右側は東京都内のスポーツジムの様子です、左側は中国・北京にあるジムの様子です。
実はこの東京のジムは中国の経営ノウハウを導入して運営しているといいます。そのカギを握っているのが真ん中にあるスマートフォンですが、この先端デジタルの分野で中国のビジネスモデルを取り入れる日本企業が現れ始めています。
その背景に何があるのでしょうか。
ネットですべて完結モデル
今年6月にオープンしたフィットネスクラブ「フラッテ」。中に入ると運動をする人の姿が…
なるべく腕を大きく振って。
ダンスフロアだけの小さなクラブですが大きな特徴があります。
例えばこちらは受付。スマートフォンでQRコードをかざすだけ。
トレーニングウェアなどのレンタルも支払いはオンライン。
レッスンの予約もスマホから行うなどサービスすべてがネットで完結するのです。
さらにスタジオに設置されたカメラの先には配信を見ながら運動をする女性がいました。店舗と同じサービスを自宅でも受けられるのです。
お客様がオンラインとオフラインを行き来しサービスを受けられるこうした手法はOMO(オンライン・マージズ・ウィズ・オフライン)と呼ばれます。
フラッテの会員は…
忙しい時に2週間に1度はオンラインでやっている。
オンラインとオフラインの差はなく本当に便利。
こうした利便性が受け、フラットはオープン3ヵ月で黒字化を達成。
フラッテを運営するファノーヴァの船久保匡佑社長。現在の店舗運営を構築するために参考にした企業がありました。
中国のスーパーモンキーというOMO型フィットネスジム。
コロナ禍で繁華街に行きフィットネスをする体験そのものが気軽ではない。
この事業であれば日本に応用できる。
中国・北京。
日本企業が参考にしたスーパーモンキーの店舗を訪ねました。
北京支局の杉原啓佑記者。
こちらスーパーモンキーの前です。
大きく年間契約はありません。1回ごとに支払うと書かれています。
ジム利用の手軽さが圧倒的な支持を受け、中国で200以上の店舗を展開しています。
利用者が見せてくれたのは予約画面。
中国で広く浸透しているSNS「ウィーチャット」から簡単に予約できます。フラッテが導入した予約方法です。
レッスンの予約が終わったよ。
予約から支払いまで数十秒で完了。価格も1回あたり1,600円とお手頃です。
スーパーモンキーのユーザーの李楊さん。
お金はウィーチャットで直接支払うんだ。
そして、レッスン30分前になるとジムに入るパスコードが届きます。
更衣室で着替えを済ませた李さん、あとはレッスンを受けるだけ。
李さんがこの日選んだのは脂肪燃焼のためのダンスレッスン。
スーパーモンキーは店舗ごとにバイクやウエイトトレーニングなど個別に鍛えたい部分を重視したトレーニング内容を提供しています。
カードも不要で自分の時間も気にしなくていい。
いつ、どこでも予約や支払いができる。
とても便利だと思う。
一方、中国からビジネスモデルを輸入したフラッテ。
取り入れた手法はコスト面で大きなメリットを生み出しました。
イニシャルコストとランニングコストを大幅に削減できる。
気軽に続けられるプライシング(価格決定)ができるのもOMOの価値。
フラッテは月額およそ1万1,000円で通い放題。主要なフィットネスクラブでこの価格を実現できているところはないといいます。
すべてをデジタルで完結する中国のビジネスモデルが低価格を可能にしました。
日銀の北京事務所長を務めた瀬口清之さん。中国経済と日米中3ヵ国の政治経済関係が専門で、中国企業の最新の動向についても精通しています。
「中国のデジタル分野のビジネスモデルを生み出す能力・才能をどうみる?」
才能というよりはインフラがあるかないか。
スマホがないと暮らせない。
社会全体がスマホを使ってITとAIで動くことが前提になっている。
そこにあったサービスしか出てこない。そんな国、中国以外ない。
先端デジタルの分野ではすでに中国は飛び抜けた存在で競争の土台そのものが違うというのです。
「デジタルで日本が後追いを続けた場合、自動車では自動運転やAIなどデジタルが心臓部分になる。」
「中国企業に自動車産業を持っていかれるのか?」
日本の国内でなにかできるとか考えること自体がもう時代遅れ。
自分のところで全部つくろうとすると技術の最先端には追いつかない。
コストも上がる。すると最終製品で負ける。
製品をつくるときに海外の企業に来てもらい一緒にやれば、まだ競争力があるにもかかわらず日本の経営者はやろうとしない。
先行する中国企業を取り込むことが日本企業のチャンスにつながると強調します。
一番いいのは日本企業が中国の市場に入って中国でシェアを取る。
日本の企業はすごい人気がある。「一緒にやろう」という中国企業はいくらでもある。
日本の企業は世界の中の立ち位置を考え、どこに優位性があるのか、どこが劣っているのか。
劣っている部分は全部世界から持ってくる
一番優位なところを一番優れている企業とくっつけて、技術もサービスも全世界で売る、日本の中にいたら発展しない。