
中国のテクノロジーの最先端をシリーズで伝える「中国Tech」。
高齢化などを背景に中国ではいまリハビリ関連の需要が高まっているといいます。そこで広がっているのがAIやロボットの導入です。ロックダウン前の上海でその現場を取材しました。
人材不足で"リハビリロボット"
上海市内にあるリハビリ専門病院「上海永慈康复医院」。
ここはその心臓部となるリハビリセンター。脳卒中や脊椎の損傷などさまざまな症状の患者に日本でいう理学療法士にあたる専門スタッフが一対一でリハビリにあたります。
この病院では去年から新たな試みを始めました。
それがこの部屋。
上海支局
菅野陽平記者
景色が一変しますね。

上海永慈康复医院
成鵬副院長

ここではリハビリロボットを使った治療をしている。
最新鋭のリハビリセンターです。42台のロボットがスタッフに代わってリハビリを支援します。
こちらに並んでいるのは足首のリハビリロボット。患者の症状に応じて負荷がかかるペダルを操作し、ゲームをする仕組みです。
一方こちらは歩行訓練のロボットです。半身不随といった重症患者から軽症患者まであらゆる患者の歩行リハビリに対応可能。通常は多くのスタッフを要する歩行訓練がたった1台のロボットの介助で済むのです。
上海永慈康复医院
成鵬副院長

中国でのリハビリの歴史は浅く、人も足りない。
リハビリ技術も規範化されていないし、既存のリハビリだとスタッフの能力や精神状況にも影響される。
高齢化とともにリハビリへの需要が高まる中、人材不足を解消するとともに人間よりも正確な訓練を提供するのが狙いだといいます。
脳出血で右半身が不髄の男性。4ヵ月ほどロボットでのリハビリを続けています。
脳出血の患者

前よりだいぶ良くなった。最初は全然動かなかった。
今は少し力を入れることができる。
リハビリ支援ロボットを手掛けるのは上海に本社を置く傅利葉智能(フーリエ・インテリジェンス)。
創業7年ながら30以上の商品を開発。すでに欧米をはじめとする40以上の国と地域に輸出もしています。
その実力はどれほどなのか、上腕リハビリロボット「ArmMotus™ M2 Pro」は腕のコントロール能力と関節の動きを改善するためのリハビリロボット。レバーを動かして銃を操作し、モンスターを撃ち落とします。
一見単純に見えますが…
上海支局
菅野陽平記者

僕はヘルニアを持っているので左手があんまり力が入らなかったりする。かなり僕の力に応じて機械が負荷をかけてきます。
傅利葉智能
楊志豪最高製品責任者

力をフィードバックする技術で人の状態が正確にわかる。
患者の力の強さに応じて力を補助している。
例えば押すことはできるけど引くことはできないなどといった患者の腕の状況をセンサーが判断。AIが刻々と変わる患者の状況に合うようリハビリに適正な力を計算し補助します。
一方、上腕リハビリロボット「ArmMotus™ EMU」はさらに複雑な腕のリハビリができるというロボット。アームが360度自由自在に動くためより幅広いリハビリが可能です。
これは卓球をしながらのリハビリプログラム。試合をすること10分。
上海支局
菅野陽平記者

やっと勝ちました。球のスピードはゆっくりですがアームが僕の腕に力をかけてくるので難しいです。
傅利葉智能
趙莉さん

患者が入れる力の方向を感知して、標的との距離によって力を補助している。
玉を打つ際の感覚もアームを通じて腕に伝えられるため、まるで本物の卓球をしているようです。
さらに…
傅利葉智能
趙莉さん

モノがぶつかる感覚、魚釣りでさおが引かれる感覚、ジャガイモの皮むきの感覚も再現できる。
さまざまな生活支援の感覚を支援することが可能。水を飲むなど実践的な動作も訓練できます。
フーリエではこうした制御を司るセンサーや動力装置を自社で設計・開発。日本の神戸大学をはじめとする数ヵ国の大学や研究機関と提携し、リハビリの精度を高めてきました。
さらにフーリエが狙うのが…
傅利葉智能
楊志豪最高製品責任者

患者の訓練データは病院のデータセンターに集まる。
より多くの臨床研究に活用することができる。
ロボットから収集したデータをクラウド上で蓄積。臨床研究に活用することで医療技術が向上できると謳います。
傅利葉智能
楊志豪最高製品責任者

全てのリハビリの7~8割をロボット化したら、リハビリや医療の効率が大幅に上がり、スタッフは高度な治療により専念できる。