菊乃井
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京都市東山区に店を構える三ツ星料亭「菊乃井本店」。
旬の食材を贅沢に使った会席コースが人気です。
1人前2万円から。
そのコースの中に最近、話題を呼んでいる料理があります。
「マスカットとつぶ貝の白和え」
ザクロの実も目に鮮やかに濃厚でなめらかな舌触りが最大の特徴です。
クリームみたい。でも豆腐の味がする。こんなの今まで食べたことがない。
さらに鱧と松茸をクリーム色のだし汁に潜らせて食べる「鱧しゃぶ」。
独特の風味とコクが素材の旨味を引き立てます。
日本料理会の重鎮が惚れ込んだ、これまでにない食材が使われていました。
菊乃井の主人、村田吉弘さんは
これは革命。味わいとしても違うジャンルのものを取り込むことができるようになった。料理の幅が広がったし、より高みをのぞめる。
この新たな食材の正体とは?
不二製油株式会社
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関西空港を抱える大阪・泉佐野市。
この街に新しい豆乳を開発した不二製油株式会社の本社・阪南事業所があります。
2012年に世界で初めて豆乳の分離に成功しました。
そうして生まれた2つの豆乳を使って、今度は新たなプロジェクトが始まっていたのです。
新しい豆乳を使った商品の開発。
これに市場の拡大が掛かっています。
その担当に抜擢されたのが入社4年目の開発部門の水野洋さん(27歳)です。
誰もやっていなことに挑戦しているので、可能性が大きな素材だと思う。
新しい豆乳を加工専用の容器に移すと、そこに乳酸菌を入れて発酵させます。
こうして発酵させた豆乳にデンプンなど様々な材料を加え、最後にパックに詰めて冷蔵庫で3週間寝かせると目的のものが出来上がるそうです。
チーズ
8月、東京・港区。
不二製油株式会社の東京支社にやってきた水野洋さん。
冷蔵庫から取り出したのは新たな豆乳から作った加工品です。
それはブロックタイプのチーズ。
商品化に向け清水洋志社長を交えて社内の検討会が開かれることになったのです。
削ったカタチは、まるで本物のチーズのようです。
清水洋志社長、早速手に取りました。
いける。うまいこと味付けしたね。
うま味がありますね。
味は合格。
続いて豆乳チーズをピザにのせて焼いてみることになりました。
溶け具合を見ようというのです。
溶け始めが遅い。ナチュラルはかなり早い。
ナチュラルチーズと同じ条件で焼いた状態を比較してみると清水洋志社長の顔が曇ります。
どっちが食欲が湧くかというと光っている方。これと比べられると違う。
ナチュラルチーズは広がるように溶けているのに対して、豆乳チーズは削ったカタチがそのまま残ってしまっています。
この豆乳チーズ、ナチュラルチーズに比べて低カロリーでコレステロールはほとんどないといいます。
健康志向の強い欧米で販売できれば大きな需要が見込めるのです。
しかし清水洋志社長は、
商品というのは簡単に売れたりしない。ちょっとした違いが売れたり売れなかったりにつながる。まだ研究の余地がある。
水野洋さんには需要拡大のため、「溶けるチーズにする」という大きな課題が残されました。
イタリア
イタリア最大の商業都市ミラノ。
そこに不二製油株式会社の社員の姿がありました。
水野洋さんの姿もあります
チーズの本場を視察に来たのです。
やってきたのは町のスーパーマーケット。
チーズ売り場に直行してみると、そこには驚きの光景がありました。
イタリアは販売されるチーズの種類が世界一多いともいわれる国です。
店では大きさや種類の違うチーズが350種類以上も販売されていました。
さらに水野洋さん、もう一軒、気になったスーパーを訪ねました。
そこで見つけたのはチーズではなく「Sheese(シーズ)」という商品。
チーズではない。「イミテーションチーズ」という部類のもの。
実は「Sheese(シーズ)」はイミテーションチーズと呼ばれる、いわばチーズに似せた商品。
ココナッツオイルやコメの澱粉などを原料としているのもので、植物性の油脂を固めてチーズのフレーバーで味付けしたものです。
ナチュラルチーズとイミテーションチーズ、見た目も味もほとんど変わりません。
ここ数年、市場が急拡大しているイミテーションチーズ。
特に乳製品を食べないベジタリアンに愛用されています。
昔はチーズが食べられなくて、つらいと思ったこともあったわ。でも、ここ最近はイミテーションチーズの種類も豊富になってきたから全然問題ないわ。
水野洋さんは
ここに大豆のものを持ってくるというのは、ハードルはかなり高いが参入もないのでチャンス。
豆乳チーズの試作
大阪にある不二製油株式会社の本社・阪南事業所。
水野洋さんが豆乳チーズを溶けやすくする改良に乗り出していました。
溶けるために重要となってくるのが豆乳、油脂、澱粉の3つの配合バランスです。
どうすればとろけるようになるのか。
何度も違う配合パターンを試します。
そして試作品が完成するたびに焼いて溶け具合を確認するのです。
この作業の繰り返し。
試しても、試しても溶けることなく削ったカタチが残ってしまいます。
焼いた感じはほとんど変わっていない。だいぶ難しいかもしれない。
何度も試行錯誤を繰り返す水野洋さん。
9月中旬、イタリア・ローマ。
チーズ大国に豆乳で作ったチーズを持って不二製油株式会社の社員が乗り込みました。
水野洋さんも同行します。
ローマはイタリアでもナポリと並んでピザの本場として知られる街です。
生地が薄いタイプはローマ風と呼ばれています。
やって来たのはピザで人気のレストラン。
店の奥にある厨房へと案内されました。
早速、見てもらいます。
これはチーズ?
豆乳から作りました。
豆乳? 豆乳から作ったのか?
初めて見る商品に店主のファブリツィオ・ドゥランテさんは興味津々です。
とにかく味見をしてもらうことに。
モッツァレラチーズみたいだな。これはチーズだ、間違いないね。大豆とは思えないよ。モッツァレラと言われても全く気づかないな。
水野洋さん、豆乳チーズの良さをアピール。
ピザにのせる具材の味を引き出す力もあります。
ピザの準備をしてくれ。よし分かった、試してみよう。ちょっと削ってみてくれ。
その場でピザを焼いて試食してくれることになりました。
問題はどんな風に溶けるのか…。
約2分で焼き上がりました。
全く同じじゃないか、見た目も美味しそうだ。
水野洋さんが改良した豆乳チーズ、見た目は美味しそうに溶けていました。
肝心の味の評価は、
美味しいね、すごくクリーミーで風味もいいよ。今、イタリアでは、すごくベジタリアンが増えているからニーズがあると思うよ。うちでもちょうどベジタリアン向けのピザを考えようとしていたから、せひ、この豆乳チーズを使いたいね。
今回、不二製油株式会社は4軒のお店に豆乳チーズを売り込み、その全てで来月から使ってくれることが決まりました。
味が評判を呼べば、豆乳チーズが一気に広がるかもしれません。
大豆の美味しさをしっかり伝えられる素材を作るというのは誇りにしてやっている。突き詰めていったら、今の食文化を変えるだけの力があると思う。そういうところを開発者としてやっていきたい。
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