ビジネス関連 ワールドビジネスサテライト

[WBS]"負のイメージ"が変化!マグロ漁船 目指す若者たち

2022年7月18日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

脂が乗ったマグロのお寿司。この日本のマグロ産業を支えているのが遠洋漁業です。長い場合は1年以上も漁に出るため家族や友人と連絡が取れなくなるとか、借金のかたに乗せられるなどのイメージが広がっていたことからなかなか若い人たちが集まりませんでした。しかし、ここにきて乗船を希望する若者が集まり始めているといいます。一体なぜなのでしょうか。その背景を取材しました。

収入500万円…"車を購入した"!マグロ漁船 目指す若者たち

宮城県気仙沼市にある気仙沼港。遠洋マグロ漁船に乗る漁師が日本一多い港です。

第123勝栄丸は南太平洋のパプアニューギニア海域で漁を行い。4ヵ月ぶりに帰港しました。船員は日本人と外国人の合わせて24人。20歳の高橋滉平さんは船に乗って3年目になります。

遠洋マグロ漁師
高橋滉平さん(20歳)

大漁だった。

番組スタッフ

4ヵ月長かった?

遠洋マグロ漁師
高橋滉平さん(20歳)

もう慣れた。
最初は長かった。忙しさが何ヶ月も続くと思うときつかった。

一方、19歳の宮本翔麻さんは今回が初めてのマグロ漁でした。

遠洋マグロ漁師
宮本翔麻さん(19歳)

いい経験になった。
いやなこともあったけれど本当に楽しかった。

1年のほとんどを船で過ごす遠洋マグロ漁業。過酷なイメージがあるその暮らしぶりを見せてもらうと。高橋さんたちが使うのはこちらの一人部屋。机や冷蔵庫が備え付けられています。さらに今年から船に導入されたのがWi-Fiです。

遠洋マグロ漁師
高橋滉平さん(20歳)

Wi-Fiが付いて気軽にLINEでやり取りできるのは一番の違い。
母がこまめに送ってくれて、お互いの状況をすぐ知ることができるから心配事は減る。

こちらの船員が夢中になっていたのはテレビゲームです。

遠洋マグロ漁師

仕事が終わったら毎日ゲーム。
この船はWi-Fiがあるからうれしい。

風呂には毎日入ることができ、船内での光熱費や食費は全て無料。気仙沼港の場合、1年間マグロ漁船に乗って働くと1年目でも平均500万円前後の収入を得ることができます。

高橋さんは漁で稼いだお金で念願だった車を購入しました。

遠洋マグロ漁師
高橋滉平さん(20歳)

中学1年生から欲しかった。大金が入ってきて2~3年働ければ好きな車が買えてうれしい。

こうした若い漁師が入ったのをきっかけに船側は漁の工程を変更。これまでは1年近く海に出たままでしたが、今回は4ヵ月で気仙沼港に一旦戻り1週間休暇、その後再び7ヵ月の漁に出ます。

第123勝栄丸 船頭
菅野和郭さん(61歳)

若い世代が乗ってきて定着できるかというと長期航海が一番のネック。
それ(長期航海)をいくらか取り除けば変わるのではないか。

船員の採用活動をする宮城県北部船主協会によると気仙沼港の遠洋マグロ漁師はおよそ250人、かつて新人はほとんど入りませんでしたが現在は年間およそ15人を採用しています。

宮城県北部船主協会
吉田鶴男さん

船の日本人の半分を若い人にしたい。
若い人に来てもらい成長してもらって、1日も早く一人前になってもらわないといまの船の数が維持できない。

マグロ漁船目指す若者たち!"イメージ変化"のきっかけは…

いま日本の漁業は高齢化と人手不足が深刻化しています。年齢別で見てみると55歳以上の割合がおよそ6割となっていて就業者は17年前と比べ10万人も減少しています。

そうした中、都内で7月18日に行われたのは漁業への就職を支援するイベント「漁業就職支援フェア」。養殖から遠洋漁業まで国内の70の団体などが出展し、若者たちの個別相談に応じました。

20年目を迎えるイベントですが、最近は集まる若者たちに変化が表れているようです。

高校生

高校の普通科。
もともと釣りが好きで魚を捕るのが楽しい。

水産系の学校に通っておらず、漁業に関する専門知識がない若者が増えているのです。なかにはこんな大学生も…

大学生

マグロ漁船のユーチューブを見たが、稼げるところに一番注目した。

漁師の"爆買い"が150万再生!バズり動画で若者獲得へ

こうした若者獲得にいま一役買っているの「遠洋漁師になつって夢を叶える動画っ!」です。

きょう買い物をするのは高橋滉平くんです。

登場するのは気仙沼でマグロ漁船に乗る先程の高橋さん。店で次々と菓子をカートに入れていきます。これは出港前の買い出しに密着した動画。漁師の爆買いシリーズとして大人気で中には150万回再生されたものも。

この動画シリーズを作成したのが日本かつお・まぐろ漁業共同組合。若者にマグロの遠洋漁業に興味を持ってもらおうと2年前からユーチューブなどに投稿を始めましたが実際に効果が現れているようです。

日本かつお・まぐろ漁業共同組合
土屋和常任理事

動画を見て15~16人の応募があり、半分くらいはもう乗船している。
予想以上に反応があったと思っている。

中には実際の給料や働く環境なども包み隠さず公開する動画も。借金のかたに乗せられるといった悪いイメージを払拭するとともにマグロ漁船の現状を知ってもらうのが狙いです。

日本かつお・まぐろ漁業共同組合
土屋和常任理事

素晴らしいと演出的なことはせず、現実をちゃんと見せて、厳しいところも素晴らしさもあることをちゃんと情報発信しないといけない。

マグロ漁船に集まり始めた若者たち。今後。漁業にどのような変革を生み出していくのでしょうか。

-ビジネス関連, ワールドビジネスサテライト
-