株式会社ジーユー
[blogcard url="http://www.gu-japan.com/"]
東京の銀座。
一等地に店を構えるファッションブランド「GU」
UNIQLOの兄弟ブランドとして10年前に誕生しました。
様々なデザインが揃ったTシャツは1枚590円。
今年のヒット商品。スカートとパンツを合わせたスカンツは1,990円。
値段は安くて買いに来やすい。
シンプルだけどデザインもいい。
印象的なCMで大々的にPR。
この2年で売り上げを1.7倍の1,415億円に伸ばしました。
好調の売上の牽引役の一人が川畑卓副社長です。
提供する商品の内容とかプロモーションを工夫しながら、研究を重ねながらやってきた。
東京の丸の内のオフィス街に川畑卓副社長が訪れます。
向かった先は三菱商事株式会社。
三菱商事株式会社
[blogcard url="http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/"]
総合商社の三菱商事株式会社。
本社の中に入った川畑卓副社長。
三菱商事に来るのは1ヶ月か2ヶ月ぶり。
川畑卓副社長は実は三菱商事株式会社の社員です。
参加するのは経営者就任時プログラム。
この日は川畑卓副社長と同じように経営幹部として出向している三菱商事株式会社の社員、約20人が集まっていました。
トップは甘え、おごり、うぬぼれ、すぐに出がちです。
講師役の大手鉄鋼商社社長も三菱商事株式会社の出身です。
三菱商事株式会社では経営を担う人材育成に力を入れています。
出向している経営者に求められるのは短期間に成果を上げることです。
会社の道筋をどうつくるというのは難しいけど非常に挑戦しがいのある仕事。
三菱商事株式会社の決算発表
2016年5月10日、三菱商事株式会社の決算発表。
2015年度の連結純利益は1,494億円の赤字で着地。
資源やエネルギー価格の下落によって創業以来初の連結赤字に転落しました。
こうした状況に危機感を抱くのが垣内威彦社長です。
事業投資から事業経営への転換を標榜しているので、さらに成長させてくれる経営人材を豊富に社内に持っておくことは三菱商事グループ全体の繁栄につながる。
株式会社ファーストリテイリング
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その三菱商事株式会社に経営者人材の派遣を依頼したのが株式会社ファーストリテイリングの柳井正社長です。
我々は何兆円という会社になりたいので外部の力を借りて大きくしたい。三菱商事は一番人材が揃っている。組織で仕事をする会社なので我々と組む相手としては十分。
東京都港区にある東京ミッドタウン。
その中に株式会社ファーストリテイリングの本部があります。
毎週月曜日に役員フロアの会議室にUNIQLOやGUの幹部が集まります。
三菱商事株式会社から出向している川畑卓副社長そ姿もありました。
グループの経営方針を決める大事な会議です。
柳井正社長が川畑卓副社長に注文を出します。
残念ながら、やっぱり販売員と店長の能力が足りなくて足りない原因は経営幹部が「教育」をせずに全部「管理」していることが一番問題。リーダーシップを管理から教育に変えて「育成しよう」「自分の後継者をつくろう」ともっと変えてもらわないと。
日々の業務を教えるということをどう変えていくか、かなり力のいる作業だと思うけど絶対にやろうと思います。
社員教育の改革を柳井正社長は川畑卓副社長に託したのです。
柳井正社長が見ている世界、視界、視点は独自。極めて高い。三菱商事も当然高い水準を求められるが、さらにその上の水準というイメージが強い。
川畑卓副社長
川畑卓副社長は東京大学を卒業。
アメリカでMBAを所得。
三菱商事株式会社に入社後は繊維業界を中心に出向を繰り返してきました。
株式会社ジーユー
株式会社ジーユーは従業員数1万3,813人、店舗数はこの4年で倍増して351店舗。
今急成長している会社で人材育成は近々の課題です。
GUイオンモール大垣店
2015年10月、川畑卓副社長が東京から岐阜を訪れました。
向かったのはイオンモール大垣のGUイオンモール大垣店。
全国300を超える店の中から川畑卓副社長はあえてこの店を選びました。
GUイオンモール大垣店はショッピングモールに入ってすぐの場所にあります。
絶好の立地条件にも関わらず売上は全国平均を下回っていました。
この店を任されているのが山﨑加代子店長。
約30人のスタッフをまとめる、いわば店の経営者です。
川畑卓副社長は会社全体の人材育成を進めるには店長の再教育が必要だと考えていました。
私が直接教育するプロジェクト。1人の店長がもっと成長に対して意欲を持ってもらって我々も育成に関与しないと会社が育つ仕組みが生まれない。
最初に自己分析。
山﨑加代子店長に足りないことを書き出してもらいます。
山﨑加代子店長は売上や目標の達成と書きました。
本部が考えている経営戦略、商売戦略をほとんど理解していない。
川畑卓副社長はどうしたらいいのか話し合います。
