イギリスの代表的なお酒というとパブのビールやウイスキーなどですが、実は最近、ウイスキーより売り上げが多いお酒があります。それがジンです。そのジンの本場を足掛かりに日本産ジンで世界に挑もうとしている取り組みに密着しました。
日本産ジンで世界に挑む!本場イギリス進出へ 秘策は?
去年9月、ロンドン。新型コロナの規制が本格的に緩和されたこともあり、国内最大のお酒の商談会「INBIBE LIVE」が開かれました。
日本メーカーも21社が出展する中、唯一日本からトップ自ら乗り込んだのがエシカル・スピリッツの山本祐也さんです。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
われわれは日本酒の製造過程の余り物を使っている。
売り込んでいたのは環境に優しいジンです。
山本さんは投資銀行で働いた後、地方を活性化させようと日本酒卸のスタートアップを創業。そこで日本酒の製造過程で生まれる酒かすの多くが捨てられていることに気付きました。
こうして破棄されるものを活用したのが東京の蒸留所でつくる"サステナブル"ジンのシリーズです。
イギリスの販売業者
環境などにやさしいエシカル分野に本当は注力したかったところだ。
イギリス攻略のカギがこのサステナブル、環境意識の高さを味方につけようというのです。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
ジンの主戦場はグローバル。日本に留まる理由があまりない。
ジンの本場ともいわれるイギリス。2018年にはジンの売り上げがウイスキーの売り上げを上回りました。
バー「ザ・モルトラウンジ アンド バー」を訪ねてみるとジンが22種類。ロンドンでは当たり前の光景ですが…
ザ・モルトラウンジ アンド バー
フランチェスコ・ピッタラさん
ジンが多いのは伝統だ。
アジアの影響力が増してきて海外産のものも増えてきた。
実は日本産も少しづつ知られるようになっていて、サントリーのジン「ROKU(六)」も置かれています。
これを作るためサントリーは大阪の工場におよそ32億円の投資を行い増産を決定。日本産ジンが世界で評価を高めつつあることも背景にあります。
ロンドンで若者に人気の繁華街ショーディッチ。ジン人気を受け去年、山本さんはある決断をしました。
やって来たのは…
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
フロアプランは決まっている。
一回、味を知って買ってもらうために体験してもらうバーをつくる。
自慢の日本産ジンを海外展開するため初めての海外拠点を作る計画なのです。
そして山本さん、同時に小売店開拓も勧めていました。小売チェーンの棚を見せてもらうと、なんとジンだけで200種類以上。日本の売り場とはかなり様子が違います。
店員に自社のジンの味を確かめてもらう山本さん。
ウイスキー・エクスチェンジ担当者
これは好きだ。
いい味だ。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
店においてもらえるか?
ウイスキー・エクスチェンジ担当者
最後は本社判断だがすすめておく。
商品は素晴らしいからすぐ置けるかもしれない。
確かな手応えを得たようです。
そして今月、ついに店舗がプレオープン。コロナの影響もあり、予定より9ヵ月遅れましたが思い描いた通りの出来栄えです。
もともと認知度の高い日本酒を100種類以上置き、お客さんの関心を引き付けて目玉商品のサステナブルジンへと誘導します。
試飲などができるバーカウンターも。
ロンドン支局
中村航記者
口の中がすごいですね。ジンというよりレモン酒っぽく感じる。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
酒かすも搾るまでは日本酒と同じ。
無臭のスピリッツよりも日本酒の香りがする。
お客さんがやって来ました。やはり目的は日本酒のようです。そこで山本さんが動きます。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
日本酒でつくったスピリッツを試してください。
ジンの感想は…
試飲客
普通のジンと全然違う。驚いた。
日本産ジンに興味は持ってもらえたようです。
すでにイタリアやフランスでの展開が決定。ロンドンを足掛かりに世界へ挑みます。
エシカル・スピリッツ
山本祐也CEO
日本産への信頼性やリスペクトはあるし、世界の潮流にもこの商品は相性がいい。自信をもって広げていける。