2017年に大和総研が出してレポートがあります。
政府が提出を目指す「働き方改革関連法案」が成立し、残業時間の上限が月60時間に規制された場合、年間で最大8兆5,000億円の残業代が減少するというものです。
これは雇用者の報酬の3%に相当するということです。
つまり3%の賃上げをしても残業代が減ることによって手取りそものもが増えることにはならなさそうです。
企業側は浮いた残業代をどう労働者に還元するのでしょうか?
街の声
街の人に聞きました。
「残業時間は減った?」
全体には減っている。
では「残業代」は?
がめついかもしれないが残業代で住宅ローンを支払っていたので、ちょっと家計がきつくなった感じ。
株式会社フレスタ
[blogcard url="http://www.fresta.co.jp/"]
浮いた残業代を社員に還元している企業が広島にあります。
広島を中心に展開するスーパーマーケットの「FRESTA(フレスタ)」です。
残業時間の削減などを積極的に進めていますが、社員から寄せられたのは意外な反応でした。
フレスタホールディングスの渡辺裕治人事総務部長は、
現場で残業代を生活費にしている人も「これでは生活が成り立たない」との声も出た。
そこで2017年の冬に導入したのが残業時間が少ない社員にはボーナスを増やす仕組みです。
直近3ヶ月間の残業時間を2時間以内から20時間以上の6段階で評価し、残業時間の少なさに応じてボーナスを上積みします。
平均残業時間 | ボーナスの上積み |
0~2時間以内 | 20万円 |
~5時間未満 | 15万円 |
5時間~ | 10万円 |
10時間~ | 1万円 |
15時間~ | 5,000円 |
20時間以上 | 0円 |
2017年の冬は対象となった約370人のうち、41人に20万円が加算されました。
広島市内のフレスタ東山本店で水産部門のチーフとして働く徳野陽一さん。
残業がなくなると生活が苦しくなるかも。賞与で上乗せ金が付くなら残業削減をやってみようと思った。
徳野さんの店では刺し身が作れる従業員を増やしたり、店内で加工された商品を増やしたりするなど勤務時間を短くする工夫を重ねました。
その結果、徳野さんの月平均残業時間は2016年の同じ時期と比べて約24時間減りました。
一方でボーナスは残業時間の少なさを反映して20万円上積みされました。
徳野さんの収入はトータルでどう変わったのか?
大きく増えていないが、前年とほぼ同じか、少し増えた感覚。
午後5時に帰れるようになり保育園に子どもを迎えに行くようになった。
フレスタはこうしたボーナスなどへの上積みはあくまでも一時的な制度という認識です。
渡辺人事総務部長は、
全員の残業時間が本当に減ればベースアップをしたいと思う。
株式会社ディスコ
[blogcard url="https://www.disco.co.jp/jp/"]
一方、残業代を上限付きで増やした企業があります。
ディスコは半導体部品を加工する機械を手掛けています。
2017年7月から残業時間が少なければ残業代が増える仕組みを開発しました。
例えば残業時間を月45時間以内に抑えれば、残業代の割増率が40%に増えます。残業代は1時間あたり2,500円、45時間働いた場合は15万7,500に。
しかし、46時間残業をしてしまうと割増分が減り45時間の場合よりも少なくなってしまうのです。
ディスコの関家一馬社長は、
残業すればするほど稼ぐという環境は働き方改革の方向と逆になる。長時間残業で損という仕組みをつくる。いかに知恵を出して残業を減らして、アウトポットは維持することを本気で考え始める。
どのように業務を効率化させるか…社員が自ら考えます。
業務改善のアイデアを出し合うプレゼン大会。
いいアイデアを出せばボーナスにも反映される仕組みです。
社員が考えた改善案などによって80を超える残業が減少。業界の好調と相余って売上が伸びています。
増えた利益は社員にも還元。
来年度のボーナスは例年よりも1回多い4回になるといいます。
専門化、日本総研の山田久理事はこうした企業の取り組みについて、
残業代を還元するというのは出ているが、まだ全体としては広がっていない。一定の期間をおいて着実に業務量と抑制と生産性の向上を実現していって、安定的に賃金で還元できていることを考えるのが重要。