しかし山﨑加代子店長は浮かない顔…
個人的に自分がダメというか、究極に言うと商売がしたくて入社したわけではない。嫌いではないんですけど。
商売という仕事に意義を感じられない。
予想以上に深い悩みです。
山﨑加代子店長
山﨑加代子店長は大学を卒業後、5年前に株式会社ジーユーに入社しました。
岐阜で暮らすのは初めて。
見知らぬ土地での一人暮らしです。
山﨑加代子店長は株式会社ジーユーの新卒入社一期生です。
「GUは今からつくる会社なんだよ」と「新卒採用ではなく将来の中核を担う人材を採用したい」と最終面接で言われた時にそこまで言い切れるのがかっこいいと思った。
入社後、店舗での販売を経験。
その後、東京の本部で人事を担当し、2ヶ月前にGUイオンモール大垣店を任されました。
再教育
2015年11月下旬、川畑卓副社長は数人のスタッフを連れてGUイオンモール大垣店を再び訪れました。
山﨑加代子店長の再教育が始動します。
本部でも限られた人しか見ることのできない会社の年間の月別と部門別の予算の資料を見せます。
会社全体の予算を知ってもらうことで店の売上目標が作られる理由を学んでもらうのです。
粗利率など商売をする上での基本的な知識も改めて教えます。
続いて川畑卓副社長は山﨑加代子店長と一緒に売り場に行きます。
靴紐のないスニーカータイプのスリッポン。
川畑卓副社長は12月の1ヶ月間で120足を売るという販売目標を山﨑加代子店長に課しました。
これまでの倍近い高い目標です。
何らかの手を打たなきゃいけないのは間違いない。ヒントだけ出して自分で考えさせるまで追い込まないといけない。全部こっちでやると教育する意味がない。
早速、山﨑加代子店長は店舗内の商品の配置図を確認します。
売り場をいかに魅力的にできるか悩んでいました。
経営者就任時プログラム懇親会
川畑卓副社長は三菱商事株式会社の経営者就任時プログラム懇親会に参加していました。
他の社員からどこに出向しているとの質問に
GUの副社長。今、急成長を遂げている会社で良くも悪くもベンチャー。
孤独な戦いをしている人がいっぱいいるので僕は意外に孤独じゃないんだなとあらためて実感した。
再教育
12月下旬、GUイオンモール大垣店。
大量のスリッポンが店に届いていました。
山﨑加代子店長はレジの正面に陳列をしていきます。
スーパーと一緒でレジ周りに飴とかチョコがあると「おっ」と思う。目に留まればいいなと。
スリッポンは1,490円。
衝動買いを誘う作戦です。
狙い通り、お客様が通り掛りに手に取ることも。
しかし、なかなか購入には至りません。
ここで試着をする人がなかなかいないので目には付くけど手に取って試すところまで至らなかった。
そこで服とのコーディネートとアピールします。
1月19日、販売研修の結果報告の日です。
岐阜から山﨑加代子店長が東京の本部に訪れました。
スリッポンに関しては大幅な未達になってしまった。
1ヶ月の目標は120足でしたが結果は74足。
しかし川畑卓副社長は
売り上げが「到達した」「しない」ではなく変化があったかを僕は見ている。
推移を見ると1週目の8足から、2週目は12足、3週目は14足、4週目は22足と増えていました。
「数字を変えていく」って重要。「数字を出す」ではなく「数字を変えにいく」。商売をした形跡が見えることを評価したい。
川畑卓副社長は1ヶ月間、山﨑加代子店長は考え努力したことを評価していました。
前にお越しいただいた時に「商売に興味がない」と言ったけど本当の意味での仕事がこの年になって初めて分かった。
醍醐味がちょっと分かりましたか?
今やっと入口に立ったぐらいだと思うけど。
そういうふうに思えたのは非常に貴重。
商売が面白くなってきた。大きな成長です。
新たな人材育成のカタチ
4月20日、大阪に川畑卓副社長の姿がありました。
向かったのはビルの一室。
そこには株式会社ジーユーの関西地区の店長、約70人が集まっていました。
各テーブルでは川畑卓副社長が山﨑加代子店長に教えたように先生役の社員が店長たちを指導しています。
川畑卓副社長はGUイオンモール大垣店の教育方法を全店舗に広げようとしていました。
先生役の中には山﨑加代子店長の姿もありました。
お客様に喜んでもらうためにあと何が足りないっていう、今よりプラスでやらなきゃいけないことを考えた方がいい。
川畑卓副社長は
あれだけ苦労していた本人が教える立場になって、わりに的確にアドバイスをしている。掛け値なしにうれしい。人は変わりますね。1人が変わると周りの4人が「化学反応」を受けている。
管理ではなく教育で人を育てる。
株式会社ジーユーにこれまでなかった新たな人材育成のカタチです。
三菱商事株式会社から来た川畑卓副社長も経営者として大きな一歩を踏み出しました。
厳しいからこそ楽しい。経営という仕事を通じて自分が積み上がっていくことに対する喜びを感じる。大変いい修行をさせてもらっている。
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