イギリスの君主として歴代最長となる70年に渡って在位してきたエリザベス女王が9月8日に96歳で亡くなりました。さまざまな困難に直面しながらもイギリスの安定と統合の象徴としての存在感を築いてきたほか、国際社会にも大きな影響力を与えてきました。
死去の発表から1日ほど経ったロンドンに中村航記者います。
イギリス 女王死去 大砲96発で悼む!「悲しみは愛の代償」
ロンドン支局
中村航記者
私はいまエリザベス女王が普段の住居にしていたバッキンガム宮殿の前に来ています。ここには昨日も夜通し献花に訪れる人の波が絶えませんでした。今も多くの人々が来ています。
宮殿の上に掲げられている旗が半旗だったものがチャールズ国王が到着したということで変わりました。
ひとつ新聞の紙面を紹介させてください。地元紙のテレグラフですが、大きな写真とともに「悲しみは愛の代償」と書いています。悲しみが大きのはそれだけ愛していたからだという意味で国民の気持ちを代弁しているのですが、実はこれは女王が9.11の遺族に向かって語った言葉でもあります。ここからも女王の人柄がわかります。
先ほど、女王の死を悼む大砲が放たれました。
大砲は女王の年齢分、96発放たれました。
イギリス国内ではさまざまな場で哀悼の意を示す黙祷なども行われています。
またイギリス議会下院では追悼式典が開かれ、今後10日間は全ての議事が中断されます。
また喪に服す期間については新国王の意向によるおよそ10日後に行われる葬儀からさらに1週間とする発表がされました。
広く愛されたエリザベス女王、亡くなった翌日から世界が喪失感を感じています。
イギリス女王死去 各国で弔意!天皇陛下「深い悲しみの気持ち」
国連の冒頭、出席者が起立し、およそ1分間の黙祷が捧げられました。
アメリカのバイデン大統領はいち早く国葬に参加する意向を表明。
アメリカ
バイデン大統領
生前に面会したときも女王はとても慈悲深く寛大だった。
アメリカの人々の思いは悲しみに暮れるイギリスの人々と共にある。
そのほか、ロシアのプーチン大統領や中国の習国家主席など世界各国の首脳が女王の功績や人柄を称えました。
岸田総理は弔問のため、イギリス大使館を訪れ記帳。大使館の前では花を手向け、手を合わせる人の姿も見られました。
また宮内庁は天皇陛下のお気持ちを文書で公表。陛下は深い悲しみの気持ちと心よりの哀悼の意を表しますと悼まれました。
一方、千葉県柏市の映画館「キネマ旬報シアター」。ここで上映されていたのはエリザベス女王の生涯を描いた初の長編ドキュメンタリー映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」です。
実はこの劇場では9月9日が上映終了の日でしたが…
お客さん
6月からやっていたのは知っていたが機会を逃して見られなくて。
え?亡くなったのと調べたら地元でやっていた。
お客さん
亡くなったと聞いたので見ておこうと思って。
お客さんからの要望などを受け劇場では急遽、上映期間を2週間延長することを決めました。
キネマ旬報シアター
山田絹枝さん
問い合わせはかなり増えていて延長したことを喜ぶ方が大変多い。
"開かれた王室"目指して!困難に立ち向かった在位70年
女王の70年の治世はどのようなものだったのか。
誕生は1926年。第二次世界大戦ではドイツとの戦いの中で後方部隊として一般国民と同様の訓練を受け、従軍しました。
そして、父の死去に伴い25歳の若さで女王に即位。
日本の皇室ともつながりが深く、1970年代には昭和天皇と互いの国を訪問し、親交を深めました。
国内では開かれた王室の実現を模索。それを象徴したのが即位後、初めてのテレビメッセージでした。
イギリス
エリザベス女王
私は戦争を率いることはできませんし、方を定めたり人を裁いたりもしません。
しかし他のことはできます。それは私が皆さんに献身的に尽くすことです。
ロイヤルファミリーとして国民に寄り添う姿は日本の皇室のモデルになったとされます。
世界の注目を一気に浴びたのは息子・チャールズ皇太子の結婚でしたが、離婚後にダイアナ元皇太子妃が自動車事故で死去。
開かれた王室を取り巻く問題に頭を悩ませました。
王室批判もある中で国民に向けたメッセージを相次いで発信。新型コロナの感染拡大で不安を抱える国民に対して次のように語りかけました。
イギリス
エリザベス女王
私たちはこれまでも困難に直面してきましたが、今回は違います。
今回の私たちは科学の偉大な進歩と本能的な癒やしへの思いやりを武器に世界中の全ての国が共通の取り組みに挑んでいるのです。
私たちは成功するでしょうし、その成功は私たち全員のものになるでしょう。
我慢するべきことはまだあるかもしれませんが、より良い日が戻ってきます。
私たちは再び友達に会うことができ、再び家族と一緒に過ごすことができるでしょう。
一方、国王としての権威は一国にとどまりません。植民地として統治したアフリカなどの地域から続々と独立国家が誕生。混乱も相次ぎましたが各地を歴訪し、親善に務めました。
コモンウェルスと呼ばれる旧イギリス領を含めた国々は56に上り、外構や安全保障、経済面でのつながりを維持。国際社会で一定の影響力を持ち、女王はその象徴となりました。
さらに女王はイギリス国教会の最高権威者となる首長の立場でもありました。君臨すれども統治せずとしながらも長年の治世を通じて政治や宗教などで存在感を示してきたのです。
イギリス 国王チャールズ3世即位!新たな治世で何が変わる?
佐々木明子キャスター
波乱の時代を治めたエリザベス女王、その後を申告王チャールズ3世が継承します。国王は一国の君主の枠にとどまらないということですが、国際的な影響力の前提ともなる国内での求心力をチャールズ国王は高めていけるのでしょうか?
ロンドン支局
中村航記者
イギリスの人は70歳以下については女王のいないイギリスを知らないため口々に不安を述べています。
その意味でもこの後に行われるチャールズ新国王のメッセージが非常に重要になってきます。
そのチャールズ新国王は9月9日に女王のいたスコットランドからロンドンに戻り、この後にトラス首相と会談を行います。
そして3時間後に国王としての初めてのスポーツを行う予定です。
またイギリスでは国家元首が変わると紙幣も変わります。いまのデザインはエリザベス女王ですが、これもチャールズ国王になる予定です。
さらに国歌についても「God save the Queen」がすでに「God save the King」になっています。
哀悼ムードが広がる中でも新たな時代に入ったということが感じられる場面があります。