上下分離方式へ移行する予定です。
滋賀県 交通戦略課
森原広将さん

上下分離方式でいうと責任の明確化や維持存続に関わる役割も明確化できる。